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是枝作品『空気人形』に見る“空っぽ”の美学って?

2009年9月25日 11:31

ペ・ドゥナが心をもってしまった切ない空気人形を熱演 | [c]2009業田良家 / 小学館 / 『空気人形』製作委員会

是枝裕和監督作『空気人形』(9月26日公開)は、ペ・ドゥナ扮する空気人形が心を持ってしまう物語だ。本作のキーワードは“空っぽ”。どこかもの哀しい“空っぽ”な質感が全編に散りばめられていて、少しずつ観る者の琴線にジャブを与えていく。

空気人形とは、いわゆる男性が所有するラブドールのこと。ドキュメンタリーを得意とする是枝監督が、“性のはけ口となる人形”というラブドールのリアルな使用シーンも押さえつつ、詩的ファンタジーとして物語を綴り、空っぽな質感を時に美しく、時に哀しく映し出した。

ビニール製の人形の半透明な影が、どこか実体がないという人形の質感をよく表している。家を出た空気人形は、ARATA扮するレンタルビデオショップの店員・純一に恋をするが、ふたり仲良く歩くシーンで、その薄い影を必死に隠そうとする姿がいじらしい。

また、純一は人形に、身体の中が空っぽで、ただ産まれて死んでいくだけの生き物、カゲロウの話をする。それを聞いた空気人形が、カゲロウに自分自身を重ねるシーンが実に切ない。

空っぽな人形だからこそ、透明感と空虚感が際立つ。身体が空っぽなら、いっそ心も空っぽだったらよかったのに。でも、人形なのに、心が満たされた瞬間があったのだから、幸せだったのかもしれない。

是枝監督の“空っぽ”の美学が冴える『空気人形』。いま恋をしている人、したいと思っている人に贈りたい秀作である。【Movie Walker/山崎伸子】

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