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「白すぎる」オスカー視聴率、黒人視聴者は微減【1】

2016年3月7日 13:38

今年のアカデミー賞授賞式で司会を務めたクリス・ロック
今年のアカデミー賞授賞式で司会を務めたクリス・ロック写真:SPLASH/アフロ

現地時間2月28日に黒人クリス・ロックの司会で開催された第88回アカデミー賞授賞式の視聴者数は3430万人で、昨年の3660万人から約6%ダウンした。この数字は2008年の3200万人、2003年の3300万人に継ぐ史上3番目の低さとなった。

その理由について、「黒人俳優がノミネートされなかったことによって起こったボイコット運動で、黒人の視聴者が減った」とするのは簡単だ。しかし調査会社ニールセンが発表したデータ結果によれば、黒人視聴者数は2%ダウンに留まっており、全体の減少率に占める割合からすると、少ないという結果が明らかになったため、主要因にするのは難しくなった(白人の中にもボイコットをした人はいるだろうが)。

他に黒人視聴者数が少なかった年は、2008年、2009年、2011年、2012年。だが、2009年は黒人女優のタラジ・P・ヘンソン(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)が助演女優賞に、そして2012年には『ヘルプ 心がつなぐストーリー』が作品賞、ヴィオラ・デイヴィスが同作で主演女優賞にノミネートされていた上に、オクタヴィア・スペンサーが助演女優賞に輝くという、まさに黒人にとって大きな意味を持つ年だった。

オスカー授賞式の視聴者数は、『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(03)が作品賞を受賞した2004年の4360万人をピークに、下降の一途をたどっている。またゴールデン・グローブ賞の視聴率も下がっているだけではなく、グラミー賞の視聴率も下降傾向にあると言われている。これらの結果と、各メディア、そして一般人の声をもとに、原因を検証してみた。

昨今視聴率が下がり続けている大きな要因の一つには、ストリーミング視聴などの選択肢が増えたことが挙げられる。若者のテレビ離れはアメリカでも顕著であるが、レオナルド・ディカプリオが主演男優賞を受賞した際に、1分間のツイッター数が44万件と新記録を更新したことからも、オスカーへの興味が失われているわけではないことが伺える。

他には「白すぎる」オスカー騒動、クリス・ロックの若者の間における知名度の低さ、ノミネート作品の知名度の低さ及び興行成績(ヒット作もR指定)、授賞式のスタジオのコントロールが年々強まっていることなど、授賞式開催前から言われている要因がある。

しかし、背景にはやはりアメリカ社会が抱える問題が大きく関係しているという意見もある。2008年のリーマンショック以来、アメリカ経済は衰退の一途をたどっている。政府がアメリカ経済の好調を訴える一方で、中国経済の衰退の影響も避けられず、一般市民からは「景気が良くなった」という声はあまり聞こえてこない。

もともと芸術としてのアカデミー賞を楽しんでいたのは、ある程度生活に余裕のある、いわゆるかつての中流階級層以上であり、それらの人々が家を失い、職を失って仕事を掛け持ちする中で、東部時間の日曜日夜8時30分から3時間以上にわたって、優雅にテレビを見ている余裕などなく、明日の激務に備えて睡眠を確保する方が大切なのは理解できる。情報は、ソーシャルメディアで興味のある部分だけをかいつまめば十分なのだ。また、有力な視聴者候補になるはずだった子供たちも、不況のとばっちりを受けている上に、白人の少子化も止まらない。

また、2009年にオバマ政権が誕生したころは、夢と希望に満ち溢れていた黒人たちの中にも、ふたを開けてみれば8年間でかえって状況が悪くなっていると感じている人たちも多く、アメリカ社会が抱える人種差別の問題は未だ根強い。「オスカーも何も変わらない」と感じている中で、黒人監督による奴隷制度を描いた『それでも夜が明ける』(13)が作品賞を受賞した2014年は視聴者数が増えているが、「今年、黒人俳優のウィル・スミスがノミネートされていても見なかった」と答える黒人も多い。

米大統領選で“暴言王”と言われる共和党のドナルド・トランプ氏が独走している現状をみても、自由の国アメリカで平等を唱えるアメリカ人の本音が見え隠れする。「まずは、映画業界の人種差別主義を変えないと何も始まらない」という声が多いのは、「オスカーで平等に各人種をノミネートさせるべき」という枠を決めた時点で、芸術ではなくなってしまからだという。会社組織ではなく芸術である以上、そこには主観が入ってしかるべきで、「黒人もアジア人も入れなくては」と考えた時点で、その価値はなくなってしまう、という意見が多い。

今後の会員入れ替えが期待されているが、主役を手にするチャンスが少なければ何も変わらない。白すぎるオスカーと騒がれた時点で、見る気が失せたという白人も少なくない。(【2】に続く)【NY在住/JUNKO】

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