リリー・フランキーと橋本愛が激白「頑張ったシーンは全部カット」 |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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インタビュー 2016/2/26 14:00

リリー・フランキーと橋本愛が激白「頑張ったシーンは全部カット」

リリー・フランキーが、石井輝男監督の遺作『盲獣vs一寸法師』(01)以来15年ぶりの単独主演映画を務めた『シェル・コレクター』(2月27日公開)で、橋本愛と共演。本作を手掛けたのは、『美代子阿佐ヶ谷気分』(09)の坪田義史監督だが、撮影はかなり実験的かつぶっ飛んだ内容だったようだ。2人にインタビューし、興味深い撮影裏話を伺った。

『シェル・コレクター』は、ピュリッツァー賞作家アンソニー・ドーアの同名処女短編集の1編の映画化作品。沖縄の孤島で暮らす盲目の貝類学者(リリー・フランキー)が、島に流れ着いた女 (寺島しのぶ)の奇病を貝の毒で治したことで、島に次から次へと人が押し寄せるようになる。橋本は、奇病に侵された有力者の娘・嶌子(しまこ)役を演じた。

リリーは「監督のなかで、いろんな逸脱を入れたいという思いがあったんじゃないかな」と考える。「たとえば、初期の脚本段階では急に滝のド真ん中で、俺が寺島さんと立ちバックをしているシーンや、寺島さんが大声でオナニーしているのを、不思議なライティングの下で俺が聞いているシーンなどがあって。実際に撮ったシーンもあったけど、使われてない。愛ちゃんが、太鼓をドンドコ叩きながら、登場するシーンもあった。そういう漫画感がてんこ盛りだったのですが、本編には入っていない。人間くさい関係性は、最初から描くつもりはなかったと思う」。

橋本も現場はかなり刺激的だったと話す。「人や風景を、ものと同じように撮られました。きっと映像には、1つの物質として映っていると思うんですが、それはそれで真実ではあるんです。ただ、こちらは人なので、人としていることに精一杯でした。ただ、どちらに迎合しなくても、目的をもってやればちゃんと結果的に良くなるんだなと思いました」。

冬の沖縄ロケは、体力的にもハードだったという2人。リリーは、海底に沈んだ椅子に座っての撮影にも臨んだ。「5mの深さで、海中にスピーカーが置いてあるんです。完全に息ができない状態になり『(カメラが)回りました』という声が入って、ようやく監督が『よ~~い』とゆっくり言うんです(苦笑)。いやいや、もう回っているんだから、早く!と思い、こっちはテンパッてしまって。それに、息ができないうんぬんよりも、寒すぎて」。

実際、地上には、湯船が1人ひとりに用意されていたそうだ。「あれがないと死にます。風がとんでもなく冷たいので。でも、みんなが冬に海に入ると聞くと、普通の監督なら逡巡すると思うんですが、監督の場合『海!良いですね』となるんです(笑)」。

橋本も笑いながらうなずく。「風が強くて髪が邪魔でした。でも、大変だったのは、使われてないシーンです。監督から『風の谷のナウシカ』みたいにやってくださいと言われまして」と言うと、リリーが「監督はね、愛ちゃんに対して、『こういう映像が見たい』という自分の趣味で撮っていたシーンがあったと思います」と笑う。

橋本は「でも、それを撮らないと現場が終わらないんです。我に返ったらやばかったので、大事なシーンだと思って真剣にやりましたが、やはり抵抗心がありました。ただ、頑張ったけど、使われてはいませんでした」と告白。

リリーは「そうなんです。頑張ったシーンがみんな使われてない。それらは、監督の最高の妄想につき合ったシーンでした」。

それを受けて橋本は「映画は、点をつなげた線になった感じでしたから、良かったんですよ。全部入れていたら、点描にしかなっていなかったかもしれないです」と言う。

その一方で橋本は、坪田監督が「人を巻き込む力があるんです」とも称える。「すごく純粋な方で、本当に少年みたいでした。楽しそうに映画を撮っていましたし。それが趣味の延長だとしても、周りのスタッフさんたちがすごく堅実だったので、仕事と趣味感が良いバランスで保たれていて、これは良い現場だなと思いました」。

リリー・フランキーも「監督は、観たことのない映画を作りたいというところから始まっているので、試写会でみんなが観て、ポカンとするのは監督にとっては成功なんです」と坪田監督を評価した。

辛口トークを織り交ぜてのトークとなったが、それらが『シェル・コレクター』という異色作に対する愛情に裏打ちされたものであることは、伝わってきた。スクリーンから画力がみなぎる個性派作品となっているので、劇場で体感していただきたい。【取材・文/山崎伸子】

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