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主人公の心を引き立てる鶴瓶独特の二面性に注目『ディア・ドクター』―No.16 大人の上質シネマ

2009年6月19日 13:33

『ゆれる』(06)で高い評価を得た西川美和監督の最新作『ディア・ドクター』 | [c]2009「Dear Doctor」製作委員会

笑福亭鶴瓶といえば、老若男女を問わず親しまれているエンターテイナーだ。そんな彼が芸歴37年目にして初めて映画主演を務めた『ディア・ドクター』は、彼の柔和な表情から滲み出る人間性と、いい人にも悪い人にも見える風貌が絶妙に交じり合い、僻地医療という社会的テーマを含んだ物語に、おかしみと深い味わいをもたらしている。

鶴瓶が演じるのは、住人の半分は高齢者という過疎化が進む山間の村で、日々の診療から薬の処方、診療所を訪れることができないお年寄りの訪問健康診断までをひとりでこなす医者・伊野。村中の人々から「神さま仏さま」より頼りにされている存在ではあるのだが、じつは彼は村に居続けるうえで、ある重大な“嘘”をつき続けているのだ。

映画では、そんな伊野が突然、謎の失踪を遂げ、警察による捜査によって今まで彼がひた隠しにしてきた秘密が浮き彫りにされていく。と同時に、伊野は長く無医村だった村人たちにとっては救世主であり、伊野の行方を追う刑事の言葉どおり「この村を支えていた」ことがしだいにわかってくるのだ。

人々から慕われている好人物である自分と、誰にも明かせない“嘘”を抱え生きている自分――この人間としての二面性を、いい人にも悪い人にも見える鶴瓶が演じたことで、伊野というキャラクターに面白味が増したのは間違いない。しかしそれ以上に、伊野の“嘘”を弾劾するのではなく、伊野自身の心の揺れがきちんと描かれているのがすばらしい。劇中、伊野の働きぶりに「先生こそ本物の医者です」と讃える若い研究医(瑛太)に対し、伊野が戸惑うシーンがある。そこからは自分の予想以上に評価されてしまった彼の後ろめたさとプレッシャーがひしひしと伝わり、観る者の心には伊野と同様の複雑な思いが広がってくる。

僻地における医療不足という現実的な社会問題を掲げながらも、のどかな田園風景の中にそこに住む人々の温かさと、人と人の繋がりの尊さを描いた本作。伊野の“嘘”の是非よりもむしろ、その背景には人間愛がしっかりと息づいており、観る者の心を温かく包み込んでくれるはずだ。【ワークス・エム・ブロス】

■『ディア・ドクター』は、6月27日(土)より全国ロードショー

【大人の上質シネマ】大人な2人が一緒に映画を観に行くことを前提に、見ごたえのある作品を厳選して紹介します。若い子がワーキャー観る映画はちょっと置いておいて、分別のある大人ならではの映画的愉しみを追求。メジャー系話題作のみならず、埋もれがちな傑作・秀作を取り上げますのでお楽しみに。

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