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第88回アカデミー賞ノミネート、サプライズを検証【その1】

2016年1月15日 23:01

現地時間の14日に第88回アカデミー賞のノミネート発表が行われた。第73回ゴールデン・グローブ賞で存在感を見せつけたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作『レヴェナント:蘇えりし者』が最多の12部門、ジョージ・ミラー監督作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が10部門、リドリー・スコット監督作『オデッセイ』が7部門という結果となった。日本では、長編アニメーション部門で『思い出のマーニー』がスタジオジブリ作品としては3年連続でノミネートされる快挙を成し遂げた。

最多12部門にノミネートされた『レヴェナント:蘇えりし者』
最多12部門にノミネートされた『レヴェナント:蘇えりし者』[c]2016 Twentieth Century Fox

限られた枠の中での選出ということは承知の上で、今回も、米テレビABCニュース、E!オンライン、LAタイムズ紙、Deadline.com、英ガーディアン紙などの多数のメディアの情報を基に、悲喜こもごもの結果について検証してみた。

昨年に引き続いて言われていることは、「多様性のなさ」と「白人至上主義」だ。主な理由として、主演男優と女優賞および助演男優賞と女優賞の20人全員が白人俳優だったからで、「#OscarsSoWhite」のハッシュタグで最もツイートされている話題となっている。

映画が大きな影響力を持つアメリカ社会では、社会問題と切り離すことは難しく、また白人の富裕層代表で、共和党次期大統領選の最有力候補であるドナルド・トランプが、移民追放を掲げるなど人種差別主義者と言われていることなどから、以前にもまして話題が黒人差別問題、人種差別問題に発展している傾向が見られる。さらに、20人のうちアメリカ人俳優は半数の10人で、他はイギリス系俳優が占めていることから、かねてから言われているように「オスカーもイギリス人俳優に席巻された」と大見出しを付けているメディアもある。

【写真を見る】作品賞、監督賞を含む10部門にノミネートされた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
【写真を見る】作品賞、監督賞を含む10部門にノミネートされた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』[c]2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

全体的には、『レヴェナント~』が圧倒的な強さを見せたことは納得されている一方で、『マッドマックス~』が、技術部門だけではなく作品賞、監督賞にノミネートされたことは、ある意味最大の肯定的なサプライズとして捉えられている。各賞を席巻してきたことで確かにノミネートは期待されていたが、アクション映画である上に、2015年5月公開というハンデを負っていたからである。この点で「オスカー会員が変わった」と評価されているが、世界的な記録を更新している『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が、作品賞にノミネートされずに技術部門にだけ収まったことで、「一般市民とかけ離れた選択眼である傾向は何も変わっていない」というがっかりな声も多い。

それではまず作品賞から見てみよう。どのメディアも驚いているのが、作品賞へのノミネートが確実視されていたトッド・ヘインズ監督作『キャロル』が漏れたことだ。10作品の枠がある中で8作品しかノミネートされず、確実視されていなかったレニー・アブラハムソン監督作『ルーム』が入選したにもかかわらずの落選。

昨年のカンヌ国際映画祭で公開されて以来、同作はフロントランナーと言われてきた。「同性愛者の映画だから?」という問いには、「『ブラック・スワン』(10)も『ブロークバック・マウンテン』(05)も作品賞にノミネートされている」として、落選の理由が見つからないようだ。いずれにしても、ここ8年間で映画界の重鎮ハーヴェイ・ワインスタイン率いるワインスタン・カンパニーの作品がノミネートされなかったのは初めてのこと。こちらも最大のサプライズと言われている。

また、黒人ヒップホップグループN.W.A.を描いた秀作と言われ、若者から圧倒的に支持され全米でも大ヒットしたF・ゲイリー・グレイ監督作『ストレイト・アウタ・コンプトン』が作品賞から漏れたことについても、#OscarsSoWhiteのハッシュタグ付きで「監督も主役も黒人だし、トランプを支持する白人の年寄りは見向きもしないのだろう」というツイートが飛び交っている。「脚本賞にはノミネートされてるから(作品を)観てるよ」という指摘には、「脚本家のふたりは白人だ」との反撃がされている。

『オデッセイ』は7部門ノミネートだがリドリー・スコット監督はまさかの落選
『オデッセイ』は7部門ノミネートだがリドリー・スコット監督はまさかの落選[c]2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

次に監督賞だが、どのメディアも驚きとして伝えているのは、第68回全米監督協会賞にノミネートされ、オスカーも確実視されていた『オデッセイ』のリドリー・スコット監督の落選だ。同作が作品賞や主演男優賞など7部門でノミネートされたにもかかわらず、スコット監督が落選したことで、プロデューサーは単純に他の部門のノミネートを喜ぶことができない複雑な心境の様子。エンターテインメント・ウィークリー誌のインタビューで、「本当にショックで気が動転している。スコット監督無しにこの作品は成立しなかった作品であり、最高の監督作だ」と異例のコメントを寄せているほどだ。

また、トット・ヘインズ監督(『キャロル』)がノミネートされなかった一方で、ダークホースだったレニー・アブラハムソン監督(『ルーム』)がノミネートされたのは最大のサプライズとなったほか、スティーヴン・スピルバーグ監督(『ブリッジ・オブ・スパイ』)の落選、そしてオスカーへの自信を見せていたクエンティン・タランティーノ監督(『ヘイトフル・エイト』)は、監督賞のみならず、作品賞、そして脚本賞にもノミネートされておらず、大きなサプライズとして伝えらえている。(その2に続く)【NY在住/JUNKO】

<第88回アカデミー賞 ノミネート>

▼作品賞
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『ブルックリン』
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
『オデッセイ』
『レヴェナント:蘇えりし者』
『ルーム』
『スポットライト 世紀のスクープ』

▼監督賞
アダム・マッケイ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
ジョージ・ミラー『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
アレハンドロ・G・イニャリトゥ『レヴェナント:蘇えりし者』
レニー・アブラハムソン『ルーム』
トム・マッカーシー『スポットライト 世紀のスクープ』

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