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【第53回NY映画祭】故マイルス・デイヴィスの異色伝記映画でNY映画祭が閉幕!

2015年10月18日 19:25

第53回ニューヨーク映画祭は、「ジャズの帝王」「モダン・ジャズの帝王」などと称される名ジャズトランペット奏者で、1991年にニューヨークで亡くなったマイルス・デイヴィス(享年65歳)の異色伝記映画『Miles Ahead』で幕を閉じた。

ニューヨーク映画祭の締めくくりにふさわしい1作となった | [c]JUNKO

プロデューサーにジャズピアニストのハービー・ハンコックを迎えた本作で、初メガホンをとり、共同脚本、プロデュース、そして主演としてマイルスを演じているのは、『オーシャンズ』シリーズや、『アイアンマン』シリーズで知られるドン・チードル。映画祭にはチードルのほか、マイルスの最初の妻でダンサーのフランシス・テイラー役を演じたエマヤツィ・コリネアルディ、マイルスが所属していたコロンビア・ミュージックのプロデューサーのハーパー役を演じたマイケル・スタールバーグが登壇し、それぞれの熱い思いを語った。

【写真を見る】ジャズトランペット奏者マイルス・デイヴィスを描いた伝記映画『Miles Ahead』

日本でも絶大な人気を誇るマイルス・デイヴィスの人生を描いた本作。フランシス・テイラーと結婚した最盛期、そして一時引退したものの、1979年に復活を果たすまでのマイルスが、ユアン・マクレガー扮するローリング・ストーンズ誌の記者デイヴ・ブリルの目を通じてユニークな方法で描かれている。

チードルは、製作のプロセスについて、「ずいぶん長い間、マイルス・デイヴィスの映画を作りたいと思っていて、いろいろな人たちと様々な形で製作する方法を何度も模索してきたが、なかなか実現にこぎつけなかった。実現したのは、ミュージシャンでもあるマイルスの甥っ子ヴィンスが、『ドン・チードルが、マイルス・デイヴィスを演じる』と突然アナウンスしたことなんだ(笑)。すると別のプロデューサーが僕にアプローチしてきて、プロジェクトが動き出したんだ。(彼はチードルに会ったことがなかったが、マイルスを演じるのは、チードル以外にいないと考えていた)」と語ると、会場に来ていたヴィンスに手を振り、会場は大きな拍手に包まれた。

第53回ニューヨーク映画祭のクロージング作品『Miles Ahead』で監督・製作・脚本・主演を務めたドン・チードル | [c]JUNKO

「いくつかのテイクを用意していたが、マイルスがチャーリー・パーカーに出会ったこととか、誰かと決別したとか、そういう個々のアーティストとのかかわりに特化したかったわけでもないし、ドキュメンタリー映画を作りたいわけでもなかった。今までにない方法でマイルスを描きたかった。生まれてから死ぬまでの生涯を描くような、スタンダードな伝記映画ではなく、かといって1つの時代の音楽に特化するのではなく、時代にこだわらない作品にしたかった」

「音楽に密接に結び付いた形で、その時に彼に起こった出来事を描きたかった。ヒーロー映画でも、8ビートのジャズ映画を作りたいわけでもなかった。マイルスも、きっとそう思ってくれていると思う」と語るチードルは、すべての分野で同作に関わることで、まさに彼が作りたいと思った新しい伝記映画を作ることに成功した。しかしそれらを乗り越えるには、紆余曲折があったという。

「困難を乗り越えられたのは、まさにドラッグのおかげだ(笑)」と、一時期ドラッグまみれだったマイルスを真似て冗談を言った後、「自分の思いが受け入れられないことも多く、スタジオが見つからなかった。インディペンデント映画なので予算もなかなか集まらなかったし、色々なことが少し軌道に乗りそうになると、予算がどんどん削られていったりして、本当に意気消沈してしまい、やめようと思ったこともある。正直、『この企画が無くなっていたら、どんなに気が楽だったろう』って考えたこともあった」

「最終的には足りない予算を、クラウドファンディングのサイトIndiegogoを通じて集めることができた。おかげで配給も決まったが、こういうインディーズ系の映画製作には、常に予算の問題が付きまとう。寄付をしてくれた人たちに、とても感謝している。約1年前に、ある程度の状況が整ったことで風向きが変わって、やっとこの映画を製作することが自分の使命だと思えるようになった。やらずに終わらせたくないと思った」と力強く語る。

マイルスの1人目の妻役を演じたエマヤツィ・コリネアルディ | [c]JUNKO

マイルスの最初の妻フランシス・テイラー役を演じたエマヤツィ・コリネアルディは、本作に出演したことについて、「まさに“夢がかなった”という感じよ。ドンのような俳優であるアーティストと仕事するのは夢だったし、彼が情熱を燃やしている映画に出られたのだから。そして、マイルスが愛しただけではなく、彼に最も影響を与えた女性と言われているフランシス(マイルスは後に2度の結婚と離婚を繰り返している)を演じられたことも最高だった」とコメント。

コロンビア・ミュージックのプロデューサー役を演じたマイケル・スタールバーグも、「ドンのファンだったし、ただただ光栄だった。いい映画を作りたいという思いで、こういったコラボレーションが大事な作品に出演できたことは本当にすばらしいし、ある種心地よく、すぐに入り込むことができた。僕自身サックスフォンを吹くし、音楽、マイルスの大ファンだから、ここにいられるだけで幸せだと思った」と嬉しそうに語ってくれた。【取材・文・NY在住/JUNKO】


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