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【第53回NY映画祭】21歳のシアーシャ・ローナン、移民映画でオスカーに王手!

2015年10月18日 18:25

第53回ニューヨーク映画祭で『Brooklyn』が上映され、ジョン・クローリー監督、脚本家のニック・ホーンビィ、原作者のコルム・トビーン、プロデューサーのフィノーラ・ドゥワイヤー、そして主演のシアーシャ・ローナンが登壇した。

各地の映画祭で絶賛されている | [c]JUNKO

本作は、2009年に出版された同名小説を映画化したもので、アイルランドからニューヨークに多くの移民が流れこんだ1950年代が舞台。アイルランドの田舎町からブルックリンに移り住んだアイルランド人のエイリシュが、故郷とニューヨークのはざまで、心引き裂かれる様が巧みに描かれている。

【写真を見る】ニューヨーク・ブルックリンに移住したアイルランド人の少女を描く『Brooklyn』

ベルリン国際映画祭の審査員賞受賞作『BOY A』(07)でメガホンを取ったクローリー監督、『17歳の肖像』(09)でアカデミー賞脚色賞及び作品賞にノミネートされた作家のホーンビィとドゥワイヤーが脚本とプロデュースを務めた本作。そして主役のエイリシュを演じたシアーシャは、『つぐない』(07)で13歳という史上7番目の若さでアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、主役に抜擢された『ラブリーボーン』(09)で各賞を受賞。『グランド・ブタペスト・ホテル』(14)でもその才能を光らせた、弱冠21歳の若手実力派女優だ。

子役から活躍するシアーシャはアイルランド人だが、ニューヨーク生まれ。両親と3歳でアイルランドに移住するというまさにエイリシュと逆パターンだが、アイルランド人を演じたのはこれが初めてだという。

「今までは、原作があってもそれを読まずに脚本を読んで映画に出演していたの。でも今回は逆で、この話が持ち込まれる数年前に原作を読んでいて、それから脚本を読んだの。ジョン(監督)から脚本を頂いて、出演を決めたのは1年後だった。私がまさに2つの世界で思いを引き裂かれ、喪失感を感じるというエイリシュと同じ立場になったから、違うレベルでの理解ができ、今までにないほどこの世界にのめり込んでいったわ」とシアーシャ。

第53回ニューヨーク映画祭に登場した『Brooklyn』主演のシアーシャ・ローナン | [c]JUNKO

するとクローリー監督も、「彼女は、まさにこの役を待っていたかのようなパーフェクトな人物だと思った。さらにホームシックというものがユニバーサルなものであるという、共通の感覚があった。彼女のためにある役だと思った」と絶賛した。

「いつかアイルランド人を演じたいと思っていた」と言うシアーシャ。「この役のように、自分の故郷と結びついた仕事をすることはとても重要だと思っていたの。でもやるからには、本当に自分が“これだ”と心から強く感じられるものを演じたいと思っていたし、素晴らしい脚本で私たちアイルランド人を正確に表現しているものでなければ嫌だった。それと同時に、私たちの歴史や経験について特化している作品がよかった。多くの人が共感できるような作品で、しかも女性の視点から描かれているという点が、私にとってはとても興味深かった」と、ハマリ役を引き受けた経緯を語ってくれた。

昨年、同映画祭で上映されたマリオン・コティヤール主演作『エヴァの告白』(13)は、同じくニューヨークへやって来た移民を描いた物語だが、終始ダークなトーンで辛く悲しい物語だ。しかし『Brooklyn』は、映像もストーリー展開も美しく、時にはユーモアもある点で大きく異なっている。

「本と映画は本質的に違う。移民として異国の地に出向くことはそれだけでものすごいプレッシャーだし、アンハッピーな生活が待っている。本は長いので、何度も何度も試練を繰り返して説明していかないとわかってもらえない。しかし映画では、仕事面とパーソナルな部分で辛いシーンが2シーンがあれば、観客は、エイリシュがどれだけ大変なのかを理解できる。もし映画で3回こういうのを繰り返したら、ある種の緊迫感を失ってしまう。意識的に、辛いシーンをあえて繰り返さずにバランスを考えた。できる限り、エイリシュの感情に寄り添ったものにしたかった」と原作者のトビーンは言う。

質問に答えるシアーシャたち | [c]JUNKO

その思いを表現するために、クローリー監督は、あえてシアーシャのアップのショットを多くしているが、その点について「最も人の心を動かす特殊効果は、人間の表情の変化だ」と説明。「だけど、音楽はアイリッシュに特化したり、必ずしもセンチメンタリズムを増徴させるよなうな“お決まり”のものにしたくなかった。それぞれのショットに合うように工夫したんだ」と、独自の撮影法とこだわりを披露した。

同作に意地悪な敵がいない点について、「映画が原作よりセンチメンタルなのは、あえて嫌な部分を取り除いたからだ。そして映画では、敵を作って主人公の辛さを強調する手法が多いが、あえて敵も作らなかった。誰からも好かれることは不可能だが、人生が難しいのは、嫌な人や敵がいるからではない」と脚本家のホーンビィが答えると、「エイリシュは、無意識に皆に愛され、皆が彼女を必要として彼女によくしてくれるという自然な形で、何かを克服していくというストーリー展開にしたかった。その方がもっとドラマがある」と作家のトビーンが付け加えた。

本作は、サンダンス映画祭やトロント国際映画祭でも絶賛されており、シアーシャのオスカー候補が確実視されている。今後の賞レースの行方にも注目だ。【取材・文・NY在住/JUNKO】

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