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【第53回NY映画祭】S・ジョブズら実存した人物を演じる難しさとは

2015年10月8日 13:00

9月26日から開催されている第53回ニューヨーク映画祭で、故スティーブ・ジョブズを描いた伝記映画『Steve Jobs』がセンター・ピースとして上映され、キャスト・スタッフが記者会見に応じた。

【写真を見る】ファスベンダーや共演のケイト・ウィンスレットらがニューヨーク映画祭に登場
【写真を見る】ファスベンダーや共演のケイト・ウィンスレットらがニューヨーク映画祭に登場[c]JUNKO

脚本家のアーロン・ソーキンとダニー・ボイル監督がこだわった3部構成の手法について役者に質問が及ぶと、セス・ローゲンもマイケル・ファスベンダーもだんまり。ケイト・ウィンスレットは、「もう!いつも女性の私が一番に答えるのよね」とため息をつきながらも、「とても楽しかった。でも正直に言って、最初はとても怖かったの。だけど結果的にそれはすばらしいことでもあったわ。初日にマイケルと『やるしかないわね』って抱き合って励まし合ったのよ(笑)」

「最初にダニーが私たちのために、全員をリハーサル部屋に集めてくれたの。それはとても大きな意味を持っていて大きな違いを生み出したし、1部づつ撮影をしていくプロセスにおけるキーになったと思うわ。可能な限り多くの時間を、大きな役の人も小さな役の人も、同じ空間に居たことが大きかった。おかげで、一体感が生まれたし、そこですべてをやりつくしたら、本番のセットではもうやるしかない状態になっていた。リズムは、脚本の中で完成されていた」と、ボイル監督の独特の撮影法とソーキンの脚本を絶賛。するとファスベンダーは、「とてもエクサイティングだったよ」と一言で答え、周囲を笑わせた。

メガホンをとったダニー・ボイル監督
メガホンをとったダニー・ボイル監督[c]JUNKO

また、アイコニックな人物を描くことの難しさに及ぶと、「アーロンの脚本がすばらしいのは、舞台裏のジョブズを描いていることだ。皆が知っている、YouTubeで見られる彼を描いてもしょうがない。それは、表面的なことに過ぎない。見かけが似ているとか、動きや行動が似ているかどうかは重要ではない。これはまさに、シェイクスピアのようだ。キーは、真実と共に、周囲の多数のスタッフらからもたらされた事実があるということだ。一人の男と、他の人々との関係についての映画なんだ」とボイル監督が熱弁。

存命中の人物を演じることの難しさを語ったセス・ローゲン
存命中の人物を演じることの難しさを語ったセス・ローゲン[c]JUNKO

スティーブ・ウォズニアック役のセス・ローゲンは、「監督の言う通りだよ。僕は雇われている立場だから、監督をハッピーにさせることが大事。クビにされたらイヤだからね(笑)。ウォズニアックがお金を払ってくれるわけじゃないけど、彼が気に入ってくれてよかったよ」と笑いを取りながら、「必ずしも正確さが必要とされるわけではないと思っている。マリリン・モンローだってピンク色のヘアで描かれることがあるし、映画とかアートには、必ずしも正確さが必要だとは思わないしね」と実在の人物を演じることについて語った。

ローゲンもウィンスレットも、そしてアンディ・ハーツフェルドを演じたマイケル・スタールバーグも、演じた本人に会うことができたそうで、「アンディは、本当にすばらしい人だった。ジョブズについての色々な話を聞かせてくれた。家に招待してくれて奥さんにも会ったんだ。ジョブズとの関係はチャレンジングでもあったけれど、すばらしかったと言っていた。残念ながら1984年にアップルを退社したが、その後も、常に気にしてくれていたと言っていた」とスタールバーグは目を輝かせた。

そんな中、1人だけ当人に話を聞けなかったファスベンダーが、「『スティーブ・ジョブズ』(13)のアシュトン・カッチャーを研究した」と答え、またもや会場は笑いの渦に包まれた。

「僕はまったくスティーブ・ジョブスに似ていないので、ダニーに最初に、『クリスチャン・ベールの方が彼に似ていると思う』って言ったんだ。そうしたら彼が、『外見が似ているかどうかには興味がない。僕はスティーブ・ジョブズという人間のエネルギーやエッセンスが欲しいんだ』って言ってくれたんだ。だから役作りについて最初のアプローチは、『彼を真似るのは辞めよう』ってことだった」

故スティーブ・ジョブズを描いた伝記映画『Steve Jobs』でジョブズ役を演じたマイケル・ファスベンダー
故スティーブ・ジョブズを描いた伝記映画『Steve Jobs』でジョブズ役を演じたマイケル・ファスベンダー[c]JUNKO

「僕はテクノロジーに興味がないし、得意じゃない人間なので、正直、彼のことをあまり知らなかった。もちろん、彼がどういう立場の人間かということは知っていたけれどね。彼は我々の世界を変えた人物でもあるので、(演じることは)とても責任がある。だから彼を演じることが決まってからは、彼のYouTubeでのスピーチやインタビューを見まくっていた。でも、一番役作りで役立ったことは、仕事を通じて彼の人生を知っている人たちと実際に会って話を聞くことだったと思う。既に亡くなっていても、彼は、皆の中にまだ確実に存在している。たとえ難しい間柄だったとしても、彼らには悲しみと愛が溢れていることは明らかだった。決別した相手からも、スティーブ・ジョブズという男に対する愛をひしひしと感じることができた。それが、演じる上でいつも念頭にあった」

以前ジョブズ役を演じた「アシュトン・カッチャーを研究した」と冗談(?)で笑わせるファスベンダー
以前ジョブズ役を演じた「アシュトン・カッチャーを研究した」と冗談(?)で笑わせるファスベンダー[c]JUNKO

「ダニーと色々話した結果、第3部は、彼のトレードマークでもある黒いハイネックにジーンズ、スニーカーに眼鏡のスタイルをあえて選んだ。皆が望んでいると思ったし、その恰好をして初めてジョブズに慣れた気がした。撮影は、もうほとんど終わっていたんだけどね」と語り、再び周囲を笑わせた。

批評家からの評判もおおむね良好で、役者たちの熱演も光る同作。オスカーのゆくえが楽しみだ。【取材・文 NY在住/JUNKO】

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