瀬戸康史、時代劇で得たもの。デビュー10年での変化とは |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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インタビュー 2015/9/24 9:00

瀬戸康史、時代劇で得たもの。デビュー10年での変化とは

数々の出演作で培われた確かな演技力で人気の若手俳優、瀬戸康史。俳優デビュー10年目を迎えた2015年は、映画『合葬』(9月26日公開)、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』と、時代劇と縁のある一年だった。旧幕府軍として戦った「彰義隊」と、新政府軍として戦った「奇兵隊」。逆の正義を掲げた若者たちを演じたことで瀬戸が感じたのは、「いつの時代も、人は迷い、悩みながらそれぞれの道を見つけていく」ということだった。

漫画家・杉浦日向子の原作を映画化した『合葬』は、彰義隊に入隊した3人の若者たちの数奇な運命を綴る物語。友との関わり合い、恋の目覚め、変化する時代の中での生き方など、現代の若者の悩みにも通じるリアルな青春像を描く新しい時代劇だ。瀬戸が演じるのは、養子先から追い出され、行くあてもなく赴くままに入隊した柾之助役。

瀬戸は「時代劇というと、志がはっきりしている人が描かれることが多いけれど、僕が演じた柾之助は、迷って悩んで、ふわふわしている役だったんです。一人だけ時間が止まっているような感じの人で。彰義隊に入ったのも、自分が自分でいられる場所や、自分を認めてくれる場所を探して、なんとなく入ったようなところがあって。でも考えてみると、『どの時代でもこうやって迷っている人っているよな』と思ったんです。現代人である僕らもとても共感できる人だと思いました」と時代劇といえど、普遍的な若者の悩みを投影した人物と感じたそう。

一方、大河ドラマ『花燃ゆ』では、奇兵隊に参加する吉田稔麿役を演じた。「『合葬』の撮影の後に、大河ドラマに入ったんですが、柾之助たちとはまた逆の立場である奇兵隊の人物を演じて。僕が演じたのは、吉田松陰の弟子で吉田稔麿という役。家族のことを考えて松蔭を裏切ったりなど、稔麿も迷っている人だったんです。それぞれの正義があるけれど、柾之助と通じるところがあると思いました」と真逆の正義を持つ者でもやはり、普遍的な若者の葛藤を感じた。「時代劇に対する考え方が変わりましたね。昔の人だという、変な先入観を持っていましたから。大河ドラマと『合葬』が同じ年に公開されることに運命を感じています。『合葬』はモントリオール映画祭のワールドコンペ部門にも日本作品で唯一出展されて、初の海外映画祭も経験出来ました」

「流されないように意識している」と地に足をつけて人生を歩んでいる瀬戸だが、「日々、悩んで、迷っているのは一緒」と柾之助に共感する部分も多かった。福岡県生まれで、2005年に17歳でデビュー。「もともとは獣医になりたかった」そうで、芸能界には興味がなかった。「親が事務所のオーディションに応募して、たまたま受かったような感じで。そこで人生が変わりましたね。最初の仕事では死ぬほど怒られて、『嫌だな、帰りたい』と思ったり(笑)。でも『この人たちを見返したい』と思って頑張っている時期もあって。20歳頃から仕事が楽しくなってきて、だんだんと一生の仕事にしたいと思えるようになった」と、持ち前の負けん気で歩みを進めてきた。

デビューからの10年を振り返ってもらうと、「あっという間でしたね」と笑みがこぼれる。「福岡にいた頃は、すごく社交的だったんです。東京に出てきてからは、知っている人が一人もいない上に、たくさんの大人に囲まれて、殻に閉じこもってしまった時期もあって。やっとここ3、4年くらいで、共演者もスタッフも含めていろいろな人と交流するようになって、昔の自分を取り戻せた気がしています」と、自身の変化について言及。その変化の理由は「作品や人との出会いって、次につながる大事なものだなと思ったんです。いい現場にするというのもそうですし、積極的に人とつながるようにしています」と出会いの大切さを実感したからだそう。

今後の抱負として、「表現者というところでは、お芝居はもちろん、少し前からイラストも描いたりしていて。自分で物語を書いて、絵を描いて、そういったものをソロのイベントで発表しているんです。ひとつの事に集中するというよりもいろいろなものから刺激を受けて、いろいろな表現の方法を見つけていきたいです。僕が書いた物語で、泣いてくださる方もいた。素直にうれしかったし、そこでは瀬戸康史個人としての想いを乗せることもできる。ぜひ続けていきたいです」と表現者として強い意欲を見せる。

甘いマスクの一方、しっかりとした考えと芯の強さを持つ瀬戸康史。「柾之助は迷い悩んでいる青年。迷い悩んでいるというとネガティブな印象があったんですが、柾之助を見ていると迷ったり悩んだりするのが人間。その期間はものすごく大事だと思えるようになった」と話すが、悩みながらも道を見つけてきた自信が、彼を強くしているように感じた。【取材・文/成田おり枝】

スタイリスト:手塚陽介
ヘアメイク:小林純子

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