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浅野忠信「男と女の関係が始まった時点で、男は女の人に甘え出す」

2014年6月12日 9:50

『私の男』で禁断の愛を体現した浅野忠信にインタビュー

浅野忠信、40歳。若き時代から日本映画界をひた走ってきた彼が、「40歳になって自分にしか演じられない役をもらった」と手応えを口にしたのが、センセーショナルな話題作『私の男』(6月14日公開)だ。二階堂ふみと共に、禁断の愛のドラマを紡ぎ上げた浅野にインタビューし、今の心の内を語ってもらった。

原作は、第138回直木賞を受賞した桜庭一樹の同名小説。浅野が演じた淳悟は、天災で両親を失い、孤児となった花(二階堂ふみ)を育てていく。孤独な2人が親子として寄り添う内に、さらに踏み込んだ濃密な愛が生まれる。メガホンをとったのは『夏の終り』(13)の熊切和嘉監督だ。

浅野はまず30代をこう振り返った。「30代では、自分が役者としても、ひとりの男としても、いろんなことに向き合わなければいけなかった。そういう意味では、40代になってみて、この先の人生に対して準備ができていました。その準備が整ったなかで、それをぶつけられる役が来てくれたなと思ったんです」。

浅野自身も淳悟と同じく娘を持つ父親だが、そのことが役作りにどういう影響を与えたのかも気になる。「葛藤はなかったです。ただ、娘が見たら嫌がるだろうなとは思いましたが、それはしょうがないなと。どう切り離しても、僕には娘がいる。その事実だけは、見ているお客さんもご存知だと思いますし、父親であるという事実は強力な“何か”であり、父親役をやる上での安心感に繋がりました。僕は、常に役を自分に当てはめてきた俳優だと思うんです。じゃあ、自分の娘とそういう関係を持つのかと言ったら、絶対にありえない。ただ、彼らの特殊な状況を組み合わせてみたら、自分のなかで成立したんです」。

浅野は、さらに役について噛み砕き、次のように説明する。「たとえば自分の家族だったり、すごく密な関係になる人たちとの間には、必ず人に言えないような秘密があったりする。淳悟たちの関係も、そういうことのひとつで、きっと彼らは悪気があってそうなったわけではなく、自然な流れだったのではないかと。恋人や友達などは、長く付き合うと、こいつとの出会いにはこういう意味があったのかと、後で気づくことがある。彼らは互いに何か欠けているような存在で、出会うべくして出会った。それがたまたま親子になった、と。いけないことであるにも関わらず、いや、いけないことであるからこそ、引き寄せられるという矛盾した関係なんです」。

淳悟が「父親になりたかった」とあふれる思いを吐露するセリフも胸に突き刺さる。でも、浅野は「僕は、あのセリフはあまり気にしてなくて。男と女の関係が始まった時点で、男は依存し、甘えが生じるんです。心を開けば開くほど、女の人にぶつけていく。思ってもいないのに『自分は弱いんです』とアピールし出すんです(苦笑)。淳悟なんて、根本的にそんなことを考えているタイプじゃないんですよ。花に甘えているだけで。あれは、いちばん口に出してはいけない言葉だったと思います」。

40歳になり、改めて俳優として、役への向き合い方を再確認したという浅野。「若い頃はばらつきがあったけど、あの頃の方が集中している時はめちゃくちゃ集中していたと思います。最近、そのことを思い出して、どの作品にも同等の集中力でやりたいと思うようになり、そういう考えで取り組めるようになりました」。

昨年、俳優25周年を迎えた浅野忠信。年を経て、キャリアや人生経験を重ねたことで、ますます俳優としての奥行きが増してきた。そういう意味でも『私の男』は、40歳のスタートを切るにふさわしい役どころになったと思われる。【取材・文/山崎伸子】

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[c]2014「私の男」製作委員会| 撮影/金井尭子