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地井武男、遺作『かぐや姫の物語』の名脇役が秀逸!

2013年11月22日 11:00

地井武男が『かぐや姫の物語』で翁役を好演 | [c]2013 畑事務所・GNDHDDTK

高畑勲監督作『かぐや姫の物語』が、いよいよ今週末11月23日(土)から公開される。本作では、かぐや姫役の朝倉あきをはじめ、声優陣の生き生きとした声の演技のハーモニーが見事である。特に、声を先に録音して画を描くプレスコだからこそ実現できた、亡き地井武男の味わい深い声の名脇役ぶりには、誰もがうなるに違いない。

2012年に心不全で他界した地井だが、本作の収録は2011年の夏に行われている。地井はテレビアニメ「SAMURAI SPIRITS~破天降魔の章~」(94)の柳生十兵衛役や、東映の3DCGアニメ「きかんしゃ やえもん」のやえもん役などでアフレコ経験はあったが、声優としての経験が豊富だったとは言えない。でも、プレスコは、名優の持てる力を最大限に活かすという意味でも最良の策だったと言える。

『かぐや姫の物語』で地井が演じたのは、かぐや姫の育ての親の翁役。本作は、「竹取物語」を基に、平安時代を舞台にしたかぐや姫の物語が描かれるが、録音当時、地井は高畑監督に「これは、地球を否定する映画なんですか?」と尋ねたと言う。高畑監督から返ってきた答えは「全く逆です。これは、地球を肯定する映画なんです」だった。その答えに安心した地井は、楽しそうにプレスコを行ったそうだ。実際、翁がかぐや姫の一挙手一投足に胸躍らせる表情は、まさに親子の情愛にあふれ、見る者の心を鷲づかみにする。

完成報告会見でも、プレスコで共演した朝倉が、地井との想い出深い現場をこう振り返っていた。「地井さんとは初めてのお仕事でしたが、わずかな間でも一緒にお芝居ができて、なんて幸せ者なんだろうと噛みしめていました。地井さんが、私に対して全力で向かってきてくださる姿に感動しました。地井さんは本当にニコニコしていました。私は緊張して何も言えませんでしたが、すごくリラックスされていて、煮詰まると体を動かして体操を始めたり、休憩の合間におにぎりをほおばっていたり、自然体のお姿を拝見して、私もすごく安心して演技をすることができました」。

本作で声優に初挑戦した宮本信子は、地井と映画『放課後』(73)で夫婦役を務めたこともある旧知の間柄だった。「地井さんとは、これが最後の作品だったんですよね。2年前はまだまだお元気でしたが、やっぱり月で見守っているのではないでしょうか。とても素敵な地井さんでした」。確かに、劇中の翁はおちゃめで元気いっぱいで、宮本との息の合った掛け合いも絶妙である。

朝倉、地井、宮本の他、高良健吾、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪功、朝丘雪路、仲代達矢といったそうそうたる俳優陣が声優として参加し、適材適所な役どころで声のアンサンブルを見せている『かぐや姫の物語』。『風立ちぬ』の瀧本美織を宮崎駿監督に薦めたのも高畑監督だから、声のキャスティングの才も確かである。製作期間8年、製作費50億円を費やした高畑勲、渾身の1作は、是非大きなスクリーンで体感することをおすすめしたい!【文/山崎伸子】

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