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あの滝田洋二郎が『釣りキチ三平』で描く家族の絆―No.3 大人の上質シネマ

2009年3月19日 11:39

はつらつとした須賀・三平 | [c]2009「釣りキチ三平」製作委員会

『釣りキチ三平』は、『おくりびと』のアカデミー賞受賞の興奮がいまだ冷めやらぬ絶好のタイミングで公開を迎える滝田洋二郎監督の最新作。図らずもこの両作品の見どころには、“東北地方でのロケ”や“家族の絆”といった共通項があるだけに、同様の感動を期待してしまうのも無理からぬ話だ。

『釣りキチ三平』の原作は、釣り漫画としてはもちろん、各地の風土に根づいた自然派漫画の代表格としても知られる同名のロングセラー漫画。映画では、天才釣り少年・三平三平(須賀健太)とその祖父・一平(渡瀬恒彦)、三平が兄のように慕うバスプロ・鮎川魚紳(塚本高史)ら、「3度のメシより釣りが好き」という釣り師たちが、伝説の巨大魚を追い求めていくという内容だ。

ポイントはロケ地となった秋田県の風景。滝田監督自身が、原作者(矢口高雄)の故郷でもある秋田県にこだわり、渓流の緑豊かな風景に、滝から流れ落ちる水音や鳥のさえずりなど、自然そのままの音を重ねていく。大画面を眺めているだけでも、マイナスイオン効果を感じる場面の連続だ。

そして、滝田監督がキャラクターを描くうえで、キーパーソンに据えたのが三平の姉・愛子(香椎由宇)。釣りや田舎を毛嫌いし東京で暮らす彼女は、三平を東京に連れていくために故郷を訪れる。実はこの愛子、原作では三平家の血縁ではなく赤の他人。それを実姉に置き換えたことで、海釣りの最中に亡くなった姉弟の父親・平(萩原聖人)を巡る過去が物語に盛り込まれ、釣りから弟を引き離そうとする姉の心情にも共感させられるのだ。

「釣りはただの遊び」と言い切っていた愛子が、故郷の澄んだ川や空気に触れ、まるで都会の垢が浄化されていくように、かつての自分を取り戻していく過程が実に清々しい。それと同時に、釣りが原因でバラバラになった三平家の心も一つになっていく。これは釣りの魅力を真正面から描きながら、家族の絆の再生をも見つめた物語。単なる釣り映画――と決めつけずに、スクリーンでその感動をぜひ味わってほしい。【ワークス・エム・ブロス】

■『釣りキチ三平』は、3月20日(金)よりロードショー

【大人の上質シネマ】大人な2人が一緒に映画を観に行くことを前提に、見ごたえのある作品を厳選して紹介します。若い子がワーキャー観る映画はちょっと置いておいて、分別のある大人ならではの映画的愉しみを追求。メジャー系話題作のみならず、埋もれがちな傑作・秀作を取り上げますのでお楽しみに。

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