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【直前予測】第85回アカデミー作品賞&監督賞

2013年2月19日 15:00

作品賞&監督賞は誰の手に? | 写真:SPLASH/アフロ

現地時間2月24日(日)に開催される第85回アカデミー賞まで一週間を切った。各メディアが賞レースの行方を追う中で、作品賞と監督賞の受賞予測ををまとめてみた。

本来であれば、作品賞と監督賞を切り離して取り上げたいところだが、今年に限ってはそれは不可能だと言える。というのも、第70回ゴールデングローブ賞をはじめとする前哨戦で監督賞を受賞している『アルゴ』(12)のベン・アフレック監督が、アカデミー監督賞にノミネートされていないからだ。

まだ、第70回ゴールデングローブ賞が発表される約1ヶ月半前のこと、アカデミー作品賞の最有力候補はスティーヴン・スピルバーグ監督の『リンカーン』(4月19日公開)だった。作品の出来栄えはもちろんのこと、エイブラハム・リンカーンは歴代米大統領の中でもダントツに人気を誇る大統領であり、それを描いた作品をアメリカ人であるアカデミー会員が外すわけがないからだ。

一方で、キャスリン・ビグロー監督の『ゼロ・ダーク・サーティ』(公開中)、ベン・アフレック監督の『アルゴ』もまたアメリカにとっては誇らしい歴史に残る出来事を描いた作品だが、キャスリンが女性監督であることや(とはいえ、第82回アカデミー監督賞を女性監督として『ハート・ロッカー』で初受賞したが、2度甘い汁を吸わせない)、拷問シーンに対する非難が集中し、マーティン・シーンなどがアカデミー会員に対し同作に投票しないように呼びかけるというボイコット活動が展開された。また、民主党が拷問シーンを問題視し、事実関係を確認すべく監督やプロデューサーを呼び出す事態に発展している。またベン・アフレックという元大根役者で新米監督がメガホンを取った作品は、平均年齢62歳の白人男性が多くを占めている映画芸術科学アカデミー協会の会員からは、受け入れられないと考えられていた。実際に、このふたりの監督はノミネートされていないのだ。

娯楽映画の製作が多かったスピルバーグ監督も、アカデミー会員から受け入れられるまでに時間がかかった人物だが、それでも『シンドラーのリスト』(93)で同監督賞を受賞した過去がある。また、アン・リー監督はアカデミー会員のお気に入りではあるが、CG満載の『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(公開中)は、伝統を重んじる高齢者の会員の多くには、まだ受け入れ難いという現状がある。

しかし、蓋を開けてみると、GG賞の後、アメリカ映画俳優組合賞、アメリカ製作組合賞、アメリカ映画俳優組合賞、英国アカデミー賞、アメリカ脚本家組合賞など、主要な各賞で、べン・アフレックが次々と監督賞を獲得し、そして『アルゴ』が作品賞を受賞するという結果になった。これらの事実は、他の賞とは一線を画すアカデミー賞と言えども、過去の偏見によってベンを監督賞ノミネートから落選させたことを、恥じざるを得なくなったというわけだ。

今回のように、監督賞という重要なカテゴリーにおいて、正当に監督を評価できない事態を招いた結果、アカデミー協会が選ぶ道は一つ。『アルゴ』に作品賞を受賞させることだという。

また、2月19日(火)の投票締切前の2月6日、『アルゴ』にさらなる有利な事態が起こった。『リンカーン』の劇中で、1895年に奴隷制を廃止するためのアメリカ合衆国憲法修正第13条可決に際し、当時のコネチカット州の議員4人のうち、2人が反対票を投じたと描かれているが、「実際には、4人全員が賛成票を投じた」と現コネチカット州の下院議員らが異議を唱えており、史実と違った内容の修正を求めるという混乱が勃発したのだ。かくして、スキャンダルを嫌うアカデミー会員にとって、『ゼロ・ダーク・サーティ』と『リンカーン』の双方がいわくつきの作品となり、皮肉にも監督本人が過去にスキャンダルまみれだった『アルゴ』だけが、内容に対する批判がないことも、作品賞に一番近い存在となっているのだ。

これらの前提を下に、USAトゥデイ紙、FOXニュースらの映画評論家による予想を掲載しているgoldderby.comでは、25人の評論家が『アルゴ』の作品賞受賞を予測しており、『リンカーン』が作品賞を受賞すると予測しているのはたった一人となっている。なお、他の作品の受賞予想は皆無だ。また、indiewire.comもアメリカを称える『リンカーン』や『ゼロ・ダーク・サーティ』にも可能性を残しているものの、大本命は『アルゴ』だと予測している。

そして、監督賞に関しては、もしベンがノミネートされていればベンが監督賞を、『リンカーン』が作品賞を受賞する可能性も指摘しながら、ベンがノミネートされていない現状では、最有力候補はスピルバーグ監督に白羽の矢が立っている。アン・リー監督、『愛、アムール』(3月9日公開)のミヒャエル・ハネケ監督にも可能性がないわけではないが、前述のCG満載映画であること、『愛、アムール』は外国語長編映画賞の受賞に留まると予測されている。スピルバーグについては、コネティカット州の案件の影響は未知数だが、監督に責任が行く可能性は低いとされている。

過去の統計では、アメリカ映画監督組合賞受賞監督の作品がアカデミー作品賞を受賞した回数は51回、受賞率は79%で、確率の高さだけ考えると『アルゴ』がアカデミー作品賞を受賞する確率は高い。しかし、アメリカ映画監督組合賞を受賞しながらアカデミー監督賞を逃したのはたったの6人という実績からわかることは、この結果は、これら2賞の監督賞受賞者がオーバーラップする確率が極めて高い、という前提に基づいている。

また、過去84年間のアカデミー賞の歴史の中で、監督がノミネートされていない作品が作品賞を受賞した例は、たった3回しかないという厳しい現実もある。しかし、既にベン・アフレックは1948年の歴史の中で、アカデミー監督賞にノミネートされていない監督が、アメリカ映画監督組合賞を受賞した3人目の監督になった実績の持ち主でもある。となれば、『アルゴ』が上記の例外3作品の最後の作品となった『ドライビング Miss デイジー』(89)以来の快挙を成し遂げる可能性は極めて高くなってきており、授賞式の最後に発表される作品賞発表の瞬間が、例年以上に最高のクライマックスになりそうだ。【NY在住/JUNKO】

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