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染谷将太に樋口尚文監督が「秋吉久美子さんを食べちゃって」と無茶ぶり

2013年2月22日 10:00

『インターミッション』の染谷将太と樋口尚文監督
『インターミッション』の染谷将太と樋口尚文監督

銀座のど真ん中でカルト的な人気を誇ってきた銀座シネパトスが、3月31日(日)に閉館する。ここでは、娯楽映画の大作から、カルト作品、過去の名作まで、様々な映画が上映されてきた。そんな懐の広い映画館の最後を惜しみ、前代未聞のフィナーレ企画が用意された。シネパトスを舞台にした映画『インターミッション』(2月23日公開)である。本作に出演した染谷将太と、本作でメガホンを取り、映画評論家としても活躍している樋口尚文監督にインタビューし、遊び心がいっぱい詰まった本作の舞台裏について話を聞いた。

始まりは、シネパトスの支配人との何気ない会話だったという樋口監督。「普通にさよなら興行で、名画をかけて終わるのって寂しいねと言っていました。そこでふと、映画館は全天候型で、いつでも撮影できるという話になって。もしかしたら、映画を愛しているキャストさん、スタッフさんに声をかけたら、ここで映画が撮れるんじゃないか、ということを思いついたんです」。

そこからまず、コンセプトを決めていった。「シネパトスの良さには、昭和の文化のエッセンスがある。昭和ってひだまりのような時代で、高度成長期以降のいろんな文化、テレビ、映画、漫画など、すごく良いものが出てきた時代。でも今、映画館でフィルムからデジタルへ移行するという変遷期になり、東日本大震災が起こった。いろんな変化で殺伐となってしまい、みんなが元気を失っている。そんななかで映画を作る時、しみじみとしたノスタルジー的なものにするか、それともこれを起爆剤に、昭和の良いスピリットをひとくくりしたような映画にするかという、2つの選択肢がありました。それで、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)みたいに、しんみりと後ろ向きな映画を作るのではなく、昭和のはっちゃけた良い部分を伝える映画にしよう、ということになりました」。

樋口監督がシネパトスを舞台にした脚本を練り上げた結果、インターミッション(休憩時間)に集まったユニークな観客たちが、アンサンブル演技を繰り広げるというブラックコメディに仕上がった。「手弁当の映画です」と樋口監督が言うとおり、製作から公開までの全てを手作りで実現した。だが、俳優陣は、秋吉久美子、染谷将太をはじめ、香川京子、小山明子、水野久美、竹中直人、佐野史郎、佐伯日菜子など、新旧交えた豪華な顔ぶれとなっている。

秋吉が映画館の支配人役、染谷がその夫役という設定もユニークだ。染谷は、樋口監督からどんなリクエストを受けたのか?「一番最初にお会いした時から『やっちゃってください!かましてください』と、ひたすら言われました(笑)。かませたかどうかはわからないですが、好きにやらせていただきました」。樋口監督も笑いながら「無茶をお願いしました」と告白。「ひどい話ですが、染谷くんには『秋吉さんを食べちゃって』と、会う度に言っていました(苦笑)。その一方で、秋吉さんには『染谷さんを本気で蹴ってください』とお願いしたりして」。

長回しのシーンも多かったが、染谷自身はやり甲斐を感じたようだ。「1シーン・1カットは久しぶりでした。軽い気持ちでできるものじゃないから気を遣うし、スタッフさんも役者も全部が合致しないと成立しないんですが、僕はそういう現場が好きです。緊張しましたが、現場はライブ感があって楽しかったです」。

樋口監督は、染谷の演技をべた褒めする。「若いアクターに、長回しで『これをやってください』と言うと、ものすごくシナリオに沿った説明的な演技をするか、良い意味でミュージシャン的なノリの演技をするかどちらかなんです。でも染谷さんはまた違って、ものすごく遠心的な演技をするんですよ。遠心分離機みたいにすごいところまで行くんですが、必ず返ってくる。その遠心運動がすごくて。求心的なやりっぱなしのパフォーマンスにならず、遠心性と求心性の両方がある。昭和で言えば、ジュリー(沢田研二)とかショーケン(萩原健一)みたいな人でした」。

染谷は「嬉しいです」と照れながら笑う。「それは性格だと思うんですが、僕は単純にあまり計算ができない人間なんです。台本を読んだ時、勝手に無意識に画が浮かんじゃう。それが嫌いなんですが、そうしないと読めなくて。でも、現場では感覚的にやっているんです。台本の印象があるけど、感覚的にやったりして、ふらふらしている。よく自分ではわからないんですが」。樋口監督はそれを聞きながら「本当にすごくて、しびれちゃいました」と感嘆する。

最後に、本作の見どころを樋口監督からアピールしてもらった。「映画が好きな人はもちろん、老若男女問わず、震災後、行き詰まっている人たちに見てほしい。映画は自由だし、皆さんももっとはっちゃけて生きた方が良いんじゃないですか?ってことです。日本が右肩上がりで来たいた頃って、文化人も経済人も無茶をやっていました。でも今は、そういう大人がいない。異常ですよ。そういうものをぶち壊したいと思って作りました」。

「ぶち壊す」というのは本作のキーワードの一つだ。秋吉久美子が「映画って何でもありなの」という言葉は、まさに銀座シネパトスへの最大の賛辞に思えてならない。良き昭和の時代を駆け抜けた映画館の最後を飾る最高の大団円『インターミッション』。ここでしか見られないフィナーレを、是非見届けに行ってほしい。【取材・文/山崎伸子】

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