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阿部寛の「家中の包丁を研ぎました」という役作りに行定勲監督も驚愕!

2013年1月28日 11:00

『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』に主演した阿部寛と行定監督

阿部寛と、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)の行定勲監督の初顔合わせで贈る『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(公開中)。本作は恋多き女・艶を巡り、愛に傷つき、心をざわつかせるという愛の群像劇だ。狂おしいほどの愛を体現した阿部と、豪華な布陣をまとめ上げた行定勲監督にインタビュー。行定監督が舌を巻いた阿部のストイックな役作りとは?

阿部と初めて組んだ行定監督は、彼の俳優としてのアプローチの仕方に感動したそうだ。「毎日、満足していました。阿部さんの取り組み方が好きですね。今後ともよろしくお願いします!という気持ちで、早速次の作品のことまで考えてしまいましたから」。

阿部が演じたのは、艶に翻弄された夫・松生春二役だ。阿部は「艶のことを思っている松生が、いろんな人に電話をするんです。すると、艶と関わった男が動き、同時に女の人もざわざわ動き出すんです。映画を見たら、とんでもないことになっている。松生はすごいことをしたんだなと思いました」と苦笑い。行定監督も大いにうなずく。「そう言っていただけるのは嬉しいです。松生が毒をまいて、さあどう出てくる?ってことで。面白いですよね」。

まず、冒頭のシーンで、狂気に満ちた阿部の表情に思わず息を呑む。阿部は「包丁を研ぐところから始まるんですが、かなり気持ちが入りやすかったです。そこから家を出て、艶のいる病院へ到着した時、艶への思いがピークに達しました」と話す。行定監督はそんな阿部を見て、テストなしでいきなりカメラを回した。「松生が何をやらかすかが見たくて。段取りで立ち位置くらいは決めたけど、既に阿部さんは体と精神がつながっていたから、何をやっても良いという安心感がありました」。

阿部の徹底した役作りは、行定監督の証言からも伝わってくる。「最初、写真撮影で阿部さんに包丁を研いでもらったら、全然できなかったんです。これは吹替が必要かなと思っていたんですが、本番の日にはちゃんとできていて。というか、来てもらった職人が『完璧ですね』とほめていました。どうやら家中の包丁を全部研いだようで、奥さんが困ったみたいです。切れ味が良すぎちゃって(笑)」。阿部も「家の包丁、全部研いだんです。借りた包丁も研ぎすぎて、刃先が短くなってしまい、これは本番で使うのがやばいぞって」と思い出し笑いをした。

役作りでは、体重も10kg以上落としたという阿部。「普段なら、スポーツクラブで落とすんですが、松生は島を自転車で行ったり来たりするので、自転車でやせれば良いんだなと。でも、やせていくんだけど、足だけは筋肉質になっていきました(苦笑)」。行定監督は「撮影中、阿部さんが狂ったように見えました」と激白。「体を作るという魂胆があったとは思いますが、おかしかったです。だって、主演俳優が撮影中、ずっとぐるぐるママチャリで回っているんですから。風吹(ジュン)さんと二人乗りするシーンだって、阿部さんがずっと回っているから、僕の方で阿部さんが良い感じになったと思った時点で、『用意、スタート!』とカメラを回したんです」。すると阿部は、「道理でタイミング合うなって思ったんですよ」とおちゃめな笑顔を見せた。

最後に、艶を最後まで愛し抜いた松生についての感想をふたりに聞いてみた。阿部は「男から見たら可愛いです」という。「岸谷五朗さんや他の方が演じた男たちもそうですが。自分のなかにある弱さの部分を代表して出してくれているので、爽快ささえある。弱い部分を救い上げているような登場人物が好きです」。行定監督も、松生について「羨ましい」と感じたそうだ。「島を出た奥さんを待ち続け、全部を受け入れるという覚悟がある。ハードルが高いじゃないですか。艶は奔放でとんでもない狂った女だけど、松生は愛に生きていて、衝動的で真っ直ぐなんです。それを見た人たちが、じゃあ果たして自分はどうなのかと思う。これは人の愛し方のバリエーションの映画なんです」。

艶という一人の女の存在に、関わった全ての男女が心を揺さぶられていくという極上のアンサンブル物語『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』。映画を見て、愛のバリエーションにうなってみてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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