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伊藤英明、三池監督と『悪の教典』をやって「生きるのが楽しくなってきた」

2012年11月08日 10:21

『悪の教典』でタッグを組んだ主演の伊藤英明と三池崇史監督

『海猿』シリーズで演じた熱血漢の海上保安官・仙崎大輔と、『悪の教典』(11月10日公開)で演じたサイコキラーの教師、ハスミンこと蓮実聖司。実に両極端なキャラクターだが、今や俳優として、パワーランキングの上位にいる伊藤英明が底力を見せつけたという意味で、二つとも大きな役どころであることは間違いない。正義のヒーローからサイコキラーへ。でも、伊藤が演じた蓮実は、恐るべき連続殺人を犯していく悪鬼ながらも、ダークヒーローという印象を受けるから不思議だ。新生・伊藤英明と、伊藤から新たな魅力を引き出した三池監督にインタビューをした。

『海猿』と『悪の教典』とを比較すると、役への向き合い方が違ったという伊藤。「今まで、『海猿』というシリーズものがあって、ファンの人にこういうふうに見てもらって、こういうふうに喜んでもらいたいという思いで作っていました。ファンのために作る映画で、前作を超えていきたいという責任感もあったんです。でも、今回は、本当に役だけを見据え、役だけと戦いました」。

俳優としての考え方が、本作に出演したことで「すごく楽になった」と話す。「今まで、漠然と役者をやっていくという感覚があったけど、良い40代を迎えるために、あれもこれもやらなきゃ、これくらいの結果を出さなきゃという焦りがありました。でも、本作をやったことで変わったんです。40代は10年あって、50代も60代も10年ずつある。うまくいけば70代、80代もできるなって思ったら、ゆっくり大事なものをちゃんと取り入れてやっていけるなと思えたんです。お客さんにどう映るかはわからないけど、僕自身はものすごく楽しみなんです」。

『BRAVE HEARTS 海猿』と同じ年に公開できたことについて、「全く逆のものを撮影できて、なおかつ同時期にお客さんに見てもらえることがすごくラッキーでした」と語る。「今までは上手い役者だと思われたかった。上手い役者、良い役者ってものが何なのかもわからないくせに、それになろうとしていたし、変に大人になろうとしていた。でも、もっと素直で、もっとシンプルに役と向き合えば良かったんだなと。やりきって、役と向き合うことがこんなにも気持ちの良いことなんだと、三池監督に教えてもらいました。何だか、生きるのが楽しくなってきました。焦るんじゃなくて、長く、本当に大事なものをちゃんと見据えてやるのが大事だなって」。

そんな伊藤が扮した蓮実は、本当に怖い。何が怖いかというと、蓮実がいかにもサイコパス(反社会性人格障害)という怪しげな人物ではなく、生徒やPTA、同僚の教師たちから慕われる普通の人気教師に見えるという点だ。それだけに、最後の殺戮のシーンにはすごみを感じる。そして、気付けば蓮実の虜になってしまうのだ。

三池監督は、その魅力をこう読み取る。「そこが僕にとって、貴志先生の原作の一番の魅力だったんです。ただ、それは脚本や演出で出すものではないから、そういうところは捨てていきました。ハスミンはハスミンとしてただ動くだけ。でも、いつの間にか応援してしまうのはなぜなのか。それは、みんなが自分の個性を大事にして自由に生きるべきだと言いながらも、実際はものすごい狭いルールの中で生きているからじゃないかと。幸せだと、どこか無理をしているところがあるんです。だからこそ、ハスミンの行動に共感するのかなって。ハスミンの怖さは、人間の怖さですね」。

伊藤英明と三池監督の強力タッグで生み出された『悪の教典』。底知れぬ人間の恐ろしさを感じさせる蓮実聖司というキャラクターを、『海猿』ファンがどう受け止めるかも興味津々だ。でも、二つの真逆な役柄を演じ切った伊藤英明の度胸と、役者としてのキャパシティには感心すると共に、本作に心からのエールを贈りたい。【取材・文/山崎伸子】

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