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『トールマン』パスカル・ロジェ監督がジェシカ・ビールを丸裸に!?恐怖映画の真髄とは

2012年11月1日 17:00

フレンチホラーの旗手、パスカル・ロジェ監督にインタビュー!
フレンチホラーの旗手、パスカル・ロジェ監督にインタビュー!

拷問、暴力、凄まじい残酷描写で極限の恐怖世界を創造した『マーターズ』(07)。物議を醸す一方で、熱狂的なファンも生み出したパスカル・ロジェ監督の最新作『トールマン』がいよいよ11月3日(土)より公開される。来日したフレンチホラーの旗手を直撃し、本作の真髄、恐怖映画を撮る理由までを聞いた。

山奥の寂れた炭鉱町を舞台に、幼児連続失踪事件の真相を衝撃的な展開で描く本作。アイデアの発端は何だったのだろう。「そもそもの発端は、町でよく見かける、『この人を探しています』っていうポスターなんだ。あのポスターを見かける度に、『本当にどこに行っちゃったんだろう』っていう素朴な疑問を持っていた。でも、シナリオを書いていくうえで色々と自問自答していくと、社会的なシステムにも疑問が沸いてきたし、そしてもっと根本的なことに向き合うことになったんだ。親子って何だろう、親になるって何なんだろうってね」。

町でまことしやかに囁かれているのは、“子取り鬼・トールマン”の存在。主人公の女性ジュリアも大事な子供を連れ去られ、何とか取り返そうと血だらけ、傷だらけになって奔走する。ホラーファンにとっては、『テキサス・チェーンソー』(03)の印象が忘れがたいジェシカ・ビールがジュリアを演じている。「僕も『テキサス・チェーンソー』を見て、彼女が大好きになったんだよ!ずっと彼女と仕事がしたいと思っていた。ジェシカがその後に得た役というのは、ハリウッドが彼女を過小評価しているとしか思えない役どころばかりで。それもあって、今回のような複雑な女性を演じてほしかった。彼女も同じように思っていたようで、二つ返事でOKしてくれたよ。主人公のリアルな姿を表現するために、スッピンで挑んでくれたんだ!」

ジュリアが必死の形相で子供を捜そうとするうちに、観客は恐るべき“トールマン”の正体を目にすることになる。何が真実で、何が正義なのか、一瞬も目が離せなくなること請け合いだ。「僕はホラー映画というジャンルは、ただ血が出てショッキングとかそういうことではなくて、最もメランコリックな映画のジャンルだと思っているんだ。極限に追い込まれた時こそ、人間の本質が見えるもの。自分の作る作品に共通するのは、“自分探しの旅に出る”ということ。最終的には、自分が丸裸になることだね。『マーターズ』では、皮もはがされて、本当に丸裸になっちゃったわけだけれども!」と笑う。

続けて、こう語ってくれた。「実は、『トールマン』でも全く同じ作業をやったんだ。視覚的に皮をはがされてはいないけれど、だんだんとその人の核が見えてくる。人間というのは、何かしら新しい皮や仮面を身につけて生きていくのが常だろう?それをはがして、自分の本性を見つめる作業というのは、非常に痛みや苦痛を伴うことだと思うんだ」。

社会的テーマに挑み、人間の本質を見つめたい。ロジェ監督の取り組みたいテーマは一貫している。そのためにホラーという手法を取るには、もう一つ理由があるという。「アメリカが産業的にホラーというジャンルを作り、世界的に確立したものになった。人間の内面の奥深さを描くのに、導入部として“ホラー映画”という名を借りれば、より多くの人々に見てもらえると思ったんだ。ホラー映画として見に来てもらって、そのなかでどんでん返しがあることで、多くの人の目を引きつけられる。そこに自分の表現したいものを込めたんだ」。

描きたい本質は共通しているというが、今回、『マーターズ』とは全く異なる表現方法にチャレンジしている。あれだけのインパクトがある作品を放った後では、何とも勇気のいることだったのでは?「そうなんだ、勇気のいることなんだよ(笑)。『マーターズ』の公開後は、とにかく反響がものすごかった。だからこそ僕は、次は全く違うものを作らなければ駄目だと思ったんだ。『マーターズ』は極限的な映画。すぐにでも違うものを作らなければ、僕は一生、マーターズ的なものを作らざるを得なくなってしまうと思ったよ」。

そして、こう胸の内を明かしてくれた。「『マーターズ』のファンのなかには、凄惨なシーンだけを突出して好きだというファンもいる。それは僕の伝えたかった意図とは違うことなんだけれどもね。今回、『何だよ、マーターズと違うじゃん!』という形で、そういったファンが去っていっても仕方がないと思っているんだ。その代わり、僕が『トールマン』を撮りたいものとして作り上げたことによって、この次はもっともっと自由になることができる。僕は自分のパレットをどんどん広げていきたいんだ」。

知的でクールな佇まいのなかに、情熱があふれ出す。本作は、ハードな作品を意欲的に公開し、“ホラー映画の聖地”とまで呼ばれたシアターN渋谷のクロージング作品となる。ロジェ監督と同じく、チャレンジ精神を持ち続けた熱意ある映画館だ。閉館は非常に残念でならないが、是非劇場に足を運んで彼らの情熱に触れてみてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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