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フランス新進俳優、ディミトリ・ストロージュが語る男のロマン「無言実行こそ、厚みのある男」

2012年9月14日 17:00

『そして友よ、静かに死ね』のディミトリ・ストロージュに男のロマンを直撃!
『そして友よ、静かに死ね』のディミトリ・ストロージュに男のロマンを直撃!

『あるいは裏切りという名の犬』(04)など、フレンチフィルムノワールの先導者として知られるオリヴィエ・マルシャル監督。元警官としての経歴も持つ監督が、最新作『そして友よ、静かに死ね』(9月15日公開)では、1970年代フランスでギャング団“リヨンの男たち”として名を馳せた実在の人物、エドモン・ヴィダルの激動の半生にチャレンジ。当時の事件とフィクションを織り交ぜながら、しびれるような男の友情と裏切りを描き出す。そこで、若き日のエドモン役に扮したディミトリ・ストロージュを直撃。エドモン本人の印象や、男のロマンについて聞いた。

エドモン・ヴィダルの激動の人生を演じて、セザール賞助演男優賞ノミネートを果たしたディミトリ。エドモンの存在は、もともと知っていたのだろうか?「エドモン自身のことは知らなかったんだ。でも、“リヨンの男たち”というギャング団は、僕が生まれる前に逮捕されているんだけれど、僕より上の世代ではかなり有名な存在。フランスで、新たな銀行強盗のやり方を編み出したギャング団なんだ。『逃亡に時間をかけろ』なんて声をかけ合って、逃走方法を時間をかけて練って、警察を煙に巻いたりね。そしてまた、映画の中にも出てくるけれど、政府の闇組織のために資金集めをする、政府公認のテロリズム的な存在だった。銀行強盗で一度に盗んだ額も相当なもので、フランスではまだその記録は破られていないんじゃないかな」。

エドモン自らが現場に赴き、撮影を見守っていたという。有名な犯罪者として知られる彼の印象はどうだったのだろう?「驚くことに、本当に優しい、普通のおじいさんといった印象だったんだ。現場には、他の“リヨンの男たち”の生き残りのメンバー数人も来ていたんだけれど、なかには一緒にいて、ものすごい緊張感を感じてしまうようなオーラを発している人もいてね。後で聞いたら、殺し屋のような役割をしていた人で、『なるほど!』と思ったんだけれど(笑)。エドモンに関しては、それは昔からの彼の特徴でもあったようなんだけど、口数が少なくて穏やか。フレンドリーだったよ。撮影に関しても、口を挟むことはなく、質問をすれば答えてくれた。まさに、見守ってくれているという感じだったよ」。

映画では、裏社会の人物として恐れられながらも、家族や仲間と穏やかに暮らしている現在と、ギャングとして身を投じていく1970年代とが、交錯しながら映し出される。1970年代のエドモンを演じるうえで気をつけたことは?「やはり、現在のエドモンを描いた部分との間に信憑性を持たせることに気をつけた。この映画は全てが2パートで描かれるんだ。“家族への愛”と“仲間との友情”、そして現在と1970年代。1970年代で、しっかりと愛と友情を表現しなければ、現在のエドモンの苦悩につながっていかない。向こうにいかに橋渡しをするかが大事だった」。現在のエドモンを演じるのは、ジェラール・ランヴァン。色気あふれる演技が素晴らしい。

危険な社会と家族への愛の狭間で、苦悩するエドモン。ディミトリは、奥深い眼差しで、彼の苦悩を見事に表現してみせた。内面を表現することは難しくはなかっただろうか。「確かに、エドモンは口数が少なくて、セリフで表現するようなキャラクターではないからね。家族への眼差しに関して言えば、内面表現でも参考にしたのは、やはり実際のエドモンだね。エドモンと妻のジャヌーは、今でも一緒にいる仲の良い夫婦なんだ。フランスでは昨今、離婚も多い。25年もの長い間、夫婦の愛が続いているのは、ある意味すごいこと!しかもエドモンは、そのなかの13年くらいは刑務所暮らしだし、彼のせいでジャヌーも危険な目にあったり、映画の中で描かれる刑務所での結婚式も本当の出来事。そういった彼らカップルの歴史、情報をたくさん仕入れたうえで演じたよ」。

現在は穏やかに暮らしながらも、親友のために再び危険な社会に足を踏み入れていくエドモン。フィクションとして描かれる部分にも、男のロマンがたっぷりと詰まっている。「本作で魅力的なものの一つは、エドモンの二面性だよね。ギャングであり、悪党であっても、口数が少なくて、子供を学校に送っていったりする普通のお父さんでもある。決して派手ではないが、無言実行というか、多くを語らずとも、やることはやる。そういう男には厚みを感じるし、演じるうえでも興味深いことだった。昔は僕も、ギャングへのちょっとした憧れもあったけれど、今では彼らなりの苦悩や哀しみ、痛みを知って、その憧れはなくなったけれどね(笑)。男としては、彼の生き方に影響を受ける部分もあったよ」。

フランスの次世代を担う新進俳優として期待されるディミトリ。俳優としての面白みを、「普段の生活では会わないような人物、人生と出会う機会がある。それが自分のどこかに変化をもたらす経験となっていると思う」と語ってくれた。今後の活動は?「本作の次に出演したのは、ふたりの男女が出会って、メイクラブする話。ふたりしか出てこないような私小説風なね。そして、舞台ではチェーホフの『かもめ』にチャレンジしたし、その次には、名犬ジョリーを描いた娯楽作で善良な人物を演じているんだ。なるべく役に違いを持たせて、その色の違いを楽しみたいと思っているよ」。

オリヴィエ・マーシャル監督の作り出す“男の世界”に飛び込み、匂い立つような男らしさと切ない痛みを体現してみせたディミトリ・ストロージュ。変化を楽しもうとする彼の可能性は無限大。これからも、もっと彼の姿を見てみたい、そう思わせる魅力的な俳優である。【取材・文/成田おり枝】

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