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第65回カンヌ国際映画祭、後半の注目作品は?

2012年5月28日 12:40

カンヌ国際映画祭後半の注目作品 | [c]まつかわゆま

やっと南仏らしい青空になったカンヌ。8日目を過ぎて映画祭も終わりがみえてきた。後半になってハリウッドスターのカンヌ入りが続いている。ブラッド・ピット、クリステン・スチュワートとロバート・パティンソンのトワイライトカップル、ニコール・キッドマン、ザック・エフロンなど、セレブゴシップを賑わす常連が勢ぞろいした感じだ。それぞれメジャースタジオの作品ではなく、インディ系監督の作品の出演者としてのカンヌ入りなので、スター風をビュービュー吹かせて、ではない。会見でもアクターとしてのチャレンジであることを盛んにアピールしている。たとえば『Paper boy』は『プレシャス』のリー・ダニエルズ監督の作品で、キッドマンに対し「予算がないのでヘアメイクはつかないから自分でやってほしい」と言ったそう。それでも構わない、と出演を決めたニコールだが、セクシャルなシーンも多く、会見の時には未見の完成作に「仕事だから」と言いつつ、仕上がりを気にしていた。

ブラッド・ピットは『ジェシー・ジェームズの暗殺』(08)のアンドリュー・ドミニク監督と再タッグを組んで『KILLING THEM SOFTLY』に出演し、殺し屋を演じた。会見ではアンジェリーナのことも聞かれたが、嫌な顔を見せず、さらりと「いつどこで式を挙げるかはまだ決めていない」と答えてくれた。彼も俳優としてプロデューサーとして、儲かるかよりも意味のある作品を、というスタンスを取っている。

若手のスターたちも一人前の俳優としてアイドルから脱皮するチャンスととらえている様子だ。アイドルには許されないようなシーンやキャラクターに挑戦し、しかもカンヌの会見ひな壇にいることにいささか緊張している。ザックは何を聞かれても「光栄です」とつけ加えてしまうし、クリステンは逆に憮然とした感じで防御している。何というか、初々しい。ザックとクリステンは主役ではないので、そんなに質問も飛ばないし、責任もないので気楽といえば気楽。だが『Cosmopolis』(日本2013年公開)でリムジンをオフィスにしたトレーダー役を演じたロブは主役なのでそうもいかない。とはいえ、さすがに大ヒットシリーズの経験が度胸をつけているのか、集中する質問をさくさくさばいていく。大切な質問は監督のデヴィッド・クローネンバーグが答えてしまうしね。

さて、アイドルスター脱皮組の話はさておき、後半の注目作品を紹介していこう。『KILLING THEM SOFTLY』はアメリカ映画の中では比較的好評。1960年代のアメリカ南部で人種差別絡みの殺人事件の真相を追う新聞記者を描く『THE PAPER BOY』は賛否両論。同じマシュー・マコノヒーが出ているジェフ・ニコルス監督の『MUD』は今回のカンヌ参加作品の中では珍しくハッピーエンディングなためか受けが良い。南部ミシシッピ川のボートハウスに住む少年が小島に隠れている謎の男と知り合い、大人の世界を知って行くという成長物語。主役の少年を演じているのは『ツリー・オブ・ライフ』(11)でショーン・ペンの子供時代を演じたタイ・シェリダン。今、声変わり中で、これからが難しくなっていく年頃か。

クリステン・スチュワートをはじめ、若手オールスターといった感じの『ON THE ROAD』は、ケルアック、ギンズバーグ、バロウズなどビートゼネレーションの立役者たちの若き日をモデルに作り上げたフィクション。監督はウォルター・サレス。常連のケン・ローチ監督は今回はほのぼの系の作品『THE ANGEL'S SHARE』を出品。軽犯罪の罰で社会奉仕を命ぜられたどん詰まり青年たちの起死回生の奇策を暖かくコミカルに描き、評判も良い。

フランス系の下馬評で二番手につけているのがレオス・カラックス監督の久々の長編『HOLY MOTORS』。リムジンに乗って移動しながら様々な人生を演じていく男とドライバーが主要人物。物語はあってないようなものだが、異様な緊張感と美しさに包まれたカラックスの世界としか言いようのない映像感覚が楽しめた。

ここであげた作品は下馬評的に評価の良い作品であるが、必ずしもそれが賞に入ってくるとは限らないのがカンヌである。表彰式は明日夜、カンヌ時間5月27日19時15分からだ。どんな作品が、誰が賞を取るのか、今記者たちの話題はそこに絞られてきている。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

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