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『CUT』で西島秀俊を極限状態に追い詰めたナデリ監督「現場は尋常じゃなかった」

2011年12月16日 16:33

西島秀俊主演映画『CUT』を監督したアミール・ナデリ監督
西島秀俊主演映画『CUT』を監督したアミール・ナデリ監督

シネフィルとは映画好き、映画狂のことだが、ここまで映画愛を全面に打ち出したシネフィル映画も珍しい。その映画は、西島秀俊の主演映画『CUT』(12月17日公開)。メガホンを取ったのはイラン出身のアミール・ナデリ監督だ。西島演じる主人公の秀二は、殴られ屋としてパンチを連打されながら「真の映画とは何か!?」と訴えかける。今回来日したナデリ監督にインタビューし、監督がほれ込んでタッグを組んだ西島秀俊との壮絶な現場について語ってもらった。

西島とは2005年の第6回東京フィルメックスで出会ったが、その時「お互いに待ち望んでいる人と出会えたって感じだった」と振り返る。「西島はすごいシネフィルで、秀二と同様に、映画自体をクレイジーに愛してる方だとすぐにわかった。彼は大きな野心を持っているのに、それを隠していると感じたよ。秀二という役には僕自身の思いや性格が投影されているが、彼が俳優として素晴らしいのは、人のアイデアを自分のものとして新たに解釈し、出してくれた点だ」。

借金返済のため、殴られ屋となる秀二。終盤では100発殴られ続けながら、自分が愛する映画のタイトルを100本挙げていくという下りが壮絶だ。このシーンの撮影では心身共に極限状態にあったと西島自身が舞台挨拶で激白していた。監督は言う。「現場の雰囲気自体が尋常じゃなかった。熱くて汗をかいてるし、みんながクレイジーに叫んでいる中での撮影だったから。彼に何度も『大丈夫?』って聞いたんだが、『このまま行きましょう』と彼自身が言うんだ」。

現場では、既に西島と友情関係にあったというナデリ監督。「西島さんとは個人としての友情が芽生えていたので、万が一、事故とかが起きたら駄目だってこともわかっていた。でも、僕はもちろん、彼自身も止めることができなかったんだ。僕は決して現場で妥協しないタイプだから、一緒に仕事をする人は大変だと思う。今回も、とことん追い込まないと自分たちの思いを観客と分かち合えないと思っていたし。幸い西島さんをはじめ、俳優さんたちはみんな僕についてきてくれた。特に西島さんには、どれだけ感謝しても足りないくらいだ」。

映画の汚れをカットするという意味合いを含む『CUT』。このタイトルに込めた思いとは?「世界的に商業的で質の悪い作品があふれている昨今、僕自身はもう十分だろうと思っているので、そこをカットしたいなあと。劇中にもあるけど、『映画は売春ではなくて、アートだ』と思っている。才能を持った若い映画作家たちがたくさんいるのに、今は作品を作っても見せる場がない。過去の映画が持っていた純粋さが失なわれつつあるのは悲しいことだよ」。

本作を手掛けたことで、監督自身の心は浄化されたのだろうか?「そうだね。僕はいつも自分のパーソナルなところから映画を作ってる。幸運なことに今回、西島さんが彼の心や体を使ってそれを表現してくれた。今の映画界に一石を投じられたんじゃないかと思っている。また、大好きな日本で、優秀なスタッフやキャストと、この映画を作ることができてすごく嬉しかった。秀二って、とても日本的なキャラクターだと思う。信じるもののために自分を犠牲にするラストサムライのようだから。自分を犠牲にしてまで、人にバトンを渡していく。そういう点がとても日本の文化とマッチしていると思う」。

まさに鬼気迫る演技とはこのこと。ナデリ監督の映画に懸ける情熱を、全身全霊で体現した西島秀俊には感服させられる。シネフィルのふたりの国境を超えたコラボレーションは劇場で是非とも堪能してほしい。【取材・文/山崎伸子】

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    2011年12月17日(土)

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