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デヴィッド・クローネンバーグ監督がスキャンダラスな精神分析学の世界を描く!

2011年10月20日 18:44

『A Dangerous Method』がニューヨーク映画祭で上映
『A Dangerous Method』がニューヨーク映画祭で上映

ヴェネチア国際映画祭に出品された話題作『A Dangerous Method』(全米11月23日限定公開)がニューヨーク映画祭で上映され、『クラッシュ』(96)、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)など話題作を生み出してきた鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督、主役のマイケル・ファスベンダー、脚本家のクリストファー・ハンプトン、プロデューサーのジェレミー・トーマスが記者会見に応じた。

同作は、現代の心理学、精神分析学の礎を築いた若き日のスイス人精神科医カール・ユング(マイケル・ファスベンダー)と、ユングと師弟関係にあったオーストリア人の精神科分析学者ジークムント・フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)、そしてヒステリーに苦しむ、若く美しいロシア人精神科医ザビーナ・シュピールライン(キーラ・ナイトレイ)の、知られざる関係を描いたスキャンダラスなドラマだ。蜜月の時期があったと言われているユングとフロイトだが、ユングとザビーナの関係が親密になっていくにつれ、師弟を超えた関係に変化が訪れる。

数々の衝撃作を生み出してきたクローネンバーグ監督が、またもや精神分析という未知の分野に挑んだ理由について、「常に自分が情熱を傾けられることを探していて、以前からユングや精神分析の誕生についての映画を作りたいと思っていたのですが、あまりに題材が大きすぎて難しいと思っていました。でも、クリストファーの書いた脚本を読んだ時、エキセントリックで素晴らしいドラマに感動したんです。見事な時代背景、はっきりとした人物像とお互いの関係、そしてしっかりと構成された脚本を読んで、とてもわくわくしました。これなら映像化できると確信したんです。ちなみに私が初めて撮った7分間のショートフィルム『Tranfer』は、精神科医と患者との関係を描いたものなので、原点に戻ったのかもしれません」と、同作でメガホンを取った経緯を語ってくれた。

主役のユングを演じるファスベンダーは、『X-MEN ファースト・ジェネレーション』(11)でマグニートーを演じ、ヴェネチア国際映画祭に出品された『Shame』で主演男優賞を受賞するなど、遅咲きながら今、最も注目されている俳優の一人。クローネンバーグ監督との仕事についてマイケルは、「昨年トロントのデヴィッドの家にランチに招かれて、その時に作品について聞かされました。ほんの少しだけ、ユングという人物がどうやって生まれたのか、この作品のどんなキャラクターに惹かれたのかなどを説明してくれたのですが、それだけでしっかりと僕の心の中に、この作品とユングのことを植え付けていたんです。これが彼のメソッドです(笑)。デヴィッドの素晴らしいところは、撮影に入ってからは役者に任せてくれるところです。二回、ディナーを一緒にした時に、役どころについて話し合った後は、役者の裁量に任せてくれるんです。僕が今まで出会った監督で素晴らしいと思うのはそういう監督ですが、役者のやり方に任せてくれる監督なんて、そうそういませんね」と笑顔で語った。すっかりクローネンバーグ監督の魔術にかかってしまったファスベンダーだが、記者会見中、監督の話し途中にコメントを加えるなど、自由な雰囲気で意見交換がなされていた撮影現場を感じさせてくれた。

そして、監督と初タッグとなったキーラの体当たりの演技が絶賛されている。キーラは、今作でも惜しげなく裸体をさらし、統合失調症患者としてブルクヘルツリ精神病院に入院してから医師だったユングと恋に落ちるザビーナを演じているが、物語は初っ端からサビーナが狂気的なヒステリーを起こす、かなり演技力を要するシーンから始まる。

「彼女が僕に内緒で勝手に脚本家のクリストファーに会いに行って、おかしくなっちゃったんです」と、まじめな顔で冗談を飛ばして周囲を笑わせたクローネンバーグ監督だが、正直、キーラの演技力には度肝を抜かれたようだ。「この作品は、患者としてユングの施設に訪れたザビーナのパフォーマンスが全ての始まりといっても過言ではないので、最初がとても大切なシーンでした。撮影はこのシーンから始めました。クリストファーによれば、当時の病気の様子が詳細に書かれたユングのメモがあり、またユングが影響を受けた医師の写真がたくさん残っていたため、ヒステリーが治まると、次に身体にどんな反応がくるかということも細かく知ることができました。身体のコントロールが効かなくなり、いわゆる“不能”な状態に陥るのですが、それがどれだけすごいものかを最初に観客にわからせる必要があったんです。だからこそ、ザビーナは精神病院に来たわけで、ザビーナが、今までなかなか話すことのできない性のこと、マゾヒズムといったタブーについて話し、ユングと恋に落ちることで徐々に癒されていくプロセスを知ってもらうためには、観客が不愉快になるほどの極めた演技力が必要でした。もちろん、私もキーラもたくさんの文献を読みました。しかし、キーラと仕事をしたのは初めてだったにも関わらず、一緒に役柄を作り上げていくための準備期間がほとんどなかったので、正直、私たちが望むような演技をしてもらうのは不可能だと思っていました。ところが、キーラは、期待以上の仕事をしてくれました」と、キーラの演技力を絶賛すると、絡みの多かったファスベンダーも、「短時間で驚くべき演技力だった」とキーラの演技に敬意を表している。

複雑に絡み合った濃厚な人間ドラマの結末はどこに向うのか。監督と3作目のタッグとなる実力派俳優ヴィゴと共に、キーラ、ファスベンダーの演技にもアカデミー賞への期待がかかる。【取材・文NY在住/JUNKO】

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