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アントニオ・バンデラス、アルモドバル監督のSFスリラーで残忍な整形外科医に

2011年10月19日 13:06

ペドロ・アルモドバル監督最新作の記者会見で、監督と主演のアントニオ・バンデラスらが登壇 | [c]JIN

カンヌ国際映画祭でお披露目され、9月30日から10月16日まで開催されたニューヨーク映画祭に出展されたペドロ・アルモドバル監督最新作『The Skin I live in』の記者会見が行われ、アルモドバル監督と主演のアントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤが登壇した。

本作は交通事故で大やけどを負った妻を助けるため、人工皮膚開発に挑んでいた整形外科医が、やがてある復讐のために恐るべき実験を試みるというSFサイコスリラーで、アルモドバル監督が新天地に挑んだ作品だ。整形外科医ロバートに扮するバンデラスとアルモドバル監督とは、 これまでにも『マタドール 闘牛士 炎のレクイエム』(86)や、『欲望の法則』(87)などでタッグを組んできたが、バンデラスを一躍ハリウッド俳優の座にのし上げた『アタメ』(90)以来、実に21年ぶりのタッグとなった。「アルモドバル監督は僕にとって実家のようなもの。久しぶりに故郷の家族のところに戻ったという気持ちで、再タッグを組めると聞いてとても嬉しかった」とバンデラスはいう。

また『トーク・トゥ・ハー』(02)で監督とタッグを組んでいるエレナは、出身地のスペインだけでなく、メキシコ、フランス、そして『ヴァン・ヘルシング』(04)などハリウッドでも頭角を現している期待の国際派女優。細身の外見とは裏腹に、肢体を露わにすることをいとわず、レズビアン役もこなす大胆さを持ち合わせており、本作でも新種の皮膚開発のモルモットとなるベラに扮し、アルモドバル監督お気に入りのペネロペ・クルスに通じる役者根を見せつけている。「アルモドバル監督の作品は、本当に全てが美しくて素晴らしいと思います。その一員になれることはこのうえない喜びであり、さらにアントニオと共演できると聞いて、すぐに出演を快諾しました」と、出演を決めた経緯を語ってくれた。

整形外科医を演じたバンデラスは役作りについて、「誰かがモデルというわけではないし、特に一般の整形外科医に見られる行動や言動というものは必要ありませんでした。ペドロの脚本は常に服装、髪型に至る細部から行動まで全てにわたって完璧な人物像ができあがっているので、それに忠実に演じました。とにかくロバートは冷酷かつ残虐な人物ですが、感情移入をして共感できるキャラクターでもないかわりに、憎むべき存在でもないところが彼の脚本のすごいところです。それぞれのキャラクターが、それぞれの理由を背負って成り立っているからでしょう。とは言っても、役に入りきっていたようで、日常生活にも影響があったことを後から妻(メラニー・グリフィス)に指摘されました。それくらい強烈なキャラクターでした」と、撮影当時を振り返った。

脚本の中でキャラクターが完璧にできあがっているという点ではベラも同じだったようで、エレナは「ベラの忍耐強さとか弱さも強さも含めて、みんな好きでした。モデルは誰ということではなく、完璧な脚本の中で描かれるベラのその時、その時の感情を大切にして演じたら、このようなキャラクターになったんです。最初に完成した映画を見た時、胸が一杯になってしまって部屋の外に出てしまったんです。そして二度目に見た時、この作品がいかに素晴らしく、また美しいものであるかを改めて感じました」と語る。監督の思い描いたキャラクターを完璧に演じきったふたりは、作品の仕上がりに大満足のようだ。

アルモドバル監督は今作について、「常に観客は新しいものを期待しているし、自分でも常に新しいものを観客に見せたいと考えています。今回はホラーでもなく、時代を反映するような何か新しいものを作りたいと試行錯誤した結果、想像以上に恐ろしい作品ができあがりました。基本的に同じラインを作りたくないのですが、私の中で常にテーマになっているのはアイデンティティーという問題です。自分とは一体何なのか? 性別という本質的な違いはあったとしても、男女という簡単なくくりでは分けられないし、何が違うかも言えないと思っています。たとえ美容整形をして外見が変わっても、中身は簡単には変えられないのです。友人の娘さんで、SHEと呼ばれるのが嫌で、かといって男でもないので『ITと呼んでほしい』って言う人がいるのですが、なかなか難しい問題です。究極的には最後は皆、同じ人間だということです。今作でベラは、継ぎはぎのあるボディースーツを着ています。完璧なボディースーツは外見的な傷を隠すことはできても、人間のアイデンティティーまで変えることはできないということを表現するために、デザイナーのジャン=ポール・ゴルチエ(『キカ』(93)でもタッグを組んだ)が完璧なものを再現してくれたと思っています」と、トレードマークのサングラスを外して熱っぽく語ったアルモドバル監督。

今回、特に難しかった点については、「これだけシリアスな作品に、自分がこれまでの作品を通じて演出し続けているユーモアのセンスを、どうやって取り入れるかという点でとても苦労し葛藤を重ねた」というが、最終的には控えめながらもユーモアをちりばめた手腕はさすがだ。

驚くべきエンディングを迎えるSFスリラーでありながら、アルモドバル節は健在で、シャネル、エルメス、ヒューゴ・ボス、リーなど相変わらずファッショナブルなファッションでディテールにこだわった脚本と演出、そして自ら同性愛者を明言している監督自身が、未だに答えを見つけることができない永遠のテーマが散りばめられている。【取材・文NY在住/JUNKO】

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