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『一命』の市川海老蔵が語る、赤ん坊の話と、天才と称する三池崇史の演出

2011年9月16日 10:05

 『一命』の市川海老蔵にインタビュー
『一命』の市川海老蔵にインタビュー撮影監修:渥美亮太 スタイリング:大久保篤志 ヘアメイク:穐田ミカ(フェイ)

三池崇史監督が、市川海老蔵と瑛太を迎えて放つ時代劇『一命』(10月15日公開)。第64回カンヌ国際映画祭でも絶賛された本作で、市川は鬼気迫る浪人役を静かに熱演した。そこで市川にインタビュー。本作の撮影秘話から、歌舞伎への情熱、産まれた子供の話まで、色々と語ってくれた。

『一命』で市川が演じるのは、裕福な大名屋敷に「切腹させてほしい」と申し出る浪人・半四郎役。義理の息子・求女を演じた瑛太が5歳下、娘・美穂を演じた満島ひかりが8歳下でしかないのに、彼は孫のいる祖父役を演じたのだ。「瑛太さんとは普通に男どうしで仲良く楽しくやってましたけど、親子って感じじゃなかったです(笑)。一緒にご飯も食べに行きましたし、遊びにも行きました。彼はああ見えてものすごく熱い、こうなりたい、こうあるべきだ、こうなってやるっていうのがすごく強い人なので、一緒にいてとても楽しかったです」。

求女と美穂は子供・金吾を授かり、半四郎が赤ん坊をあやす場面もある。意外にも現場で赤ん坊の扱いが一番うまかったのは三池崇史監督だったという。撮影時の市川は、まだ親になる前である。「金吾役の赤ちゃんの実際のお父様とお母様が現場に付き添っていらっしゃるんですけど、僕が抱くとやっぱり泣くんです(笑)。金吾役の赤ちゃんは何人か待機してもらっていたんですが、みんな泣いていてもお母さんに赤ちゃんを渡すと泣き止む。これは何なんだろうなと正直思っていて。でも、実際、今自分に子供が産まれてみると、不思議なことに他の方が抱くと泣くのに、自分だと泣かないんです。『あ、こういうことか!』と」。

彼が映画に出演したのは、『出口のない海』(06)以来である。歌舞伎だけでは満足できないから映画の現場を踏むのだろうか?と聞くと、「そうではないです」と答える。「たとえば、僕は傘でも染め物でも、日本の良いものをきちんと残していきたいし、続いていってほしいんです。そして、歌舞伎を少しでも多くの方に見てもらうという環境を作らないといけない、と同時に自分が成長することが大事ですよね。映画では僕を知ってもらうと共に、たとえば瑛太君なり三池さんなり満島さんなりとお会いすることによって、僕自身も成長するわけですから」。

確かに、芸能の仕事だと、歌舞伎の世界では出会えないような人と出会えるわけだ。「歌舞伎の世界には、子供の頃からずっといるので、こちらがこういう芝居をしたら相手はこう応えるだろうなとか、どういう演じ方をするのかを考えることができるんです。でも、映画とかの場合だと初めてですし。たとえば大河ドラマなんかをやらせてもらうと、その時一番輝いてると言われている方々と毎週一緒にお芝居するわけです。僕としても刺激がすごく多くてありがたいし、勉強になる。また、テレビを見た人が、『じゃあ歌舞伎も見ようか』っていうことになると、それがプラスになるんです」。

歌舞伎にフィードバックすることは、いつも意識しているわけだ。「そうですね。私は歌舞伎が中心なので。でも、歌舞伎で満ち足りないから映画に出るとかいう感じではないんです。歌舞伎って十分もの足りる素材で、すごく面白いから。それに年齢やその人の成長と環境によって、楽しめるところが一杯あるので」。

では、今回、映画の現場での三池監督の演出はどうだったのか?「やっぱり素晴らしかったですね。三池さんは、簡単に“天才”って言ったら失礼だけど、一つのものに対しての貪欲さと、ものを作ろうとする時の真剣さが非常に鋭い。演出が的確でしたね。普通の人の考えではない、もっと鋭いんですよ。うまく表現できないんですけど、さすがって感じ。すごく勉強になりました。歌舞伎を演じていても、彼が僕の中に存在しています。三池さんだったらどうするかなって考えている自分がいるんです」。

話を聞いてみると、『一命』に出演したことは、かなり大きな収穫だったようだ。では、最後に聞いてみたい、“一命”を懸けて守りたいものとは? 「いやそんな別に(笑)。守りたいもの、そうだな。妻子っていうか、家庭なんじゃないですか。無理やりな質問だなあ(笑)」。【聞き手/吉田豪】

※今回掲載したインタビューは、9月17日(土)発売「T.」(2011年秋号 No.15)の一部を抜粋、編集しています。約1万5000字に及ぶインタビュー全文は是非「T.」をご覧ください
※「T.」:TOHOシネマズで販売されているシアターカルチャーマガジン。
販売劇場一覧はこちら(http://www.tohotheater.jp/t/

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