【レビュー】批評家96%が賞賛の『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』で“人生に一度”の大冒険へ - 2ページ目 |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2020/4/15 20:30

【レビュー】批評家96%が賞賛の『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』で“人生に一度”の大冒険へ


そんな2人の友情は、劇中のタイラーとザックの関係性をよりリアルなものにし、本作の魅力を高めてくれる。“特別な時”に交わす2人だけの握手や、お互いを支えあい信頼しあう姿、そして些細なやりとりひとつひとつに至るまで、演技を超えた関係性を作品を通して垣間見ることができる。なかでも目を見張るのは、タイラーはザックを差別することも特別視することもなく、ひとりの人間として対等に向き合っていることだ。孤独に生きてきたタイラーは、ザックの強い意志と夢に感化され、当然のように彼を尊重していく。その姿が、この作品の持つメッセージをより強固なものにしている。

手作りのイカダで憧れのプロレスラーに会いにいく旅に出発!
手作りのイカダで憧れのプロレスラーに会いにいく旅に出発![c]2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

本作でもうひとつの見どころとなるのは、なんと言ってもアメリカ東南部の雄大でちょっぴり古風な景色だ。劇中にはもちろん、現代のシンボルともいえる携帯電話が登場し、前時代を象徴するVHSテープが物語のカギを担うなど、時代背景や時間の流れを表すアイコンが登場するが、それらとは対照的に、手作りのイカダで大河を下る主人公たちを包み込む自然は圧倒的な無時代感にあふれている。それはあたかもこの物語が時代にとらわれない普遍的なものであると示しているかのようだ。

また、“2人の男と1人の女”の旅の過程というのも、数多の名作と重なるものがあって実に興味深い。男2人が“追われる身”である点からはアメリカン・ニューシネマの傑作『明日に向かって撃て!』(69)を、水に近い場所で旅をする3人の姿からはロベール・アンリコの『冒険者たち』(67)を想起せずにはいられない。そうした名作たちの幻影を背負いながら、ごくシンプルなロードムービーとして紡がれていく本作には、一元的な“正義”と“悪”に依拠した近年のアメリカ映画が失ってしまったあらゆるものが凝縮されていると感じるほどだ。

ザックを心配する看護師のエレノア役は、「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソン
ザックを心配する看護師のエレノア役は、「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソン[c]2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

外出自粛の影響で遠出ができないいまだからこそ、タイラーとザックとの冒険を通じて雄大な景色の数々に心打たれ、そしてこの上なく爽やかな開放感を味わってみてはいかがだろうか。『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』は本日より先行デジタル配信中、Blu-ray&DVDは8月5日(水)に発売される。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』は先行デジタル配信中。Blu-ray&DVDは8月5日(水)発売
『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』は先行デジタル配信中。Blu-ray&DVDは8月5日(水)発売[c]2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

文/久保田 和馬

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