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音のプロフェッショナルが語る映画『AKIRA』 山城祥二×名倉靖スペシャル対談【前編】

2020年4月3日 12:00

芸能山城組組頭・山城祥二とサウンド・エンジニア名倉靖が『AKIRA』の音を語る!
芸能山城組組頭・山城祥二とサウンド・エンジニア名倉靖が『AKIRA』の音を語る!撮影/野崎航正

『AKIRA』4Kリマスターセットが4月24日に発売! VHS、DVD、BDとメディアごとに進化してきた『AKIRA』の音。その最終進化形とも言える4K UHDブルーレイの音は、どのようにしてつくられたのか。『AKIRA』の音楽を担当した芸能山城組の組頭、山城祥二先生と、今回パッケージのサウンド・エンジニアを務めた名倉靖氏に、徹底したこだわりをきいた。

【写真を見る】ハイレゾ化、ウルトラ化、ペガサス化を経て、音のリアリティが格段にアップ
【写真を見る】ハイレゾ化、ウルトラ化、ペガサス化を経て、音のリアリティが格段にアップ[c]1988 マッシュルーム/アキラ製作委員会

「レコーディング当日に楽器をつくっているのか!と(笑)」(山城)

――『AKIRA』の音楽を担当したいきさつは?

山城「実は、『AKIRA』の音楽を誰がやるかというのはなかなか決まらなかったらしいんです。それで音響監督をされていた明田川進さんが大友監督に色々お勧めしてくださったなかで、いいと思ってもらえたのが私たちでした。デビュー・アルバム『恐山』や、『輪廻交響楽』というその直前に出したアルバムなど、何枚かを聴かれて、ぜひにという話をいただきました。でも、一度お断わりさせてもらいました。コミックとしての『AKIRA』はもちろん知っていて大好きでしたが、映画音楽は初めてで、しかも製作期間が非常に短いということで難しいのでは、と思ったのがその理由です。そうしたら『今までの山城組のアルバムから音楽を使わせてもらうだけでもいい』とまで言っていただき、そこまでおっしゃるなら受けないわけにいかないと手掛けることになりました。でも山城組は学生や社会人ばかりで、授業や仕事が終わってからビクターのスタジオに行って、始発で帰るみたいなことを何日もやっていました。アマチュアのグループだったので、夜と土日しかレコーディングができないというのが実際のところだったんです。そういう意味でもタイトなスケジュールでしたね。ラフ編集したジェゴグを使った『金田のテーマ』を大友監督に差し上げて、後日、陣中見舞いに行ったら、三鷹のスタジオで曲をガンガン鳴らしながらアニメーターの皆さんが画を描いている姿を目の当たりにして、すごく感動しました。大友監督がレコーディング・スタジオに来てくださったこともありました。ジェゴグって竹そのものなので湿度や気温によって音の高さが変わるんです。たまたまその日は前日と天候が違って、前日録音したテイクとピッチが合わなかったので、急遽、竹を削って音の高さを調律していました。その様子をご覧になって『こいつらはレコーディング当日に楽器を作っているのか!』と半分冗談まじりにおっしゃり、それがあちこちに広がって、いかに泥沼かって笑い話になったこともありました。楽器としてのジェゴグを本格的に作品に使ったのは初めてだったので、その扱いも大変でしたね」

セリフや音楽、SEなどの輪郭、分離がさらにクリアになった
セリフや音楽、SEなどの輪郭、分離がさらにクリアになった[c]1988 マッシュルーム/アキラ製作委員会

「DVD用5.1chの音を基に改めて解像度を上げました」(名倉)

――今回、名倉さんはどのようなお仕事をされたのでしょう?

名倉「音響監督の明田川さんからの紹介だったのですが、今回は4K UHDブルーレイ版のための改めてのサウンド・リマスターということで、お話をいただきました。DVD用の5.1chをつくった時の音をベースとして、そこに音楽を貼り直したうえで、最終的に山城先生のところで、“ウルトラ化”、“ペガサス化”をするというかたちです。基本的にセリフ、SE(効果音)は5.1ch版で出来上がっていたものではあったんですが、改めて解像度を上げる、という意識で作業しています。昔の古い作品の素材だと、高い音と低い音がなくなっているので、それをきちんと持ち上げて、聴きづらいセリフやポイントとなる効果音などを意図して持ち上げていくようなかたちでミックスを行っています。全体的に臨場感、分かりやすさ、解像度的なものを意識してミックスし直しました。その後は、山城先生がウルトラ化、ペガサス化するという流れです」

――ウルトラ化、ペガサス化とは一体どういうことなのでしょう?

山城「ハイレゾと言っても、ただアップコンバート、電子的にフォーマットを変換するだけではありません。人類の遺伝子がつくられた熱帯雨林環境には、周波数が高すぎて人間には聴こえないけれど脳深部を活性化する高周波が豊かにあります。我々が録音した熱帯雨林の環境音からそうした高周波だけを抽出して、それを名倉さんがつくった可聴域の音と相関させる、これがウルトラ化です。ウルトラ化は前のブルーレイの時もやっていたのですが、今回、元の音が非常に良くなり、リアリティが大幅に上がった。すると、ウルトラ化による音の感じがそれまでとかなり変わり、大人しくなりました。そこで、色々と試行錯誤しました。ペガサス化について詳しくお話することは今はできないのですが、ウルトラ化時の定数を変えることと、音楽周波数上限とそれ以上の高周波との境界領域のEQなどとを組合わせたかなり複雑な処理です。リアリティが爆発的に高まります」

制作当時、大友監督のオファーを一度は断ったと語る山城先生
制作当時、大友監督のオファーを一度は断ったと語る山城先生撮影/野崎航正

「実在感(リアリティ)を感じてもらえるよう工夫した」(山城)

――冒頭で犬を撃つ場面では、周囲のささやき声が今まで以上にはっきりと認識できました。また音楽に入っている人声も、その人の顔が浮かびそうなインパクトを感じました。

山城「それが実在感(リアリティ)ということです。まさにそう感じてもらえるよう狙って、工夫をしていったわけです」

名倉「基本的な素材というのは、ものすごく変えたりはしていないんです。例えば、楽器を変えて音をつくり直したとか、SEを別の音にするということは全くなくて、あくまでDVDの時のベーシックな音ネタを使って、立てるものは立てていこうってことで。ジェゴグの音や、セリフ、歌っている声、などをどう立てるかっていうのは、山城先生も含めてかなり煮詰めてつくっていきました」

――音の出入りもスムーズになった印象です。タイトル前の風がふわーっとリアに流れる感覚やバイクの移動感がとても心地良く、5.1chで聴かないと意味がないとすら思えました。

名倉「5.1chで聴いた時に、ここがあるとなしで世界観が違う、臨場感が違う、ってところだけはものすごく意識していたんです。そもそもの素材はDVDの時のものなので、その時からつくりの方向性はできていたんです。それをより分かりやすく、きちんと空間としてのつくり上げをしていったうえでのハイレゾ化だったので、元々の狙いが強調されていったというかたちだったと思います」

【後編に続く】

『AKIRA』4Kリマスターセットは4月24日発売。9800円(税別)。発売・販売元:バンダイナムコアーツ
『AKIRA』4Kリマスターセットは4月24日発売。9800円(税別)。発売・販売元:バンダイナムコアーツ[c]1988 マッシュルーム/アキラ製作委員会

取材・文/飯塚克味【DVD&動画配信でーた編集部】

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