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現代社会への警鐘…新たな“侵略”映画の形を成す『囚われた国家』の“リアルSF”世界

2020年4月5日 18:30

高度な科学力を誇る異星人によって地球が侵略されていく…。1898年にH・G・ウェルズが発表した「宇宙戦争」など、長きにわたって“侵略もの”は定番として親しまれてきたSFのサブジャンル。それは映画も同様で、近年も『パシフィック・リム』(13)や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(16)ほか多くの作品で人類と侵略者の激しいバトルが描かれている。

『猿の惑星 創世記(ジェネシス)』(11)で類人猿に追いやられる恐怖を描いたルパート・ワイアットの最新作『囚われた国家』(公開中)もその一つ。ただし、こちらは先に挙げたスペクタクルとはひと味違う極めてシリアスな作品だ。

【写真を見る】巨大な宇宙船にロボットの残骸…『囚われた国家』に登場する驚異のビジュアル
【写真を見る】巨大な宇宙船にロボットの残骸…『囚われた国家』に登場する驚異のビジュアル[c] 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

物語の背景は、戦争に破れた人類が地球の統治権を宇宙からの侵略者に譲渡した後の世界。人々は一見、元の暮らしを取り戻したようにも見えるが、体内に発信器を埋め込まれ職場から寝室まですべての行動が警察特捜班に監視されている。そんなディストピアで描かれるのは、自由を取り戻すため“統治者”にテロを仕掛けるレジスタンスと、彼らを取り締まる特捜班の攻防戦。つまり侵略者とのバトルではなく、人間同士の殺し合いなのだ。

人類に自由と主権を取り戻すため、レジスタンスは政府へのテロ計画を企てる
人類に自由と主権を取り戻すため、レジスタンスは政府へのテロ計画を企てる[c] 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

妻エリカ・ビーニーと共同で脚本も書いたワイアットは、劇中にヒーローを置かず、危機的状況に追い込まれていく人々をそれぞれの視点で追い続ける。その展開はまるでドキュメンタリーを観ているよう。悲壮感漂うレジスタンスの面々だけでなく、人類存続のため統治者に従わざるを得ない、取り締まる側の苦悩に満ちた表情も胸を打つ。

侵略者の傀儡となったアメリカ政府は、市民にデータチップを埋め込み常に監視下に置いていた
侵略者の傀儡となったアメリカ政府は、市民にデータチップを埋め込み常に監視下に置いていた[c] 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

そんな本作はロケーションもリアリズムに徹している。統治者によりいびつな姿になったダウンタウン、廃墟と化したシカゴ・カルチャーの中心地ウィッカーパーク、巨大な戦闘ロボの残骸が立ち尽くすミシガン湖畔、巨大宇宙船が飛来するソルジャー・フィールド…舞台であるシカゴのランドマークを使ったロケ中心の撮影が生々しさを醸しだす。

宇宙船が突っ込んだままになっているなど、すっかり荒廃してしまったシカゴの街並み
宇宙船が突っ込んだままになっているなど、すっかり荒廃してしまったシカゴの街並み[c] 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

派手な描写こそないが、ビルに突っ込んだまま放置された宇宙船や、ムクドリのように大群で飛行するドローンなどの描写を含め、さりげなく挿入された情景で非現実的な空気を生み出すセンスはお見事。権威主義や監視社会、ポピュリズムの恐怖など社会批判を含め、大型化傾向にある昨今の作品群とはまた違うSF映画の魅力が味わえるワザありの一本だ。

文/神武団四郎

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