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クリストファー・ノーラン、エドガー・ライトなど、映画監督が「映画館を救おう!」と寄稿

2020年3月28日 21:45

コロナウイルスの影響を受け、映画監督らが声明を寄稿
コロナウイルスの影響を受け、映画監督らが声明を寄稿写真:SPLASH/アフロ

『ダンケルク』(17)などで知られ、現在最新作『TENET テネット』の今夏公開を控える映画監督のクリストファー・ノーランが、この新型コロナウイルス感染症対策によって危機的状況に陥っている映画館に向けたエールをワシントンポスト紙に寄稿している。

3月20日付のオプ・エド欄(新聞社以外の有識者による署名原稿欄)に掲載されたノーラン監督の寄稿は、フイルムの存続運動など映画文化を支える動きを活発に行ってきた彼らしいものだった。「人々が映画について考える時、まずはスターやスタジオなどの魅惑的な部分に思いを馳せるだろう。だが、映画産業は地方の劇場でポップコーンを売る人、技術者、チケットのもぎり、映画を買い付ける人、映画の広告を売る人、トイレを掃除する人など、それら全ての人々によって支えられている。

ほとんどの従業員は月給ではなく時給で働き、我々の生活の中で最も廉価で民主的に人々が集える場所を提供してくれているのだ」と、監督の思い入れがあるミズーリ州周辺に映画館チェーンを持つ「B&B Theatres」の例を挙げながら語りかける。現在アメリカでは、窮地に陥る各産業が政府の支援を求めて要請を行なっているところだ。先週末はNATO(全米劇場所有者協会)が政府に対し、債務担保や税制優遇を請願すると発表。同時に、3月、4月に上映を予定していた複数の作品が映画館で公開されることなくVOD(ビデオ・オン・デマンド)で配信されようとしていることについて、NATOは映画配給システムの崩壊を憂慮するコメントを発表している。

ノーランは議会に向けて、「多くの産業から寄せられる支援要請のなかで、人々に娯楽を提供し、そのために雇用を生んでいる映画産業の本当の姿を知ってもらいたいと願う」と訴えかけ、「映画監督として、私の仕事は彼らのような劇場で働く人々や彼らが迎え入れる観客なしに成立することはないと考えている」と続ける。また、映画館の存続を訴えかけると必ず生じる“映画館vs配信”のマスコミ報道は的外れだと指摘した。

「映画スタジオからの戦略的で前向きなパートナーシップが必要だ。(自宅待機中の)ここ数週間は、人生には映画に行くことよりもはるかに大切なことが起きると思い知らされた。映画館に行くことで得られるものはそれほど大きくないかもしれない。この危機が過さったとき、人々が場を共にすることの必要性を、そして(映画を)一緒に観て、愛して、笑って、泣く体験はこれまで以上に力強いものになるだろう。映画体験への渇望は募り、新しい作品が公開されると、地域経済を後押しし大きな貢献を与える可能性がある」と結んでいる。

映画人からの訴えが続く
映画人からの訴えが続く写真:SPLASH/アフロ

同じように、『ベイビー・ドライバー』(17)のエドガー・ライト監督も英国の映像専門誌 EMPIREに映画館の重要性を訴える寄稿をしている。ライト監督の寄稿はノーラン監督とは少し異なり、主に映画ファンに向けて書かれている。「ぼくの人生は、3歳の時の映画の旅(1978年に地元の映画館で観た『スター・ウォーズ』)で完全に変わってしまい、ぼくがあの夜体験したような魔法を追体験してもらえるように、自分自身が観客として観たいと思える作品を作ってきた」と映画館体験の原風景を語った。

「このパンデミックによって消された映画館の灯りは想像するよりも暗く、銀幕を照らすプロジェクターの光が消されてしまったように感じる。この危機以前は、みんなと同じように家で映画を観ることができる便利さを享受していたけれど、本心では映画を本当に体験するということは、ソファから立ち上がり映画館に行って、友達や他人と一緒に座って大きなスクリーンに映し出される芸術作品(またはゴミのような映画)を鑑賞することを意味していると考えていた。ここ近年、映画館はホーム・シネマの快適さに対抗するために戦ってきたこともあり、特にインディペンデント系映画館がこの危機から復活するのはこれまで以上に厳しい戦いになると思う。では、映画ファンは、扉が閉じられたままの愛する映画館を救うために何ができるだろうか?」と問いかける。

贔屓にしている映画館のメンバーシップを購入したり、またすでに購入しているチケットを持っている人は、映画館への寄付と考えてみるのはどうだろうか?と語りかける。

ふたりの監督が語りかける先も発表したメディアも違うが、映画館での映画観賞体験を愛し、この危機を重く受け止めて行動に移したことは共通している。人は失って初めて重要さに気づくように、映画館の扉が閉じられ大きなスクリーンで映画を観ることの意味を噛み締めている。今後も、同じように映画人からの訴えかけは続いていくだろう。

『ベイビー・ドライバー』(17)のエドガー・ライト監督
『ベイビー・ドライバー』(17)のエドガー・ライト監督写真:SPLASH/アフロ

文/平井伊都子


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