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『Fukushima 50』若松節朗監督が語る、容赦ない災害描写と民謡に込めた“祈り”

2020年3月4日 20:30

若松監督が語る、細部までこだわり抜いた撮影の舞台裏とは?
若松監督が語る、細部までこだわり抜いた撮影の舞台裏とは?撮影/黒羽政士

東日本大震災時の福島第一原発事故を、佐藤浩市や渡辺謙ら豪華キャストを迎えて映画化した『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)が3月6日(金)に公開される。世間からの注目度も高いこの意欲作のメガホンを託されたのが、『沈まぬ太陽』(09)で骨太な人間ドラマを活写した若松節朗監督だ。キャスト、スタッフが一丸となった“ワンチーム”を率い、真実をもとにドラマを紡ぎ上げた指揮官の若松を直撃し、細部までこだわり抜いた撮影の舞台裏について話を聞いた。

原作は、門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」で、佐藤、渡辺をはじめ、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、佐野史郎、安田成美といった演技派俳優たちも、ある種の使命感を胸にして本作に参戦したのだという。

『沈まぬ太陽』でも製作総指揮を務めた角川歴彦から「君にしかできない」と本作のオファーを受けた若松監督。「なぜ僕なのだろうと思いつつ、その時は非常にピュアな気持ちで、なんのためにこの映画を作るのかと自分なりに考えました。“Fukushima 50”と海外で称賛された人たちがいても、当時の原発事故で実際に彼らがどういう働きをしたのか、その時点では知らないことが多すぎました。でも映画であれば、フィクションのなかにドキュメンタリー要素を入れつつ、家族や故郷に対する想い、放射能に立ち向かっていく時に見える人間の弱さと強さなど、いろいろなものが入れられるかもしれないと思いました」。

「地震の揺れと津波のシーンは、この映画にとって必要不可欠でした」

【写真を見る】生々しい津波の爪あとを再現…忠実に再現された原子炉建屋のオープンセット
【写真を見る】生々しい津波の爪あとを再現…忠実に再現された原子炉建屋のオープンセット[c]2020『Fukushima 50』製作委員会

非常にセンシティブな作品だけに、若松監督は、参加してくれたすべてのキャストやスタッフに感謝していると言うが、なかでも、“両雄”と表現した主演の佐藤浩市と、『沈まぬ太陽』に続いて組んだ渡辺謙のリーダーシップについては賛辞を惜しまない。

「佐藤浩市さんは、制御室の面子を集めて、『真摯に、誠実に向かいましょう』と言ってくれました。渡辺謙さんも、クランクイン当日にキャストだけではなく、200名ものエキストラさんに向かって『表情一つ一つ、真剣に取り組みましょう。我々の背中には福島の人たちがいます』と呼びかけてくれたんです。監督がなにも言わなくても現場がまとまります。」。

冒頭で、マグニチュード9.0、最大震度7.0という巨大地震が描かれ、黒い大津波が、福島第一原子力発電所(通称:イチエフ)を一気に襲う。全電源が喪失し、メルトダウンの危機に瀕したイチエフを制御すべく、1・2号機当直長の伊崎利夫(佐藤)は、福島第一原発の所長、吉田昌郎(渡辺)の指示の下、現場の作業員たちと共に決死のミッションを遂行していく。

1号機原子炉建屋が爆発するという衝撃的なシーンは、観ていて思わず飛び上がってしまった。冒頭からのたたみかけるような一連のシーンには背筋がゾッとさせられる。

「電気が消える、津波が来る、そういう矢継ぎ早の展開で、『ああ、地震による津波は本当に恐ろしい』と思わせたかった。事実に基づいて作っているので、あのカットはこの映画にとって必要不可欠でした。そこからドラマが始まるので、あれくらいの迫力を見せないと、説得力がなくなると思いました」。

「最悪の場合、日本が壊滅する事態になっていました」

メルトダウンの危機に瀕したイチエフを制御すべく、現場作業員は、決死の覚悟で作業に当たる
メルトダウンの危機に瀕したイチエフを制御すべく、現場作業員は、決死の覚悟で作業に当たる[c]2020『Fukushima 50』製作委員会

佐藤たちがいる1・2号機中央制御室と、渡辺たちがいる緊急時対策室も、細部までリアリティを追求したセットが組まれた。渡辺は若松監督の演出について「ドキュメンタリータッチ」と言っていたが、撮影もそれぞれのパートごとに固めて順撮りをすることで、役者たちを追い込んでいった。

「役者さんには髭を剃らないでくれとお願いしたところ、皆の顔がだんだん汚れて汚くなっていくので雰囲気が出ました。5日間、集中して撮りましたが、仮眠は取っていたけど、ほとんど寝られなかったと思います。最後のほうは疲れて、役者さんたちは床に寝ていました」。

かなりサディスティックとも思えるこの順撮りが功を奏し、心身共に疲弊し、やつれていく俳優陣たちの表情は、不眠不休で奮闘した作業員そのものに思えた。「事故の状況は、最悪の場合、チェルノブイリどころの騒ぎじゃなく、日本が壊滅する事態になりかねなかったけど、それを作業員たちが止めてくれた。彼らには家族がいたし、新婚さんや、両親を介護する人もいたでしょう。演じる俳優たちも皆でその想いを肌で感じようとしたし、僕はそれらを映さなければいけなかったんです」。


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