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“デ・パルマジック”がクドいほどに炸裂する“映像の魔術師”デ・パルマ最新作に刮目せよ!

2020年2月21日 21:15

『パッション』(12)以来、8年ぶりとなる待望の新作『ドミノ 復讐の咆哮』が、現在公開中のブライアン・デ・パルマ監督。本作もまたいつも通り彼らしさが120%発揮されたファンにとってはたまらない作品になっているので、そのエッセンスをここで紹介していきたい。

巨匠ブライアン・デ・パルマ監督最新作『ドミノ 復讐の咆哮』が最高にデ・パルマ!
巨匠ブライアン・デ・パルマ監督最新作『ドミノ 復讐の咆哮』が最高にデ・パルマ![c] 2019 Schønne Film IVS

些細なきっかけが予想外の事態に…

本作は、とある小さなミスによって相棒のラースを死なせてしまったデンマーク市警の刑事クリスチャンが、犯人の男タルジを捕えようとするが、そこにタルジをISISIへの罠として利用しようとする悪徳CIAエージェント・ジョーが現れ、三つ巴の様相を見せていく…という物語。些細なボタンの掛け違いが悲劇を生み、全く関係のない事柄がタイトル通りドミノ倒しのように連鎖していく。

デンマーク市警の刑事クリスチャン(ニコライ・コスター=ワルドー)の些細なミスが思いがけない事態へとつながっていく様子を描く
デンマーク市警の刑事クリスチャン(ニコライ・コスター=ワルドー)の些細なミスが思いがけない事態へとつながっていく様子を描く[c] 2019 Schønne Film IVS

この物語の構造の時点でデ・パルマらしいと言える。例えば『殺しのドレス』(80)では、とある約束が守られなかったこと、そして些細な忘れ物を取りに戻ったことにより、女性が命を落としてしまい、さらにたまたまその現場に居合わせたヒロインが、犯人と勘違いされて事件に巻き込まれていくという物語が展開した。

そして本作で軸として描かれているのは復讐劇だが、これも『ファントム・オブ・パラダイス』(74)や『キャリー』(76)、『パッション』などで幾度も扱ってきたものであり、デ・パルマらしさを感じさせる題材だ。

“デ・パルマジック”炸裂の独特の映像たち

スプリットスクリーンなど技巧派デ・パルマの真骨頂が発揮されている
スプリットスクリーンなど技巧派デ・パルマの真骨頂が発揮されている[c] 2019 Schønne Film IVS

デ・パルマ監督と言えば、映画内の状況や何か起こり得そうな予感などを映像や演出の力だけで表現し“映像の魔術師”と呼ばれる天才。様々なテクニックを駆使し、観る者に鮮烈な印象を与える映像美は“デ・パルマジック”“デ・パルマ・タッチ”とも呼ばれている。本作でもそんな彼らしさはこれでもかというほどに炸裂している。例えば、倒れたラースの状況について、クリスチャンと同僚の女性刑事アレックスが電話で話すシーン。ここではアレックスに遠くからカメラがジワリジワリとズームアップしていき、その不穏なカメラワークは彼女の意味深長な表情が何かその後に絡んでくるのでは?と観客に意識させる。

ドローンカメラを使ったショットなど、様々な映像が楽しめる!
ドローンカメラを使ったショットなど、様々な映像が楽しめる![c] 2019 Schønne Film IVS

このショット以上に彼を特徴づけるのが、画面を分割し様々な状況を見せるスプリットスクリーンと呼ばれる手法。『スネーク・アイズ』(98)のように違う場所で同時に起きていることを一つの画面で見せたりと、効果的に状況を説明してきた。本作ではISISの女性テロリストが映画祭で銃を乱射する場面でスプリットスクリーンが用いられている。女性が持つ銃に銃口を向いたカメラと自撮り用のカメラが装備されており、その映像が世界中に配信されるというこのシーンでは、バタバタと倒れる人々とテロリスト彼女の表情を一つの画面で映し、被害者と加害者というテロの表裏を表現。さらに本作ではそのネット映像をテロ集団のボスが別の空間で眺めているいう構造となっており、状況の説明まで兼ねたこれまでより一段階進んだ形で使われているのだ。

クライマックスの闘牛場のシーンは、デ・パルマらしさがこれでもかというほどに詰め込まれている
クライマックスの闘牛場のシーンは、デ・パルマらしさがこれでもかというほどに詰め込まれている[c] 2019 Schønne Film IVS

これら以外にも一つのカットに収まる二人の表情を同時に見せるショットなど、デ・パルマタッチだらけの本作だが、白眉はクライマックスの闘牛場でのシーンだ。テロリストが自爆を目論むこの一幕、テロに挑む姿を仲間が遠くから双眼鏡を通して眺めている“のぞき見”の映像や、事態のギリギリ度合いをあおるようなスローモーション、さらにテロリストが飛ばした配信用ドローンカメラを通しての映像など、様々なテクニックを駆使して盛り上げていくのだ。

エレベーターやカミソリ…細部に宿るデ・パルマらしさ

映像以外にも様々なところにらしさを見出すことができる本作。彼の作品といえば『レイジング・ケイン』(92)、『アンタッチャブル』(87)などほとんどでエレベーターが登場しており、緊迫感をもたらす空間としての機能や殺しが起きる舞台などとして重要な役割を持ってきたが、本作でもクリスチャンがタルジの違和感に気づくシーンとして登場する。

エレベーターはデ・パルマ監督の好物なシチュエーションだ
エレベーターはデ・パルマ監督の好物なシチュエーションだ[c] 2019 Schønne Film IVS

またタルジがラースを殺す時の凶器にはカミソリが用いられ、首を切り裂くシーンをしっかり見せるといった点もデ・パルマらしい。傾倒するヒッチコックの『サイコ』(60)はもちろん、少年時代に刃物を手に持って父親の浮気現場を押さえた経験があるそうで、その影響からなのか『殺しのドレス』などカミソリやナイフといった刃物が凶器として作品内では多用されてきた。

さらにスリル感を盛り上げる盟友ピノ・ドナッジオの音楽など、デ・パルマらしさ満点で、映画を観る喜びを感じられる本作。現在79歳のデ・パルマ監督には、まだまだ頑張って新作をつくり続けてほしいものだ。

文/トライワークス

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