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『HUMAN LOST』脚本の冲方丁と又吉直樹が“太宰治”トーク!又吉「自分が抱いていた感覚がみんな共通だと教えてくれた」

2019年12月8日 08:30

現在公開中の『HUMAN LOST 人間失格』にて脚本を担当した人気作家・冲方丁と、最新作「人間」を発表したばかりの又吉直樹の対談が実現!日本文学の傑作・太宰治の「人間失格」をSFダークヒーローアクションものとして大胆にアレンジした本作を通して、人気作家である2人に“太宰論”を語ってもらった。

太宰治や「人間失格」についてのトークが繰り広げられた
太宰治や「人間失格」についてのトークが繰り広げられた

「(太宰治に)一番惹かれるのは、お笑いの部分です」(又吉直樹)

――お2人にとって太宰とはどんな存在なのでしょうか?

又吉直樹(以下、又吉)「本を読み始めてすぐの頃に出会った作品が『人間失格』でした。そこには、人前で話すべきではないと僕の心の中に留めておいたことが書かれていました。自分が抱いていた感覚は特別なものではなく、みんなが持っている共通の感覚だと教えてくれた存在ですね」

冲方丁(以下、冲方)「現代文学においてと露悪な感覚は一般的だと思うのですが、太宰が生まれた時代は露悪的なこと、羞恥や包み隠すべきものの露出というのはセンセーショナルなものだった。そこが多くの読者にウケたのだと思います。その一方で、文芸界からは半分嫉妬もあった存在だったのかなと」

主人公は怠惰な日々を送る大庭葉蔵
主人公は怠惰な日々を送る大庭葉蔵[c]2019 HUMAN LOST Project

――又吉さんの太宰好きは有名で、驚くようなエピソードもあったりしますよね。

又吉「僕の住んでいたアパートが太宰の家があったところだったとか、たくさんあるのですが、それって、僕のように太宰のことに興味がなかったら気づかない偶然。自分が太宰を好きだから、共通点が見つかっただけのことだと思っています」

冲方「太宰に惹かれるのは作品ではなく人間としてなのですか?」

又吉「一番惹かれるのは、お笑いの部分です。自分の抱えているものを内面に隠したままの状態は結構しんどいもの。太宰の作品は、それを隠さずにおもしろおかしく書いているものが多い。人にしゃべることでだいぶ楽になること、僕の最初の表現に一番近いと感じて惹かれていった気がします」

冲方「ご自身の中にあるものを解放する術を求めて太宰を読んだのか、それとも多くの人たちの中にあるものを解放させたいと思って太宰作品から術を学んだのですか?」

又吉「テレビなどで説明するときは便宜的に“尊敬”とか“影響”という言葉を使っていますが、どちらかというと僕は太宰のことをすごく好きな一般の読者と同じで、身近な頼もしい存在という感じで受け取っています。自分より前の時代を生きた人間でも同じような感覚を持っていた。だから僕の感覚は普遍的なものなのかもしれないと、太宰作品で答え合わせができました」

冲方「僕はわりと太宰作品のエキセントリックな部分を見がちだったので『寄り添ってくれる存在としての太宰』というのは発見ですね」

又吉「先ほど、冲方さんがおっしゃっていた露悪的な部分というのは、僕から見るとお笑いの“ふり”に感じます。太宰はナルシストと受け取られがちですが、それはその後の失敗を際立たせるための“ふり”なんです。月夜を一人で歩きながら、『ちょっと気取って、ふところ手して歩いた。ずいぶん自分が、いい男のように思はれた』といった文章にそう思います。そこだけ読むとナルシストなんですが、その文章は『財布を落とした』と続くんですね。自分が男前のように見えた直後に、財布を落とす。ただ財布を落とすのでは足りない。めちゃくちゃカッコつけてたけど、カッコ悪い失敗をしたという“ふり”と“転び”がセットになっているんです」

冲方「自分の理想と現実のギャップをよく知っている方の文章ですよね」

【写真を見る】太宰治の傑作「人間失格」をSFの世界観で大胆アレンジ!
【写真を見る】太宰治の傑作「人間失格」をSFの世界観で大胆アレンジ![c]2019 HUMAN LOST Project

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