• INTERVIEW

北条司が60歳で監督デビュー!台詞のない『エンジェルサイン』の魅力とは?

2019年11月16日 6:30

オムニバス映画『エンジェルサイン』の北条司総監督

「シティーハンター」の人気漫画家、北条司が初めて総監督を務めた実写映画『エンジェルサイン』が、11月15日より公開中だ。御年60歳にして、初めてメガホンをとった北条監督を直撃。監督は朗らかでとてもエナジーに満ちた方で、初めて体験した映画撮影の現場を饒舌に語ってくれた。

本作は、世界108の国と地域から寄せられた、台詞のない短編漫画を審査する国際漫画賞「サイレントマンガオーディション」の応募作品6888編の中から、選び抜かれたアジアの受賞作品5作と、北条監督が描き下ろしたオリジナルの「プロローグ&エピローグ」を加えて構成された長編オムニバス映画。北条監督のパートは、松下奈緒とディーン・フジオカが主演を務め、日本人キャストとして、ドイツの受賞作「別れと始まり」に緒形直人と菊池桃子が、ブラジルの受賞作「父の贈り物」に佐藤二朗といった豪華なキャストが参加した。

「漫画家は大変そうだからやりたくなかったんです」

『エンジェルサイン』は11月15日より公開中 | [c]「エンジェルサイン」製作委員会

初めて監督業にトライした北条監督は「気負いなくやれました」と穏やかな笑みをたたえる。「僕はそもそも、自分でなにかをやろうといった固い信念のもとで生きてきたわけではなく、なにごとも流されてやってきた人間です。気になるものがあれば、そこに首を突っ込むし、気に入らなかったらスルーするだけです」。

とはいえ、あの人気作品「キャッツ・アイ」が連載デビュー作なのだから、もはや凡人にはうなずけないところがある。さらに北条監督は「漫画家は大変そうだからやりたくなかったんです」と驚くべき発言を放つ。

「漫画は自分で描くから、スピードが一目瞭然じゃないですか。このペースでしか描けないのなら絶対に無理!絶対に死ぬ!と思っていました(笑)。でも当時、お金欲しさに、作品を投稿したら入選し、担当編集がついて、そのまま連載が決まったので上京をしたんです。その時、嫌だと思ったら断っているけど、漫画を連載できるなんてめったにない機会だし、当時僕は九州に住んでいて、東京に行けるというのもいいのかなと軽く考えてしまって…。それでいまに至る感じなので、映画監督も同じような流れで、やってみることにしました」。

「父への贈り物」 | [c]「エンジェルサイン」製作委員会

なるほど、北条監督の場合、“言うは易く行うも易し”なのだろうか?『エンジェルサイン』の要となる「プロローグ&エピローグ」で、松下とディーン・フジオカが演じたのは、夢を追いかける音楽家のカップルだ。全編を通して台詞を用いず、映像と音楽のみでストーリーを紡ぐ本作ということで、北条監督は画コンテと映像で見せるVコンテの両方を用意した。松下たちは「台詞がないというのは一つの挑戦だった」と言いながらも、音楽をモチーフにした作品ということで「セッションしているようで楽しかったです」という感想を述べている。

「松下さんたちに衣装合わせの時、『台詞がないけど、しゃべっちゃいけないんですか?』と質問されたので、『いや、普通にしゃべってけっこうです』と言いました。でも、撮影が進んでいくうちに、2人は口パクで演じるようになっていきました。そういう演技の変化がおもしろかったです」。

「監督をしてみておもしろかったのは、音楽をふんだんに使えたこと」

60歳で監督デビューを果たした北条司総監督

アニメ作品などのアフレコに立ち会うことが多かった北条監督にとって、実写映画の現場はとても新鮮に映ったそうだ。「声優さんの演技はよく見てきましたが、彼らにはスイッチがあって、オンになった瞬間、役に入る感じなんです。でも、今回の現場では、そういう印象は受けず、常に和気あいあいとされていました。たぶん松下さんとディーンさんは相性も良かったんでしょうね」。

今回、監督をやってみておもしろかったことは「音楽をふんだんに使えたこと」だったそうだ。「初っ端からムーディな音楽のシーンで始まりますが、漫画ではああいう導入の仕方はできません。『ドカーン』という爆音とか、『ガサガサ』といった音などは書けるけど、静かでいい音楽は描けません。もちろん台詞で『いい音楽だね』と、書くことはできますが。今回は、たっぷり音楽を入れられたので、すごくうれしかったです」。

ただ、今回は監督としてだけではなく“総監督”として、ほかの監督が撮影した5本を編集して1本の映画にしなければならず、その苦労は予想以上に大きかったようだ。

「自分のパートは、自分で絵コンテを描いているので大きくは変わることはありませんでしたが、他の監督はこちらから用意した絵コンテどおりに撮影するはずもなくて(笑)。それぞれ自由に膨らませて演出してくれていました。その結果、まとまりがつかなかったんです。台詞がないので、観るのに集中力がいるから、短いほうがいいと思い、Vコンテ段階で70~80分くらいの長さにしました。ところが、各監督から送られてきた作品をつなげたら、2時間を超えちゃったんです(苦笑)」。

『エンジェルサイン』のプロローグ&エピローグ | [c]「エンジェルサイン」製作委員会

そこから、泣く泣く各作品を短く編集したという北条監督。「音楽をまったく入れてこない監督もいたので、あとから入れたり、ストーリーを加えたりして、ようやく完成した次第です」。

その編集のおかげで、5本の短編が流れるようにつながっていき、『エンジェルサイン』という一本の映画が完成したわけだ。映画監督の醍醐味について聞くと「目の前で、みるみるうちに作品ができあがっていくところです。漫画は自分が描かないと進んでいかないので。大勢で集まって、ガーッと作り上げていく作業がとても楽しかったです」。

慣れない監督業や編集作業の苦労も、終始笑顔で語ってくれた北条監督。60歳で監督デビューを果たしたこと自体もすごいが、なにごとにも肩肘張らず、軽やかに取り組んでいる姿は、なんともすてきだ。折しも、爆笑必至のフランス版の実写映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』も11月29(金)からの公開を控えているが、北条先生もお墨付きとか。2作ともまさにボーダレスな作品なので、幅広い映画ファンに観ていただきたい。

取材・文/山崎 伸子

関連映画

関連映画ニュース

[c]「エンジェルサイン」製作委員会| (C)「エンジェルサイン」製作委員会| [c] AXEL FILMS PRODUCTION - BAF PROD - M6 FILMS| [c]Pierre Lacheau & Axel Films Production