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デッカードに関する衝撃の解釈も!5つのバージョンを持つ『ブレードランナー』の深淵に迫る

2019年9月07日 22:00

今年の7月に、75歳でこの世を去ったオランダ人俳優ルトガー・ハウアー。同郷のポール・バーホーベン監督の作品などで存在感を放っていた彼だが、やはり代表作はリドリー・スコット監督による不朽の名作SF『ブレードランナー』(82)だろう。レプリカントと呼ばれる人造人間のリーダー、ロイ・バッティを演じ、悪役ながら彼が背負う悲しき運命を見事に表現して高い評価を獲得した。

7月に亡くなったルトガー・ハウアーの代表作でもある | Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

そんな彼の雄姿を拝むことができる『ブレードランナー ファイナル・カット』(07)が、本日9月6日(金)から2週間限定で、日本で初めてIMAXシアターにて上映されている。この『ファイナル・カット』を含め、『ブレードランナー』は様々なバージョンがあることでも知られているが、その違いについて改めて説明していきたい。

現在まで全部で5バージョンが存在!いや7バージョン?

惑星移住が可能となった2019年の近未来の地球を舞台に、人類に反旗を翻した男女4人のレプリカントと、ハリソン・フォード演じるブレードランナーと呼ばれるレプリカントを追う捜査官のデッカードとの戦いが描かれる本作。SF作家フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」が原作で、公開当時こそ興行的に振るわなかったが、暗く退廃的な世界観や不可解なストーリーは議論を巻き起こし、普及し始めたVHSを購入するファンも急増するなど、カルト的な人気を誇るに至った。

現在まで全部で5つのバージョンが作られている | Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

映画が公開された1982年時点ですでに、公開前に観客の反応を見るための試写版『ワークプリント版』や、アメリカで公開された『オリジナル劇場公開版』、国外用に編集された『インターナショナル劇場公開版』と3つのバージョンが存在。10年後の1992年に『ディレクターズ・カット』が作られ、その15年後の2007年になると『ファイナル・カット』が公開。現時点で5つものバージョンが作られているのだ。

さらに細かく説明すると『ワークプリント版』に3つのシーンを足したという『サンディエゴ覆面試写版』や、テレビ放送の際に暴力シーンをカットした『USテレビ放送版』というソフト化されてない2つのバージョンもあるから驚きだ。

『ブレードランナー ファイナル・カット』は9月6日(金)より2週間限定で公開中 | Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

ファンの後押しで『ファイナル・カット』が誕生!

なぜそんなにも多くの種類が作られたのだろうか?これは簡単に説明すれば、劇場公開されたものがスコット監督の意にそぐわなかったからだと言える。というのも、『ワークプリント版』の観客から寄せられた「結末が暗い」などの意見を受け、映画会社が編集を加え、より一般的に改変されたバージョンが劇場公開されたのだ。

しかし、後に監督が編集したものを観たいというコアなファンからの声もあり、新たにスコット監督が望む形で編集された『ディレクターズ・カット』が生まれ、さらに「幻の高画質の特撮シーン」を使用するといった映像に修正が加えられた『ファイナル・カット』が作られていったのだ。

【写真を見る】『ブレードランナー』っていろいろなバージョンあるけど何が違うの? | Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

デッカードがレプリカント?オリジナル版との解釈の違いとは?

そこで気になるのが、バージョンによって何が違うのかというところ。より一般向けに作られた『オリジナル劇場公開版』や『インターナショナル劇場公開版』では、物語をわかりやすくするために至る所でデッカードのモノローグが差し込まれている。また、試写で不評だったエンディングも、デッカードがレプリカントの女性レイチェルと車で逃避行へと出るというハッピーエンドを思わせるものになっている。

一方、『ディレクターズ・カット』や今回の『ファイナル・カット』では、当初の予定になかったモノローグやラストシーンはカットされており、全体的に難解でどこか物悲しい雰囲気を帯びているのだ。さらに、この『ディレクターズ・カット』からはデッカードがユニコーンの夢を見る一幕が挿入されているが、これが作品の解釈につながる大きな違いを生んでいる。

『オリジナル版』ではハッピーエンドを思わせる結末を迎える2人だが… | Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

その解釈とは「デッカードがレプリカントなのではないか」というもの。デッカードには同僚のガフというブレードランナーがいるのだが、彼が映画のラストでデッカードのアパートの前に折り紙で作ったユニコーンを置いていくシーンがある。この場面は、知る術もない他人の夢をどうしてガフが知ることができたのか?という疑問を生み、それはデッカードがレプリカントで、植え付けられた夢を見ているからという新たな考えが生まれたのだ。

解釈の違いを語る上でキーとなる男ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス) | Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

リドリー・スコット監督自らが「最も好きなバージョン」と太鼓判を押す『ファイナル・カット』。解釈の変化以外にもデジタル・リマスタリングなどを施すことで画質が鮮明になったなど、技術面でも数多く違いがあるので、IMAX上映という贅沢な体験ができるこの機会に、ぜひチェックしてほしい!

文/トライワークス

Blade Runner: The Final Cut [c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.