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【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第12回 嫌いになれない(その1)

2019年8月29日 17:00

【写真を見る】松本花奈監督の好評連載、第12回は「嫌いになれない」
【写真を見る】松本花奈監督の好評連載、第12回は「嫌いになれない」イラスト/あわい

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の若手監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第12回は、とある逮捕された知人にまつわるエピソード。

 

第12回 嫌いになれない

「竹内くん、逮捕されたんだって」

 

深夜、友人からかかってきた一本の電話に飛び起きた。竹内くん(仮名)、というのは私の大学の院生であり、非常に親しくしてもらっている先輩だ。心拍数を下げるべくベランダに出ると、思いの外ムワッとした外気に夏の訪れを感じる。

 

「え、何したん?」と聞くと「経営してたお店で未成年の女の子を働かせてたって。ダメだって分かってたらしいんだけどね」と返ってきた。立派な犯罪だ。「そんなことするような人に見えなかったのにな。ま、もう連絡取らないけど」と言うので「そうだね」と適当に相槌を打ち電話を切った。

 

部屋に戻り先輩の名前で検索すると確かに昨晩逮捕されたことがニュースになっている。記事でディテールを知れば知るほどキッツイ。「うわー…」と思わず声が出てしまうほど、だ。そのまま再びベッドに寝っ転がり竹内先輩とのLINEを開く。画面に”ブロック”の文字を出す。が、私はどうしてもそのボタンを押すことができなかった。

 

2カ月後。「これまでの人生で犯したいちばんの罪は?」とのテーマで私は中学時代のクラスメイトらと会話を弾ませていた。ムカつく相手の携帯を水没させた、親のクレジットカードの暗証番号を盗み聞き無断でAmazonでポチりまくった、初対面の相手ともう会いたくなくて嘘の名前と番号を伝えた…などなど。各々まあ色々あるが、警察沙汰にさえならなければ一度きりならどうにか取り返しはつくという結論に至った。

 

終電ギリギリで彼女らと別れたが、何だかモヤモヤしてすぐに電車に乗る気にならなかった。自宅までは6駅。私は歩き慣れないその道を進みながらまた竹内くんのことを考えていた。

 

竹内くんとの出会いはとある授業だった。彼はその授業でSA(先生の補佐をする役割)を担当しており、院生ではあったがキャンパスも学部生と同じ敷地内にあるので、よく食堂で一緒にご飯を食べたり同じ電車で帰ったりしていた。私が撮った映画の公開やイベントがあると時間を見つけては駆けつけてくれ、大学を休学しようか悩んでいる時には真摯に相談に乗ってくれたりもした。

 

当時お互いに彼氏彼女がいたしそこに恋愛感情はなかったが、本当に良い友人という間柄だったのだ。ただ、基本的に私が相手から話し出さない限り相手のことを根掘り葉掘り聞くのが苦手なため、よく聴くアーティストやルームシェア相手の名前などは知っていたが、そういえば竹内くんが院で何を学んでいるのか、収入源は何なのかとか、そういう最低限の基本情報は知らなかった。

(続く)

 

撮影/加藤孔士朗
撮影/加藤孔士朗

  

●松本花奈プロフィール

ドラマ『ランウェイ24』が、ABCテレビ、テレビ朝日で毎週土曜放送中
ドラマ『ランウェイ24』が、ABCテレビ、テレビ朝日で毎週土曜放送中

1998年生まれ。映像監督。主な監督作に映画『脱脱脱脱17』('16)、『キスカム!〜come on,kiss me again!』('19)など。ドラマ『ランウェイ24』が、ABCテレビ(関西)で毎週日曜、テレビ朝日(関東)で毎週土曜放送中。

文/松本花奈

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