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佐藤健が無精髭の次男坊に!白石和彌監督作『ひとよ』の現場を直撃

2019年8月19日 7:00

白石和彌監督作『ひとよ』の主演は佐藤健 | [c]2019「ひとよ」製作委員会

『凶悪』(13)や『孤狼の血』(18)など、荒ぶる男たちの熱い生き様を力強く活写してきた白石和彌監督が、初めて家族の絆をモチーフにして描くヒューマンドラマ『ひとよ』(11月8日公開)。クランクインが令和初日(5月1日)だったということで、白石監督にとっては新時代の幕開けにふさわしい意欲作となった。

主演は白石監督と初タッグとなる佐藤健で、無精髭を生やし、ある事件によって運命が変わってしまった家族の、やさぐれた次男役にトライした。長男役に鈴木亮平、妹役に松岡茉優、母親役に田中裕子と、実力派俳優陣が、一筋縄ではいかない家族の葛藤と再生のドラマを紡ぐ。その家族が集うラストシーンを含む撮影日におじゃまして、白石監督に話を聞いた。

ことの発端は15年前、母親のこはる(田中裕子)が子どもたちを守るために起こした殺人事件だった。その“ひとよ(一夜)”の事件によってバラバラになっていた家族が、15年ぶりに再会を果たす。その主な舞台となるのが、タクシー会社を営むこはるたちの自宅だ。

「佐藤健くんが、役で髭を生やしたのは初めてでした」

【写真を見る】佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優が兄妹役を演じる | [c]2019「ひとよ」製作委員会

ロケは茨城県神栖市に実際にある創業40年のタクシー会社で敢行された。美術部により、劇中の“稲丸タクシー”といった看板や庭の植え込みなどは作り込まれたが、年季の入った車庫や使い込まれた備品などは、実際に営業しているタクシー会社のものも併用され、白石監督作らしい昭和感が漂っていた。

そこは「15年前の事件から、時間が止まったような感覚がほしかった」という白石監督のねらいどおり、長年営業してきたタクシー会社ならではの佇まいに説得力が感じられる。「国道沿いだから音がうるさいし、ときどき暴走族が走ったりもするので撮影は大変ですが、ここは“顔のない田舎”というか、日本のどこにでもあるような田舎の風景がある。地方都市を走る国道の感じがすごくいいんです」。

佐藤が演じるのは、東京でうだつのあがらないフリーライターをしている稲村家の次男、雄二役で、俳優としてのきらめくオーラを封印。無精髭をたくわえた風貌がなんとも新鮮だ。「現代の地方都市にいそうな普通の人たちの話だから、そこに合わせようとしました。健くんは、役で髭を生やしたのは初めてだと言っていましたが、確かにいつもよりはキラキラしていないかもしれない。物語としても、普段やっている作品とは一風違うのかなと」。

町の電気屋に勤務し、兄妹で唯一の既婚者である長男の大樹役を務めた鈴木亮平も、吃音が原因でコミュニケーションに苦手意識を持つ男という役どころが実に新鮮だ。松岡は、スナックで働く妹の園子役で、髪の毛を明るい茶髪にしている。この3人と母、こはる役の田中が織りなすラストシーンが実に味わい深い。

田中裕子演じる母、こはると、佐藤健演じる次男、雄二が対峙するシーン | [c]2019「ひとよ」製作委員会

この豪華キャストについて白石監督は「皆さん、上手だし、映画のこともよくわかっていらっしゃる」と全幅の信頼を置く。「僕が気づかないことも『こういうふうに演じたいのですが、どうですか?』と提案してくれますし、おそらく僕の見えてないところでも、皆さんで話してくれているんじゃないかなと。そういうことの積み重ねが、良いアンサンブルになっています。僕は兄妹の話を撮るのは初めてなんですが、久々に会った時の兄妹って、こういう妙な空気感があるよなと。そういう部分を自然に演じてくれているので、助けられました。また、田中裕子さんが物語の背骨として、皆さんを導いてくれている感じがあり、それがそのまま映画の強さになっているのかなとも思います」。

「家族の物語を撮ることは、僕にとっても大きな挑戦でした」

無精髭の佐藤健と、地味なメガネをかけた鈴木亮平が新鮮 | [c]2019「ひとよ」製作委員会

中庭でのシーンの撮影では、かなり粘っていた白石監督。「最初は、狭い中庭で撮るのは難しいから、家の中での撮影になるかなとずっと悩んでいたんですが、昨日、田中裕子さんが、『中庭で撮りたい』と、僕の背中を押してくれたので、腹が決まりました。田中さんの想いはすごくわかったというか、ストーリー上、考えると絶対に中庭がいいと僕も思っていたので」。

本作は、罪を犯したこはるをわかりやすく断罪する悲劇ではなく、家族全員の苦悩と愛憎をじっくりと炙りだす含蓄のある人間ドラマとなっている。「こはるがやったことは、悪い部分もあるけど、大いなる愛という見方もできる。僕も父親なので、親として、子どものためにやれることを突き詰めていくと、人間の複雑さなどをがばっと包みこめるのが、“母”という存在なのかなと思ったりします」。

いいシーンに仕上がったのは、なによりも田中の存在感が大きかったと白石監督は言う。「今回、田中裕子さんの女優としての大きさが、こはるとしての輝きとして表れるという確信がありましたが、実際にそうなったのではないかと。田中さんにオファーをして、2年くらい待ったと思いますが、引き受けてくださって本当に良かったです」。

田中裕子を演出する白石和彌監督 | [c]2019「ひとよ」製作委員会

白石監督は、満を持して挑んだ“家族の物語”について「パーソナルなことですが、僕の実家は若干こじれているので、そこが本作とシンクロしています。僕自身、ようやく家族について客観的に見られるようになったので、今回取り組むことができました。そうじゃないと、なかなか手が出せなかった題材でしたから」と胸中を明かした。

「『凪待ち』も家族の話ですが、企画を立ち上げたのは『ひとよ』のほうがずっと早くて、足かけ4年くらいは経っています。家族の話はどこかでやらなきゃいけないと思っていましたが、本作はこじれた家族の物語なので、僕にも撮れるかなと。実は『凶悪』や『孤狼の血』など、ヤクザや人殺しなどをエンタテインメントとして撮っているほうが、僕的には楽なんです(笑)。そういう意味では、僕にとっても大きな挑戦でした」。

また、現場でも力強い手応えを感じたという白石監督。「これだけのオールスターキャストの中でやると、いい緊張感がありました。毎シーン、なにかを発見したり、感動したりしながら、撮れたことはすごく良かったので、僕自身も映画の仕上がりに期待しています」。

いつもながら、佐藤健の役柄をはじめ、すべてにおいてキャスティングの妙に感心させられる白石組。演技のアンサンブルも、俳優それぞれの個性が強いので見応えがありそう。一部のシーンを見ただけでも、全員が同じ方向を向いている現場の一体感を感じられた本作の、仕上がりが大いに楽しみだ。

取材・文/山崎 伸子

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