「セカイ系を作っているという意識は、昔からなかった」
「映画を通して、様々な対話が生まれることが楽しい」という新海監督は、「SNSなどですごくおもしろい広がり方をしてくれているのを、うれしく見ています」とエゴサーチもしているとか。「『ゼロ年代の美少女ゲームのようだ』とも言われていますね。僕も美少女ゲームに関わっていたことがありますから、彼らの分析もわかる気がするんです。選択の分岐があって、夏美ルート、陽菜ルート、これはトゥルーエンドだなんていろいろと言われていて(笑)。『すごくおもしろい』と共感しながら見ています」と微笑みつつ、「僕自身は、美少女ゲーム的な文脈を作ろうとか、セカイ系をどうアップデートしようかなど、そういったことは考えていませんでした」と話す。
新海監督から「セカイ系」という言葉が出たように、ネットを中心に「『天気の子』はセカイ系」という意見も多く見受けられる。新海監督は「『セカイ系を作っている』という意識は、昔から特になかったんです。いま一番気になっているテーマや、みんなが共有していると思うような気持ちを描いたことが、結果的にそう言われている」と告白。「2000年代初頭、セカイ系とは『社会をすっ飛ばして、個人と個人の間で、世界の運命を変えてしまうもの』と批判の意味も含めて、そんな言われた方をしていました。でもなぜ社会がないのかと考えると、時代として“社会の存在感が薄かった”ということがあったと思うんです。リーマンショックの前だし、3.11の前だし、なんとなく終わりなき日常が続いていくんだろうという空気があった。だからこそ、漫画にしても映画にしても、作り手が本能的に、社会の見え方が薄い作品をつくっていたんだと思います」。
一方『天気の子』については、「僕は、本作を“帆高と社会の対立”の映画だと思っていて。個人の願いと、最大多数の幸福のぶつかり合いの話だと思うので、そこに社会は存在している。帆高は大人の社会で働こうともするし、警察も出てくるわけです」と社会と関わっていく物語だと話す。「僕がつくるものがどうしてそうなったかというと、かつてのように、無条件に社会がそのまま存在し続けるとは思えなくなってきているから。そういった感覚があるからこそ、アニメーションの中にも社会を描くことが、どうしても必要になってきているのではないかと思っています」。
「いま自分が描きたいものは、これだと感じた」
「本作の最後の展開には、僕の作家性が出ているとも言われていますが、僕はただおもしろいものをつくりたいと思っているだけ。結果的ににじみでてしまったということだと思います。『自分らしくあろう』と思ったわけでもなく、いま自分の描きたいものはこれだと感じて、いまならばそれをエンタメとして形にできるという自信もあった」と穏やかで優しい笑顔のなかに、ものづくりへの情熱をみなぎらせる。インタビューから浮かび上がるのは、おもしろいと思うもの、やりたいことに、まっすぐにぶつかろうとする誠実な姿勢。ひたむきさは、いつの時代も人々を魅了する。憧れに手を伸ばし、必死で走りだす本作の帆高の姿と共に、新海監督の熱い想いにぜひ触れてほしい。
取材・文/成田 おり枝
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