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【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第6回 自己愛がないと生きていけない

2019年2月28日 10:00

【写真を見る】気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。6回目のテーマは「自己愛がないと生きていけない」 | イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第6回のテーマは「自己愛がないと生きていけない」です。松本監督は、自分のことが好きか嫌いか、と聞かれたら、いつも「普通」と答えてしまうそう。「『好き』と言えるようになりたいと切実に思うばかりだ」と吐露し、オムニバス映画『21世紀の女の子』(公開中)で監督した『愛はどこにも消えない』のテーマについて語ってくれました。

そもそも人は、自分より好きになれる他者を見つけられるのか

 基本的に忙しいアピールをしている人が苦手なのだが、それでも流石に「いや、これは忙しいでしょ」と誰かに話したくなるほど怒涛な3日間が私にもあった。2週間ドラマの撮影をした後、休む間もなく翌日は別の撮影、次の日は午前中から6時間ほど打ち合わせをし、夕方からラジオの収録、夜に編集室へ行き、合間に納品データの整理、そのまま徹夜でまた早朝から撮影へ行き、撮影終了と同時にその足でまた別件の打ち上げに合流、この時既に23時を回っており若干意識が朦朧としかけていたが、カラオケ大会(といってもただ歌うだけではなく、GReeeeNの「キセキ」を皆で回しながら歌っていき、PVのなかでおじいちゃんが出てきたらその時歌っていた人はグラス一杯のお酒を飲み干さねばならないというなかなかヘビーな内容)に参加、朝方どうにか帰宅した。翌日目が覚めると家を出る時間ギリギリだったため、バタバタと準備をしているなかで、猛烈な空腹に襲われ、仕方なく年末に行ったディズニーシーのお土産で買ったカンカンに入ったチョコレートをつまんでいると、そういえばもうすぐバレンタインデーじゃないか…と気が付いた。

 元々イベントごとは好きな性分で、特にバレンタインデーなんて昔はワクワクしてたまらなかったものだ。けれど私にはハッキリとその日が前ほど好きじゃなくなった瞬間が確実にあった。

 山戸結希企画&プロデュースの映画『21世紀の女の子』のなかで『愛はどこにも消えない』という作品を創った。8分間という尺で、テーマは“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーが揺らいだ瞬間”。この話を聞いた時にすぐ頭のなかに、そもそもジェンダーという思考が生まれるのは人が人を好きになるからだ、と思ったのと同時に、いや待てよ、そもそも人は、自分よりも好きになれる他者の存在を見つけることはできるのだろうか?ということを思った。昨年観た映画のなかで私が一番好きだった関根光才監督の映画『生きてるだけで、愛。』のなかに「あなたは私と離れられても、私は私と離れられない」というニュアンスの台詞があるのだが、それは本当にそのとおりで、だからこそ私たちは無理にでも少なからず自己愛を持っていないと生きていけないのだと思う。

 『愛はどこにも消えない』のなかで橋本愛さん演じる知香子はとある理由で彼氏と別れることになる。それをキッカケに知香子は、私は私が一番好きだということを認識し、彼氏のことを好きだと思っていたのも結局、彼氏は、私の好きな私を好きでいてくれているからだということに気付く、というストーリーにした。撮る前はそのことばかり考えていてバレンタインデーも好きな人に愛を伝える日ではあるもののその愛の深さはどれくらいなのだろう、結局は皆自分を一番愛しているのだろう、と思い何故だか少し切なくなってしまっていた。が、撮っているうちに段々とそうではない感情が芽生えてきた。というのも知香子という役のことが私は大好きで、もしかしたら私は知香子のことが自分よりも好きになってしまったかもしれないと思ったのだ。でもきっとそれは一時的な感情だということも分かっていて、だけれども私たちにはもしかすると刹那的であれども自分よりも他者を愛せる瞬間が芽生える時があるのかもしれないと思った。その時の感情をすぐに風化させないために、消えてなくさないために、映画や写真というものはあって、記録したいと思う感情を大切にしたいと思った。何だか久しぶりに、初めて映像を撮りたいと思った日のことを思い出した気がした。

今月の愛の一枚:ヒロトのラブレター

ヒロトが書いていたラブレターの手紙

『愛はどこにも消えない』のなかで知香子の彼氏、ヒロトが書いていたラブレターの手紙。

公開中のオムニバス映画『21世紀の女の子』で監督した『愛はどこにも消えない』が好評を博している松本監督 | 撮影/植村忠透

●松本花奈プロフィール

1998年生まれ。中学生の頃より映像制作を始める。慶應義塾大学在学中。主な映画監督作は『脱脱脱脱17』(16)、『過ぎて行け、延滞10代』(17)など。『21世紀の女の子』が公開中。HKT48『キスは待つしかないのでしょうか?』MVやドラマなどの演出も手掛ける。AbemaRADIOチャンネルにて、パーソナリティを務める『二十代映画欲求』(毎週土曜12時~)が放送中。監督を務めた『平成物語』第二弾が3月18日(木)〜22日(月)5夜連続でフジテレビにて放送。

文/松本花奈

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イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈| 撮影/植村忠透| [c]21世紀の女の子製作委員会| 撮影/塚本弦汰| 撮影 / 加藤孔士朗| [c]21世紀の女の子製作委員会(ABCライツビジネス、Vap)| 撮影/編集部| 撮影/植村忠透 ヘアメイク/藤尾明日香(南) スタイリスト/武久真理江(南) 衣装協力/KIDS LOVE GAITE(南)| 撮影/加藤孔士朗| 撮影/松本花奈| [c]2018 YU SUGIURA| 『楽しかったよね』1200円+税 著/橋爪駿輝 講談社刊