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第48回ニューヨーク映画祭、アカデミー賞候補作で大盛況のうちに幕を閉じる!

2010年10月14日 19:11

オープニングナイトにはデヴィッド・フィンチャー監督最新作『ソーシャル・ネットワーク』 | [c]GLOBE PHOTOS/AFLO

第48回ニューヨーク映画祭(NYFF)が9月24日から10月10日まで、ウォルター・リード・シアターとアリス・タリー・ホールで開催され、大盛況のうちに幕を閉じた。

同映画祭は、厳しい批評家たちが多いニューヨークで開催されるとあって、芸術性が高く、毎年アカデミー賞に絡む秀作が出そろうことで知られており、今年もカンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、トロント国際映画祭などで上映された14ヶ国から選りすぐられた28作品が出展された。

オープニングナイトには、アカデミー賞の呼び声も高いデヴィッド・フィンチャー監督『ソーシャル・ネットワーク』(2011年1月15日公開)が、センターピースはジュリー・テイモア監督『The Tempest』が、そしてクロージングナイトには『ミスティック・リバー』(03)、『チェンジリング』(08)など同映画祭の常連になっているクリント・イーストウッド監督『Hereafter』が上映された。スティーブン・スピルバーグがプロデューサーに名を連ねる『Hereafter』はアカデミー賞のノミネートが確実視されており、例年にも増して豪華ラインナップとなった。

その他の話題作としては、第63回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督『Uncle Boonmee Who Can Recall Past Lives』、ジュリエット・ビノッシュが第63回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞したアッバス・キアロスタミ監督『Certified Copy』、ジョン・レノンのドキュメンタリー映画『LennonNYC』ほか、マイク・リー監督『Another Year』、ジャン=リュック・ゴダール監督『Film Socialism』など。また、100年に1度と言われているアメリカの景気後退劇に関わったキーマンに鋭く迫った政治ドキュメンタリー映画でマット・デイモンがナレーションを務める『Inside Job』など、現実的なニューヨークで開催される映画祭にふさわしい作品も出展された。残念ながら今年のラインナップには日本映画の新作はなかったが、日本とニューヨークの150年にわたる友好関係を記念して、篠田正浩監督の過去の作品が特別プログラムで上映された。

10月1日の全米公開に先駆けて行われた『ソーシャル・ネットワーク』の記者会見には、フィンチャー監督、脚本家のアーロン・ソーキン、主演のジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイクが勢ぞろい。レッドカーペットにもメディアとファンが殺到し、同作を盛り上げた。辛口の批評家たちも含めメディアの約97%が同作を絶賛している5つ星作品とあって、初登場の興行成績No.1はもちろんのこと、2週連続で首位の座を確保。実際に映画を見た観客からの評価も高いため、賞レースに向けてますます盛り上がりをみせそうだ。

センターピースで上映された『The Tempest』は、ヘレン・ミレン、デヴィッド・ストラザーン、クリス・クーパー、アルフレッド・モリーナ、トム・コンティなどの名優かつ舞台経験者の豪華キャストも話題。同作の舞台のほか、トニー賞受賞作「ザ・ライオンキング」、11月から上演されるブロードウェイ・ミュージカル「Spider-Man Turn Off The Dark」を手がけているテイモア監督が記者会見に出席した。これまで男性が演じてきた主役の前ミラノ大公に女優を抜擢するという前例のない大胆な試みは、「ミレンとは相思相愛だったことですんなりと実現した」という。「舞台では照明で感情の細かい部分まで表現できるが、映画ではできない難しさを感じた一方で、映画では一刻一刻変わっていく風、水、気温といった自然と人物の微妙な心情をマッチングさせる演出にこだわった」そうで、舞台さながらの迫力も見どころだ。同作には、ゲイをカミングアウトしたアラン・カミングのほか、男性版レディー・ガガの異名を取るラッセル・ブランドもかなり個性的な役柄で登場しており、ヘレンらが出席したレッドカーペットにはラッセル目当てのファンやパパラッチが殺到。シェイクスピアの作品が若い世代にちょっとしたブームを巻き起こすかもしれない。

さらには、10月9日で70歳、今年で没後30周年を迎えるジョン・レノンがニューヨークを拠点に置いた1971年から銃弾に倒れるまでの9年間の活動とオノ・ヨーコとの生活を振り返った『LennonNYC』。レノンの熱狂的ファンでニューヨークに移り住んたというマイケル・エプスタイン監督は、「同作を撮影するにあたって、オノ・ヨーコに2度インタビューをした」そうで、ミュージシャンであり、反戦運動家としてカリスマ的な存在となったレノンの成功と苦悩が、かなりリアルに描かれた作品に仕上がっている。

また同映画祭の常連で、今年のカンヌ映画祭出展作『Another Year』のリー監督は、主演男優のジム・ブロードベント、そして監督作品の常連女優ルース・シーンとレスリー・マンヴェルを伴って登場した。「年を重ねてからでないと出ない良さがある。映画でもっと老人が描かれるべきだ」という新作は、長年連れ添った初老の夫婦と、彼らを取り巻く友人や家族のドラマ。ルースとレスリーは「いつまでも20歳のような容姿が必要なのはハリウッド女優だけ。イギリスの女優は年をとってしわができていいから楽なのよ」と周囲を笑わせた。

クロージングナイトの『Hereafter』は、イーストウッド監督の昨今の作品にしては珍しくディザスタームービーかと思わせるような派手なオープニングで、2004年に起きたスマトラ島沖地震や2005年に起きたロンドンの地下鉄の爆弾テロなどの出来事と、死に触れた3人の人生を交錯させながら描かれるスピリチュアルスリラー。アカデミー賞にノミネートされた『インビクタス 負けざる者たち』(09)に続いてイーストウッド監督とタッグを組んだマット・デイモンの演技力も光っており、どうやら今年も賞レースに参加することになりそうだ。

デイモンのほか、ブライス・ダラス・ハワード、セシル・ドゥ・フランス、脚本家ピーター・モーガンらと共にレッドカーペットを歩いたイーストウッド監督は、「100歳になっても監督を続けていきたい」と終始ご機嫌な様子で映画祭を締めくくった。【NY在住/JUNKO】

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