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冲方丁、衝撃作「十二人の死にたい子どもたち」を書いたワケ

2019年1月28日 6:30

冲方丁が作品に込めたメッセージとは?

「マルドゥック・スクランブル」や「天地明察」で知られる人気作家・冲方丁が初めて現代を舞台にした長編ミステリーに挑み、第156回直木賞候補にもなった小説「十二人の死にたい子どもたち」が、映画となってスクリーンに登場する(公開中)。完成作を観た冲方は「刺激、驚き、感動の連続だった」と最大の賛辞を送る。堤幸彦監督のもとに旬の若手キャストが集い、“死にたい”少年少女の心の揺れをエネルギッシュに表現した本作。冲方を驚かせ、感動させたものとはなんなのか?映画の感想と共に、衝撃的なタイトルをつけた理由までを語ってもらった。

本作は、安楽死を求めて廃病院に集まった12人の未成年たちが、“13人目”の死体に遭遇したことから、死体の謎と犯人をめぐって疑心暗鬼に陥っていく姿を描くサスペンス映画。完成作に「原作者であることを忘れて、楽しんで観ていました」と太鼓判を押す冲方だが、まず1つ目の称賛ポイントが“堤監督の仕事ぶり”だ。

安楽死を求めて廃病院に集まった12人の未成年たちが、“13人目”の死体に遭遇 | [c]2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会

冲方によると「出版社から『映画化するかも』という話は、以前から聞いていた」そうだが、そんなある日「脚本ができました」との報告が飛び込んできたという。「脚本が完璧な形で出来上がっていました。読んでみたら『言うことない!』という素晴らしい完成度で。『お願いします』とお話をして、数か月後には撮影が終わっていたんですよ(笑)。驚愕でした」と進行スピードにびっくり。「クオリティを上げる工夫をいくつも重ねながら、あんなにスピーディにものづくりをされる方は、どんな業種を見渡しても堤監督くらいしかいらっしゃらないのでは。なにもかも、驚くことばかりでした」。

個性的な12人の登場人物の背景を明かしながら、謎解きと共に怒涛のクライマックスへと突入する物語は、時系列の組み立ても複雑だ。「主人公が12回も変わっていくような物語。12種類の異なる曲を集めて、1曲にするといった作業が必要なんです。映画を観ると、複雑に切り替わる視点が一直線につながっていて、きちんと1曲の物語として流れていた。しかも一人一人にちゃんと見せ場があるんです。僕自身ものすごく刺激を受けましたし、感動しました。こちらの描きたいと思っていたものが、映像でも見事に合致していたんです」とその手腕に舌を巻く。

杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙、黒島結菜、橋本環奈をはじめとする旬の若手俳優たちの熱演にも、大いに感動させられたという。12人が次第に胸の内を爆発させていく様子は生々しく、スリリングなものとなっており、冲方は「いかに最初のプロットを超えていくか。それが小説を執筆するうえでの醍醐味です。僕が書いていた時は、登場人物同士がぶつかり合いはじめた時に化学反応が生まれていった。そのテンションが、映画も同じだった。12人の役者さんたちが一斉にぶつかり合うことによって、熱いテンションが生まれていた。ラストシーンでは、各キャラクターの表情に感動しました。心を奪われるというのは、こういうことかと」と彼らの熱演に惚れ惚れ。

謎解きと共に怒涛のクライマックスへと突入する | [c]2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会

とりわけ印象深かったのが「新田真剣佑さんと杉咲花さんの演技」だといい、「新田さんのお芝居にも感動しましたし、杉咲さんはアンリという役柄もあいまって、他の役者さんとは違う雰囲気をまとっていました。アンリという役は、ちょっと違う世界にいるような少女なんです。撮影の休憩中も、あえてほかの役者さんとはあまり話さないようにしていたようで、フィルムの外でもたくさんの苦労があったはずです」と感心しきり。「橋本環奈さん演じるリョウコがマスクをとって正体を明かすシーンも、おもしろかったですね!突然スローモーションになって、みんながあっけにとられた顔をしている(笑)。ユーモアといった点では、作品の中のハイライトと言いたいです」と、それぞれが笑いのエッセンスまでも演じきってくれたと話す。

『十二人の死にたい子どもたち』というタイトルも衝撃的だ。小説の着想のきっかけは、どんなものだったのだろう。冲方は「10年以上前に“自殺サイト”が登場した時に、それに対するカウンターを書かねばならないと思った。絶対に“自死を美徳として書かない”と決めていました」と告白。「命を絶つのは自分の自由ではあるんですが、本当にその決断に至る必然性があるのかと言いたかった。自分が常識だと思っていることって、また違うコミュニティに行けばまったく変化したりするもの。作中では、違ったコミュニティにいたはずの人たちがディベートすることによって、それぞれが固定概念にハマっている様子が浮き彫りになっていきます。“自分ももしかしたらそうかもしれない”と振り返ってみてほしい」。

原作者は自身の作品を「子どものよう」と表現することも多いが、映画『十二人の死にたい子どもたち』について冲方は「あっという間に映画が出来上がっていましたからね!ある日突然、すごく優秀な隠し子が出てきたみたい!」とニッコリ。「僕の書きたかったメッセージも、しっかりと込められている」と熱く語っていた。

冲方丁、映画『十二人の死にたい子どもたち』を大絶賛!「刺激、驚き、感動の連続だった」

取材・文/成田 おり枝

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