『アメリカン・グラフィティ』の脚本家、グロリア・カッツの死と日本文化 |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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映画ニュース 2018/12/28 11:30

『アメリカン・グラフィティ』の脚本家、グロリア・カッツの死と日本文化

現地時間11月25日、『アメリカン・グラフィティ』(73)などの脚本家、グロリア・カッツが亡くなった。76歳だった。夫のウィラード・ハイクも脚本家で、2人は共同執筆で『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)や『ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀』(86)などの脚本を手がけている。

カッツとハイクの脚本家夫婦は、クレジットこそないが『スター・ウォーズ』(77)の脚本修正を手がけていることでも有名だ。撮影中のルーカスが物語に不安を感じ、2人に急遽脚本のブラッシュアップを依頼した。その結果、レイア姫のキャラクターに若くて強いイメージを与え、キャリー・フィッシャーは新しいヒロイン像になった、とハイクはインタビューで答えている。南カリフォルニア大学映画芸術学部の学友だったジョージ・ルーカスとハイクは映画の趣味を共有し、ルーカスが入れあげていた日本の黒澤明や溝口健二を知った。

『スター・ウォーズ』でルーカスが誘った日本映画の世界は、カッツ&ハイク夫妻に新しい世界への扉を開いた。それから40年、夫妻は世界でも指折りの日本写真コレクターとして知られている。

初めて購入した作品は、細江英光の「鎌鼬」からの1点。舞踏家の土方巽をモデルにした集作で、旅先のハンガリーで出会ったときに、溝口健二の映画を思わせるモノクロの世界の虜になったという。日本の写真家の魅力について、カッツは「インドや東南アジアのように植民地化されなかったことが、日本のアートをユニークなものにしている。古いものから、現代の作家まで、2人が気に入ったものを集め続けているの」と語っている。

彼らの自宅近くにある現代美術館、ゲティセンターの写真委員会にも属し、2015年には石内都の写真展や、併設して行われた5人の若手日本人女性写真家のグループ展の開催に尽力し、日本から旅して来た6人の女性写真家たちを自宅に招きレセプションを開催した。夫妻が最も情熱を傾けた写真家は森山大道で、ハーブ・リッツが幼少時代を過ごした家を改築した自邸の写真を撮影してもらっている。

2017年には、ふたりが収集してきた70年代以前の日本の写真を集めた写真集「Views of Japan 日本の視点」をドイツのシュタイデル社から出版している。これぞコレクションの集大成といった写真集で、彼らがいかに日本の写真を愛し、世界へ発信するために尽力してきたのかをうかがい知ることができる。現在、アメリカ・ワシントンD.C.のフリーア&サックラー美術館では、彼らのコレクションが公開されている。

森山大道が撮影した自宅は、すでに売却されているが、あの家の大部分を占めていた膨大な写真コレクションは美術館に所蔵されている。取材で訪れた際に見せてもらった書斎は、カッツとハイクのデスクが向かい合っていて、いつも2人で会話をしながら脚本を練り上げるスタイルだと語ってくれた。まだ男性が多く活躍していたハリウッドで数少ない女性脚本家であり、日本文化の素晴らしき理解者、そしてアンバサダーであったグロリア・カッツさんのご冥福をお祈りいたします。

取材・文/平井伊都子

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