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【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第5回 グッバイ 2018!!

2018年12月28日 8:30

【写真を見る】気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。5回目では、監督の“涙の理由”が明かされます | イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第5回のテーマは「グッバイ 2018!!」です。12月31日23時59分59秒が今年も例外なくやってくる。松本監督は、この瞬間を「昨日や一昨日やそのずっと前と同じように地球は回っているのに、あの年越しの瞬間だけに感じるどうしようもない高揚感が私は大好きだ」と表現し、昨年末の出来事に想いを馳せます。

少女漫画的展開!と思って、電車に飛び乗ったら…

 いくら暖冬だといえども冬は冬で、すっかり寒くなってきた。年末年始といえば何を一番に思い浮かべるだろうか。紅白、蕎麦、お年玉、初夢…色々あるが私はズバリ、家の大掃除だ。11月に入った頃から「掃除機かけてお風呂の詰まりをとって…ああ、でも明日も朝早いし早く寝たいなあ…だったら今年の汚れは年末年始の暇な時にまとめて片付けるので良くね!?…よし、それだ、寝よう…」という思考回路に陥ってしまい、そうなるともう翌日からは脱いだ靴下はベッドの下に転がったまま、衝動的に作ったうどんの鍋と皿は洗わず放置…などといよいよやばくなってきた。そもそも家に帰ると寝るだけなのだが、思い返してみると昔から家にいることがあんまり好きではなかったのだと思う。実家に居た時は両親との関係がそんなに良くなかったこともあり、居心地が悪いと感じていた。極力、必要最低限以外は家にいないようにしていた気がする。前回「怒られたくない話」を書いたのだが、今回は「怒られたい話」を書きたいと思う。怒られたい話、というと何ともドMのようだが、要するに怒られはしなかったが、むしろ怒ってくださいと思うくらい反省している話、ということだ。

 昨年末のことである。実家の関西に帰省していたのだが、この日も何だか家に居場所がない気がしてブラブラしていたら真反対の電車に乗ってしまった。途中で気が付き降りたもののかなり遠くまで来てしまい、この時既に23時45分。携帯の電源も切れ、することもなく虚しく駅の階段に座っていると、遠くから「姉ちゃん! 何でそんな暗いねん! 俺ら今から清水寺行くで、一緒おいで! 早よ乗り!」という声がした。こういう展開の少女漫画、読んだことあるぞと思いながら気付くと私の足は電車の発車音と同時に車内に踏み込んでいた。

 それから約1時間後。私は京都の地で人混みに揉まれていた。声をかけてくれた人たちは、失礼ではあるが少女漫画に出てくるイケメン高校生とは程遠いよく笑う40代くらいの大阪のおじちゃんたちであった。3人いて、その3人がどういう関係なのか、普段何をしている人たちなのかは特に聞かなかった。けれど、いくつになっても家に居場所がないことに落ち込んでいた私に、理由は聞かずに蕎麦やわらび餅を買ってくれたり…とにかくものすごく良い人たちだったのだ。結局清水寺はライトアップされている時間が限られていたみたいで、私たちが到着した時には既に真っ暗だったが、それでも「フラッシュたけばどうにかなるんちゃうん」とはしゃぐおじちゃんたちを見て私は思わず笑った。別れ際、初めに声をかけてくれたおじちゃんが自分のLINEのIDと、東京にいるという妹のIDを紙に書いて教えてくれた。「嫌なことあった時とか、俺らは関西におるからすぐに助けに行かれへんけど、妹は東京におるから何かあったら言い。俺が信頼してる妹やから、信頼しい、根拠ないけど、ほんまやから」と言って手を振り去っていった。その優しさに涙ぐんでいる自分がいた。

 そして翌日。昼過ぎに実家で目を覚ますと、昨日貰ったLINEのIDが書かれた紙をなくしてしまっていることに気付いた。帰り道で落としたのだろう。何故貰ってすぐにしまわなかったのか、こんなに反省したことはない。

 お礼だけでもせめて、改めて、ではなくあの時ちゃんと言えば良かった。部屋すら整頓できないからこうなるのだ。あの時の自分が、誰でも良い、誰かにドカンと怒られろ、と思った。この年越しのやるせなさ、高揚感はきっと来年も再来年も何かあるのだろうなと感じた。皆様どうか良いお年をお過ごしください。

今月のハッピーな一枚:誕生日プレゼント

各人それぞれの個性が反映されたプレゼントたち | 撮影/松本花奈

先日仲の良い数人で集まり友人の誕生日パーティをしたのですが、プレゼントに何を渡すかって…かなり性格出ますね。私は果物をあげました。

初パーソナリティを務めている『二十代映画欲求』には、松居大悟など気鋭のクリエイターが顔を揃える | 撮影/植村忠透

●松本花奈プロフィール

1998年生まれ。中学生の頃より映像制作を始める。慶應義塾大学在学中。主な映画監督作は『脱脱脱脱17』(16)、『過ぎて行け、延滞10代』(17)など。山戸結希企画&プロデュースのオムニバス映画『21世紀の女の子』(19年2月8日公開)の中の一編を手掛ける。AbemaRADIOチャンネルでパーソナリティを務める『二十代映画欲求』(毎週土曜12時~)が放送中。CanCam.jpでは、「スマホで女の子をかわいく撮るアイディア」をテーマにした動画が公開中となっている。

文/松本花奈



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撮影/松本花奈| イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈| 撮影/植村忠透| 撮影/編集部| 撮影/植村忠透 ヘアメイク/藤尾明日香(南) スタイリスト/武久真理江(南) 衣装協力/KIDS LOVE GAITE(南)| 撮影/加藤孔士朗| 撮影/黒羽政士| [c]2018 YU SUGIURA| 『楽しかったよね』1200円+税 著/橋爪駿輝 講談社刊