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『カメ止め』や濱口竜介、キアロスタミまで!クラウドファンディングが実現する映画の“多様性”

2018年11月11日 21:00

大高氏は、邦画が大規模なものと、低予算なものに二極化していることに危惧を述べた
大高氏は、邦画が大規模なものと、低予算なものに二極化していることに危惧を述べた

――『あの日々の話』のような、低予算で製作できる題材はクラウドファンディングでお金を集めやすいと思いますが、ゆくゆくはどのような規模感の作品を作っていきたいのでしょうか。

「最終的には、5~6000万円前後の予算の作品を作っていきたいと思っています。これはMGSが始まったからというよりも、MOTION GALLERYとしての僕ら本来のゴールで、いわゆる中規模のウェルメイドな作品、人の心の揺れ動きをつぶさに描きながら、かつ、低予算ゆえに照明、美術などが疎かになりがちな小~中規模予算の映画においても、クラウドファンディングを用いた支援によって画面が安っぽくないような映画を生みだせる環境を日本に作りたいと考えています。いま、日本の映画業界全体で問題だと感じているのは、メジャー配給会社が製作するような大規模な予算の映画と、ミニシアター1館でレイトショー公開しているような、低予算で作り手にとっての“半径数メートルの世界”を描くような映画の二極化が進んでいることです。

思うに、いわゆる映画史に名を刻んできた作品には、中規模の作品が多いのではないでしょうか。例えばアメリカン・ニューシネマやヌーヴェルヴァーグ、ミニシアターブーム時のリュック・ベッソン、レオス・カラックスの作品などは、みな中規模の予算で製作された作品です。昨今で言えば『スリー・ビルボード』『シェイプ・オブ・ウォーター』などを製作するFOXサーチライト・ピクチャーズの作品がそうです。低予算すぎないからこそ広い視野で映画を作れるし、それでいて作家性は残せる。ただし、これは一番難しいところでもあります。ちょうど、人間が立っている姿勢も座っている姿勢も楽だけど中腰は一番難しいようなものでしょう。

日本でも今年、中規模予算で『寝ても覚めても』という傑作が出てきましたが、あのような作品がどんどん増えてほしいなと思っています。小さな製作会社や製作者からしたら、この規模の作品を作るのは一番リスクが大きい。事実、失敗して潰れている製作会社もいっぱいあります。しかし、この層を支えるのがクラウドファンディング、ということになれば、MGSの存在意義がそこにあると思います」。

2016年12月にスタートした、誰もが自主上映できるサービス「popcorn」
2016年12月にスタートした、誰もが自主上映できるサービス「popcorn」

――今後、MGSはどのような方向性を目指していきたいと考えていますか。

「大きく2つの方向性を考えています。1つは、コミュニティ主導型の映画。先述した『建築を、あきらめる(仮)』の様な映画で、まだ一般的ではないものの、近い未来の日本のスタンダードになりうる新しい現象や人物をテーマに、その価値観と化学反応を起こすような監督をかけあわせた企画を、その価値を共有するコミュニティで製作を応援し『Popcorn』というだれでも上映者になれてどこでも映画館にできるプラットフォームをつかってみんなで映画を広げていくような形。

2つめは、先ほど申し上げたような中規模の映画。コミュニティ主導型映画が新しい価値観や人物に迫りそして広げていく映画なのであれば、こちらは新しい表現者の才能を高め広めていく映画。作家性とある種の商業性の両立にチャレンジする映画であり、劇場公開や映画祭を通じて世界の多くのひとにその才能を広めていく。この両輪で様々な作品を生み出していければ良いな、と思います」。

――ほかにも目標があればお聞かせ願いたいです。

「一時期のぴあフィルムフェスティバルや大阪芸大、東京芸大が担っていたような、まだ世に広く出ていない若手の監督にスポットライトをあて、作品をきちんと劇場公開までこぎつけさせるような役割を担っていきたいです」。

取材・文/近藤 多聞

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