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『女王陛下のお気に入り』はアカデミー賞を支配するのか!?歴史に残る名作との共通点を探る

2018年11月02日 13:00

『女王陛下のお気に入り』が東京国際映画祭で上映! | [c]2018 Twentieth Century Fox

2016年は『ラ・ラ・ランド』と『メッセージ』と『ハクソー・リッジ』が、2017年は『シェイプ・オブ・ウォーター』と『スリー・ビルボード』が世界初上映され、アカデミー賞レースの幕開けを告げる重要な前哨戦としての位置付けがより一層強くなった印象を受けるヴェネチア国際映画祭。

今年9月に行われた第75回では、金獅子賞を受賞したアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』を筆頭に、デイミアン・チャゼルの『ファースト・マン』(2月8日公開)、コンペ外として上映された『アリー/スター誕生』(12月21日公開)と、すでに第91回アカデミー賞の有力コンテンダーと目されている作品の世界初上映が相次いで行われた。その中で、第2位である審査員大賞と、ヴォルピ杯こと女優賞の2冠に輝くほどの大絶賛を集めたのがヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』だ。

本作の舞台はフランスとの戦争下にあるイングランド。虚弱な女王アンと、彼女の幼なじみで絶大な権力をにぎるレディ・サラの前に、元貴族で今ではすっかり没落してしまったサラの従妹アビゲイルが現れる。貴族への返り咲きを狙う彼女は巧みにアンに取り入り、彼女から気に入られるようになる。やがて召使いから着実に地位を高めていくアビゲイルの策略によって、サラとアンの関係にほころびが生じ始める。

現在開催中の第31回東京国際映画祭に特別招待作品として出品された本作は、11月23日(金)の全米公開に先駆けて1日、日本初お披露目を迎えた。上映終了後には映画評論家の立田敦子氏と、FOXサーチライト作品を配給する20世紀フォックス映画の平山義成氏がトークショーを行い、本作が高評価を獲得している理由について考察が重ねられた。

「この映画は普通のコスチューム劇とはまったく違う作り方をしている」と立田氏が分析するように、本作は従来のコスチューム劇・歴史劇とは一線を画し、歴史的な事象よりも3人の主要登場人物の関係性に焦点が当てられている。“腹黒い”アビゲイルに、“高飛車”なサラ、そして“わがまま”なアン。それぞれ対照的な3人の心理を鋭く描写することで、18世紀という舞台設定に留まることなく、現代にも充分置き換えることができる普遍的なストーリーになっているといえよう。ランティモスという作家が持つ、ごくわずかな所作の積み重ねによって人間の本性を露呈させる技がここぞとばかりに発揮され、ドラマ性を高めているのだ。

劇中の3人の関係性を観ていると、自ずとアカデミー賞史に残る大記録(13部門15ノミネート)を打ち立てたジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の『イヴの総て』(50)を思い出すことだろう。女優を目指して田舎から出てきたイヴが大女優マーゴの付き人となり、あらゆる人々を利用しながらスターダムへと駆け上がっていく。同作でアン・バクスターが演じたイヴは本作におけるアビゲイルであり、ベティ・デイヴィスが演じたマーゴはサラに当たるだろう。そうなると、イヴとマーゴが揃って機嫌を取ろうとしたジョージ・サンダース演じる批評家のアディソンがアン女王ということになるだろうか。

奇しくも『イヴの総て』と本作にあるもうひとつの共通点を挙げるならば、ストーリーライン上の主人公格が、必ずしも作品全体として見たときの“主演”ではないという点だろう。本作はアビゲイルを主軸に置きながらも、クレジット上ではアン女王であるオリヴィア・コールマンが頂点に君臨する。ヴェネチアでもオリヴィアが単独で女優賞を受賞し、先日ノミネートが発表された英国インディペンデント映画賞でも主演女優賞にはオリヴィアのみ。エマ・ストーンとレイチェル・ワイズは助演女優賞にノミネートされた。おそらく本番のアカデミー賞でもこのような部門分けになることだろう(もっとも、その理由は作品を観ると容易にわかるはずだ)。

とはいえ、その『イヴの総て』やエマ・ストーンが主人公を演じた『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』(11)のように複数の女優たちが主役級の働きをする作品というのは、アカデミー賞会員たちによる投票段階で期せずして票割れを起こしかねないという不安点もある。しかしながらそれを気にするまでもなく、オリヴィアは初めての、そしてエマとレイチェルにとっては2度目の受賞をかけたノミネートをすでに手中に収めているといってもいい。それだけの価値のある、実に見応えのある演技合戦が繰り広げられていた。

そしてもちろん、本作は作品賞のノミネートも射程圏内に収めているとみて間違いない。FOXサーチライト作品は第90回を席巻しているだけに、今年もその注目度は高まる一方だ。本作に加えて、メリッサ・マッカーシーの演技が話題の『Can You Ever Forgive Me?』や、ロバート・レッドフォードの引退作として話題の『The Old Man&the Gun』なども虎視眈々と賞レース入りを狙う作品が目白押し。今年もFOXサーチライト作品がアカデミー賞戦線を盛り上げてくれることだろう。

『女王陛下のお気に入り』は2019年2月、全国公開される。

取材・文/久保田 和馬


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