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【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第3回《2018年9月30日 / 台風24号》

2018年11月5日 15:30

【写真を見る】気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。参加作品『21世紀の女の子』はTIFFでも上映 | イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第3回のテーマは「《2018年9月30日 / 台風24号》」です。生きていると日々色々な感情にぶち当たるなか、今月は「後悔」したことにフィーチャー。数か月後か、数年後か、数十年後かに、ふと思い出して、そんなこともあったなあと懐かしめる日が来ることを願って、松本監督が台風の夜に起きたエピソードを綴ってくれました。

20年間生きてきた中で一番ヤバい台風だった

 2018年9月30日、台風24号の影響を受け首都圏のJR在来線が午後8時以降全て運休になるとの発表をした。それに伴い、多くの会社は早めに業務を切り上げての帰宅命令を出しただろう。

 が、そんなことはお構いなしにこの日の私は4日後に控えた撮影の準備をしていた。地方へ行き、その場所の魅力を伝えるためのショート・フィルムを撮るという企画だ。現地の方のお話をドキュメンタリー的に伺いつつ、フィクションのパートも撮るという内容を考えていたのだが、いわゆる役者さんではない方にご出演いただく“ドキュメンタリー”パートと、あくまでドラマ仕立ての“フィクション”パートにおいてどのような撮り方をしたら上手く融合してスッと入り込めるのだろうか、と悩んでいた。その日は夜カメラマンの方と打ち合わせをする予定を入れていた。

 夕方頃に「台風やばい。JR止まるっぽい。どうする?」というLINEが来たが、明日の夜は既に別の打ち合わせが入っていて、明後日になると撮影2日前のため流石にギリギリすぎる。ということはやはり台風が来ようと電車が止まろうと予定通り今晩打ち合わせをするしかない。

「まあ何だかんだ言って22時くらいに運休解除されるんじゃないですかね」という全く根拠のない文章を送り、20時、渋谷のハチ公前で待ち合わせをした私たちだったが、この時点でなかなか危うい天気である。人もまばらで店もほとんど開いていない。想定していた打ち合わせ場所である駅前のスターバックスが早々と閉まっていたので、地下のイタリアン・レストランへと向かう。地下は、地上での騒動なんぞまるで我関せず、といった様子で静かで、打ち合わせは3時間ほどかけてじっくりと行えた。ドキュメンタリー・パートとドラマ・パートを融合させようと思っていたが、無理にそうはせず画角を16:9とシネスコで変化をつけたりしてあえて切り離す撮り方をすることで色々と見えてきたことがあった。とにかく打ち合わせ自体は有意義な時間として終わったのだった。

 その後、私もよく知っているカメラマンの方の友人と合流し(日中別件で一緒に撮影をしていたらしく同じ店で飲んでいた)23時頃、店を出ると大惨事が起きていた。さしていた傘はひっくり返り、一瞬身体さえも浮きそうになる。

 20年間生きてきた中で一番ヤバい台風だった。

 普段はあんなに賑わっている渋谷がその時はほぼ誰もいなかった。タクシーがまばらに通っていたが車も操縦できるのか不安になりそうな様子だ。スクランブル交差点を通ると、チラホラとTVの報道陣の方がいて撮られそうになる。あれだけ電車が止まると告知していたのに何故帰宅しなかったのか…と思われそうで何だか悔しくなり絶対映らないぞ!という気持ちで足早にその場を離れる。

 皆と別れ家に帰ろうとしたのだが、一緒にいた中のひとりの方と揉め(これについてはまた長くなるので次回書きます)雨に打たれながらハチ公前で30分前後たむろしていた。結局、自分の家は渋谷から40分ほどかかるためタクシーで三軒茶屋にある友人の家へ向かった。友人は仕事で北海道に行っていて今いないのだが、都内で終電を逃した時などに寝泊まりしていいよと鍵を預けてくれているのだ。何という優しさだろうか…。

 翌朝、7時前に起きて大学へ行く準備をするが、案の定雨に打たれたせいで風邪を引いていた。何故か涙が出てきた。マジでさっさと帰ればよかったと“後悔”したが、昨日雨に打たれたことには意味があったのだと思うことにする。

 何年後かに良い思い出になると良いなあと思ったここ最近の出来事であった。

今月のピースな一枚:台風と傘

暴風雨の夜。傘が壊れ、雨に打たれながらもピースサイン

打ち合わせ終わりの一枚。傘がぶっ壊れた直後のピースです。

ドラマ『中学聖日記』のスピンオフ『聖ちゃんと会う前の僕たち』などの短編も話題の松本監督 | 撮影/植村忠透

●松本花奈 プロフィール

1998年生まれ。中学生の頃より映像制作を始める。慶應義塾大学在学中。主な映画監督作は『脱脱脱脱17』(16)、『過ぎて行け、延滞10代』(17)など。橋爪駿輝原作、本田翼主演の『ファン』、ドラマ『中学聖日記』のスピンオフ『聖ちゃんと会う前の僕たち』などの短編がYouTubeで公開中。山戸結希企画&プロデュース『21世紀の女の子』が'19年新春公開。

文/松本花奈

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イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈| 撮影/植村忠透| [c]21世紀の女の子製作委員会| 撮影/松本花奈| 『楽しかったよね』1200円+税 著/橋爪駿輝 講談社刊