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戸田恵子、アンパンマン「もうやれない」と苦悩した過去。辿り着いた表現者としての覚悟

2018年7月01日 10:30

「人が喜ぶことをする」戸田恵子が表現者としての覚悟を語る! | 撮影/黒羽政士

日本中に愛と勇気を届けてきた「それいけ!アンパンマン」が放映開始30周年を迎えた。劇場版も『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』(6月30日公開)で30作目。アンパンマンの声を務めてきた戸田恵子は「楽しいこともあれば、悲しいこともたくさんあった」と30年の道のりを振り返る。13年には原作者のやなせたかしが逝去。17年にはドキンちゃん役の声優・鶴ひろみが亡くなり、悲しみにくれる日々も。そんななか、一度は「もう、アンパンマンをやれない」と思ったこともあると告白する。いま、どんな思いでアンパンマンに向き合っているのか。戸田を支える“表現者としての覚悟”に迫る。

30周年を迎えた感慨を語る | 撮影/黒羽政士

劇場版の1作目が公開となったのは、1989年のこと。30作目となる本作は、アンパンマン誕生のきっかけとなった“いのちの星”が鍵となる物語。“なんのために生まれて なにをして生きるのか”というフレーズでおなじみの「アンパンマンのマーチ」に込められたメッセージに、改めてスポットを当てた作品となる。

戸田は「『わからない』が口癖のクルンちゃんという女の子を通して、“なんのために生まれてきたんだろう”というメッセージを伝える作品」と解説。「私もボランティアで被災地を巡るなどしていますが、子どもたちが“なんのために生まれて”と歌っている姿は本当に感動的。すごい歌ですよね。アンパンマンの歌やストーリーには、子どもたちに届くものがきっとある」と力強く語る。

ある日突然、アンパンマンたちの世界に現れたクルン。声を杏が演じている | [c]やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV [c]やなせたかし/アンパンマン製作委員会2018

30周年にふさわしい映画が完成したが、戸田は「私がやっているお仕事の中でも、一番長く続いているもの」とニッコリ。「毎週1回は収録に行って、30年もチーム一丸となってやってきた。チームみんなが、この作品に選んでいただいたことを“宝物”のように思っているんです。それくらい、みんな自分の演じるキャラクターを愛しています」とメンバーそれぞれが誇りを持って臨んでいるという。

「アンパンマン」に関わるスタッフ・キャストたちは「家族のよう」だという戸田。「楽しいことがあれば分かち合って、つらいことがあればみんなで泣いてきた」というが、やなせが亡くなった時には「アンパンマンをもうやれない」と口に出してしまったことがあると激白する。

「先生がお亡くなりになって、どれだけ私は先生に守られていたのかと思った。先生という、大きな傘の中に入っていたんです。支えがなくなってしまったと思いました。先生と共に歩んできたとも思っていたので同時に『もうやれない』とも思ってしまったんです」。そんな時、子どもたちの姿を目にしてハッとしたという。「13年の10月に先生が亡くなって、14年のお正月に仙台のアンパンマンこどもミュージアムに行って。子どもたちが『アンパンマン!』と応援している姿を見て、彼らはなにがあってもアンパンマンが大好きなんだと直に感じた時に、頭をガツンとやられた気がしました。こっちが泣いてばかりいたって仕方ない。“使命”として、これからもやらなければいけないんだと思った。先生が大きな傘だとしたら、私たちはみんなで小さな傘を開いて、それを重ねて大きな傘にしていきたい」と、いまでは使命感を抱いている。

女優、声優、歌手として輝き続ける彼女にも、知られざる苦悩があった | 撮影/黒羽政士

また、17年にはドキンちゃん役の鶴ひろみが急逝。「先週いた人が今週はいない。その週の収録は、みんな泣き崩れていました」ともう一つの別れを明かす。

「いまでも収録現場の彼女が座っていた席には、ドキンちゃんのぬいぐるみを置いています。また、小さなドキンちゃんのぬいぐるみを現場のみんなにプレゼントしたので、みんなの家にもドキンちゃんがいてくれています。あとを引き継いでくれた冨永みーなちゃんも頑張ってくれて、鶴さんも30周年を喜んでくれていると思いますし、いまでも近いところにいてくれているなと感じているんです。みんなで『これからもずっと、鶴さんのことを語っていこう』と言っていて。全然立ち直れてはいませんが、いまでも一緒にやっている気分なんですよ」。

「楽しいこともあれば、悲しいこともたくさんあった」と30年の道のりを振り返った | 撮影/黒羽政士

落ち込んだり、迷ったりした時に思い出すのは「やなせ先生の言葉」だという。「やなせ先生こそ、アンパンマンのような方でした。いつも『人が喜ぶことをしなさい』『やれるのにやらないのはダメだ』とおっしゃっていて。東日本大震災のあとは、特に密に交流をさせていただいたんですが『僕はもうおじいさんだから力仕事はできないけれど、できることをやるんだ』とおっしゃっていた。それもちょっとではなく、やれることがあるなら惜しみなくやろうとされていた。迷った時は先生を思い出して、『こっちの方向に行けばいいんだ』と思うようにしています」。

「アンパンマンはジャムおじさんを助けた時に心が温かくなった。いいことをすると自分もうれしいし、『僕はそのために生まれてきた』と感じている」とアンパンマンの想いを代弁する戸田だが、やなせがくれた「人が喜ぶことをする」という想いこそ、いまの彼女のテーマになっている。

アンパンマンとの出会いは宝物だという | 撮影/黒羽政士

「先生や鶴さん、親が亡くなった時も、ずっと仕事をしなければいけなかった。でもそれってこういう仕事をしている人、みんなが通る道なんですよね」としみじみ語りつつ、歌手として歌う「強がり」の歌詞に触れる。「以前、中村中さんに『強がり』という等身大の歌を作ってもらったんですが、その歌詞にあるように誰もが強がっていないと生きていけないですから」と苦笑い。

「私は誰かに喜んでもらえる仕事をしているんだなと改めて思うんです。立ち止まってしまったり、もういやだと思う時があったとしても、それ以上に『いい作品を届けたい、喜んでもらいたい』という想いが勝る。やっぱり“喜び”って、ものすごいパワーがあるんですよね」。「自分はそんなに強くない」と言いながらも、周囲の応援を糧に戦うアンパンマン。戸田の歩む道のりと、アンパンマンの姿が重なった。

『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』は公開中だ | [c]やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV [c]やなせたかし/アンパンマン製作委員会2018

取材・文/成田 おり枝

スタイリスト / 江島モモ

トップス・パンツ / ユキ△トリヰ
ピアス / イマック
サンダル / スタイリスト私物

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