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不倫は芸術なのか?ホン・サンスと“ミューズ”キム・ミニの軌跡をたどる4つの物語

2018年6月24日 11:30

今年のカンヌ国際映画祭で絶賛を集めた『バーニング(英題)』のイ・チャンドンや、『嘆きのピエタ』(12)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したキム・ギドク、またハリウッド進出を果たしたキム・ジウン、パク・チャヌク、ポン・ジュノと、アジア映画の中でも実力の高い監督がひしめく韓国映画界。なかでも特に国際色豊かな作品を手掛ける監督はホン・サンスであろう。

キム・ミニがベルリン国際映画祭で韓国人女優初の女優賞を獲得した『夜の浜辺でひとり』 | [c]2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

日本で韓国映画の一大ブームが巻き起こるよりも前にデビュー作『豚が井戸に落ちた日』(96)が公開されている彼の作品は、どういうわけか一挙にまとめて紹介されることが多い。2012年の秋に『よく知りもしないくせに』(09)から『次の朝は他人』(11)までの4作品が同日に封切られ、その後も『ソニはご機嫌ななめ』(13)と『へウォンの恋愛日記』(13)が同日公開。そして現在、近作4本が順を追って劇場公開されている。

ひとりの作家の作品群が、そうして数本ずついくつかのシリーズ(といってもストーリー的なつながりではなく、作品の性質的な、ないしは精神的なつながりだ)で区切られているというのは、ヌーヴェルヴァーグの巨匠エリック・ロメールを彷彿とさせるものがある。前述した2012年の4作品は「<恋愛についての4つの考察>」と銘打たれていたわけだが、今回の4作品は一言で言えば「キム・ミニ4部作」ということだろう。

“キム・ミニ4部作”の最終作である『それから』はカンヌ国際映画祭コンペティションに出品された | [c]2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

キム・ミニという女優は、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』(16)で薄幸ながらも鮮烈な印象を残し注目を集めた。映画デビュー作となった日韓合作の『純愛譜』(00)以降『火車 HELPLESS』(12)で日の目を見るまで不遇のキャリアを辿ってきた彼女だが、2015年にサンスとめぐり合ったことでキャリアが大きく変化し、いまや彼にとっての “ミューズ”といえる存在だ。

ある程度韓国映画や韓国の芸能ゴシップに明るい人であれば、この2人の関係性の異質さを知っているに違いない。20歳以上年の離れた映画監督と女優が恋仲になるというのは決して珍しい話ではないが、サンスは既婚者でミニとは不倫関係にあり、しかもそれを世界中に堂々と公言しているというのだから驚きだ。いずれにしても、不倫相手をヒロインにして、不倫を題材にした映画を手がけるという、あまりにも破天荒な芸術家ぶりを見せられてしまったら、何もいうことはあるまい。

【写真を見る】4つの異なる物語で、ホン・サンスの美学が発揮される | [c]2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

現在すでに公開されている『それから』は出版社社長の色男を軸に、ミニ演じる新入社員の女性と社長の元愛人、そして社長の妻が絡み合う。入社早々、妻から愛人であると疑われたヒロインは、彼に生きる意味を問う。不倫の果てにある男性の“人生観”を見つめる作品なのだ。夏目漱石の「それから」の影響をにおわせながら、ひたすら男女1対1の応酬で構成されていくウィットに富んだ会話劇からは、やはりサンスという作家の放つ空気がほかの韓国映画とは180度異なるものだと実感できる。

会話劇を司るものは会話ではなく、他愛もないやり取りであったり感情のぶつかり合いであったり、そういった“会話”の奥にある機微をいかにして表現するかにかかっているものだ。それと同時に演者の表情や微かな手の動きも重要となるのだが、多くの会話ショットでサンスは向かい合っている被写体を横からとらえ、機械的なズームを多用する。案の定、真横を向いた被写体の表情というのは完璧に確認することはできず、それでいて機械的ズームという映画らしくない画面の動きには、どことなく観客として映画を観ているのではなく、劇中の登場人物たちの生活を覗き見しているような錯覚を与えられる。そう考えると、なんともスキャンダラスな画面で心拍数が上がる。

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