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ウェス・アンダーソンが“黒澤映画”を熱弁。ストップモーション・アニメで得た新たな強みとは?

2018年5月25日 19:30

第68回ベルリン国際映画祭でアニメーション作品としては異例の銀熊賞(監督賞)を受賞したストップモーション・アニメーション『犬ヶ島』(公開中)。全編日本を舞台に繰り広げられる本作には、ウェス・アンダーソン監督の日本への想いが随所に散りばめられている。このたび来日を果たしたアンダーソン監督に、日本映画への熱い想いを訊いた。

『犬ヶ島』のウェス・アンダーソン監督を直撃!

『ライフ・アクアティック』(04)のプロモーション以来、じつに13年ぶりの来日となったアンダーソン監督は「『犬ヶ島』を製作し始めてから生まれた娘ももう2歳半になる。彼女も一緒に来たんだけど、生まれてからずっとこの映画と育ってきた。だから日本に来られることに大興奮していて、飛行機が着陸する前からずっと大はしゃぎだったんだ。おかげで僕もすごく気持ちが昂ぶってしまったよ」と満面の笑みを浮かべる。

『ライフ・アクアティック』以来、13年ぶりの来日

本作の最大の注目点は、日本が世界に誇る巨匠・黒澤明監督へのオマージュが余すところなく込められていることだ。「僕が初めて観た黒澤監督の映画は『羅生門』で、それを観られたということだけでものすごく感激したんだ。でも当時はまだVHSだったから、画質は最悪だったけどね(笑)」と黒澤映画とのほろ苦い出会いを振り返る。

「この映画を作るにあたって、黒澤監督の作品をすべて観直したんだ。でも特定のシーンをそのまま使おうというつもりはなく、頭の中で“黒澤らしさ”をイメージしながらオマージュを捧げたんだ」と明かす。たとえば劇中のゴミの島は『どですかでん』(71)をイメージしたものであったり、『七人の侍』(54)の音楽の権利を取得して、正式に引用しているとのこと。

「アタリと犬たちが『七人の侍』みたいなのも、僕の無意識なんだ」と語るアンダーソン監督は「でもあとから、あるシーンがそっくり同じだったと気付いたんだ」と照れくさそうに笑った。「『天国と地獄』の冒頭で、登場人物たちが自ら名乗るシーンがある。これは観客が登場人物たちの関係性を把握するためのもので、普通なら絶対しないことだ。でも黒澤監督はよくこの方法を使っていた。僕も気付かぬうちにキャラクターが名乗るというシーンを撮っていたんだよ」。

ストップモーション・アニメで得た発想を、実写映画にも反映させていることを告白!

アンダーソン監督といえば、過去にカンヌ国際映画祭パルムドールに2度輝く今村昌平監督へのリスペクトを語っていたり、小津安二郎監督作品を思わせる構図を多用したりと、大の日本映画フリークとしての一面を持っている。「『犬ヶ島』を作る前から、彼らの作品の影響は受けているんだ」と明言。「僕が映画監督を目指した時に、目標にした監督はアメリカの監督ではなかった。それは日本やイタリア、スウェーデンの監督で、50年代や60年代の映画界を席巻していた人たちだったんだ」と、独特の世界観で高い人気を誇るアンダーソン監督の起源を自ら明かした。

『ファンタスティック Mr.FOX』(09)で初めてストップモーション・アニメに挑戦したアンダーソン監督。その後発表した『ムーンライズ・キングダム』(12)と『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)がいずれも高評価を獲得。ストップモーション・アニメを制作したことによって、彼の実写作品に大きな変化はあったのだろうか?訊ねてみると「ジェイソンからこう言われたんだ」と、本作で共に原案を務めた盟友ジェイソン・シュワルツマンの名前を挙げたアンダーソン監督。

「『キミって最近人間に不可能なことを脚本に書くよね。パペットだったらできるだろうけど』って。まったくその通りなんだ(笑)。ストップモーションを作るときには準備段階が一番大変になる。だから準備さえできたら、あとはなんでも可能になるという認識が僕の中に生まれたんだ。ある種、自由を与えられたということでもある」と語るアンダーソン監督。ストップモーション・アニメを通して彼独特の世界観が、より豊かで想像力溢れるものになったというのだ。

「チーフは菊千代で、アタリは勘兵衛」

そんなアンダーソン監督は、次回作としてフランスを舞台にした作品を予定していると明かした。「次は実写で撮るんだ。フランスでなにを学べるのか、すごく楽しみにしている」と微笑んだ彼は「次にストップモーション・アニメをやるとすれば、数年後になるかな」とさらなる挑戦に胸をふくらませた。

取材・文/久保田 和馬

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