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『孤狼の血』の原作者・柚月裕子が映画を大絶賛するも「1つだけ困ったことが…」

2018年5月10日 11:30

大上に黒い疑惑が向けられる
大上に黒い疑惑が向けられる[c]2018「孤狼の血」製作委員会

なかでも、役所広司が放つ台詞回しに感心させられたとか。「小説の場合は行動の裏にある心理を地の文で書くケースが多いんですが、映像だと動き1つで表現できるんですね。あるシーンの役所さんは、きっと叫びながら台詞を言うと思い描いていたのに、実際には感情を抑えて、笑いながらボソッと言いました。こういう表現の仕方もあるんだと、勉強させていただきました。それも、そのあと執筆する際に、影響を受けたと思います」。

さらに「実は1つだけ困ったことがあって…」と切りだした柚月先生。「『孤狼の血』はもともと1冊で完結する予定でしたが、読者の反応やKADOKAWAさんからのご依頼で続編を書くことになって。私はもともと、モデルを想定して書くタイプではないのですが、『凶犬の眼』で日岡を書く時、途中から松坂さんの演じている姿が浮かんでしまって」。

柚月先生は「映画は映画、小説は小説と独立したおもしろさがあってしかるべき」と、作家としての前提を述べながら「映画と小説の2つの良さを、観客にも読者にも感じてほしいと心から思っています」と念を押す。「今回は私自身があまりにも映画に感化されすぎてしまった。だから敢えて自分を抑え、作家として良い意味での影響をいただきつつ、最終的にはいい日岡が書けたと思いました」。

昨今、コンプライアンスが叫ばれている日本の映画界。でも白石監督は、容赦ないバイオレンスや壮絶なシーンも、作品に必要とあらばきちんと見せていく。例えば原作にはないが、思わずニヤリと笑ってしまう下ネタ絡みのシーンは、柚月先生も「負けた!」と白旗を挙げたそうだ。

【写真を見る】ここまで見せるか!?と柚月裕子も驚嘆した音尾琢真のシーン
【写真を見る】ここまで見せるか!?と柚月裕子も驚嘆した音尾琢真のシーン[c]2018「孤狼の血」製作委員会

「音尾琢真さん演じる吉田のシーンです。小説では頬に傷をつけるんですが、映画では大変なことになっていて(笑)。しかも、あそこまで映すんだ!と。あともう1つ、石橋蓮司さんの決め台詞もそうです。私も原作で、わりネタを入れているんですが、あのシーンについては、白石監督と池上さんに敵わなかったです」。

柚月先生は、コンプライアンスに対する持論をこう述べた。「みんなが全部、内に閉じ込めてしまい、口に出せないから、SNSで言いたいことを言う。それは果たして健全なのかと。いまは衝突を避けるきらいがありますが、それを恐れるべきではない。ぶつかって初めて相手を理解できることもあります。まさに『孤狼の血』はそういう時代の物語。いい意味で、自分の意思を表現することは、いつの世にも必要なことだと私は思っています」。

だからこそ柚月先生は、監督の姿勢をとても頼もしく感じたそう。「監督は、際どいシーンをオブラートでくるむこともできるけれど、そこを敢えてしない。あの潔さは強さでもあります。白石監督とは、媒体こそ違えど、表現したいものは同じなんだと思いました」。

取材・文/山崎 伸子

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