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『新感染』の監督が贈る新たな“父娘愛”!必見の快作『サイコキネシスー念力ー』

2018年5月6日 21:45

ヨン・サンホ監督最新作『サイコキネシスー念力ー』のレビューをお届け!
ヨン・サンホ監督最新作『サイコキネシスー念力ー』のレビューをお届け!Netflixオリジナル映画『サイコキネシスー念力ー』独占配信中

『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)で世界中を驚かせたヨン・サンホ監督が超能力に目覚めた男の物語を描くと聞けば、シリアスな空気感が漂い激しい描写が炸裂するSFミステリーとなることを期待してしまうのも無理はないだろう。ところがNetflixで4月25日から独占配信が開始された『サイコキネシスー念力ー』はそんな期待を良い意味で裏切る、コメディ要素の強いファンタジー映画に仕上がっていた。

ソウルの繁華街の片隅にある古びた商店街で唐揚げ店を営む母娘が、ある夜土地買収業者の襲撃を受けるところから幕を開ける本作。その襲撃によって母親が命を落とし、娘のルミは1人残されてしまう。そんな中、突然隕石のような青い光が飛来し、その成分を含んだ湧き水を飲んだ男が超能力を手にしてしまうという奇想天外なストーリーが展開していく。

このシンという男が、母親を失ったルミの生き別れた父親という展開が80年代のアメリカの佳作ドラマを思わせるような設定で実に心地よい。それまで酒浸りの冴えない男だったシンは超能力を得たという自信を携えて、ルミを守るために土地買収業者に戦いを挑むわけだ。

『新感染』ではソウルから釜山に向かう列車がゾンビの襲撃を受け、幼い娘を守るために必死になる父親の姿が描かれた。そしてその前日談であるアニメ作品『ソウルステーション・パンデミック』(16)もまた父と娘の物語と、いわばヨン・サンホの十八番ともいえる題材。しかし本作ではそのアプローチ方法が明確に異なる。前2作がゾンビという非現実の中で現実的な方法で守るすべを模索しつづけるのに対し、今回は現実的な問題を極めて非現実な方法で守り抜こうとする。

そんな正反対のプロットを『ソウルステーション・パンデミック』で父娘の声を担当した2人が実写演技で再び父娘を演じるというのだからなかなか興味深い。『7番房の奇跡』(13)で一躍韓国を代表する大スターになったリュ・スンリョンがひたすらコミカルな表情を見せつけると、『サニー 永遠の仲間たち』(11)や『怪しい彼女』(14)で日本でも高い人気を誇るシム・ウンギョンは対照的にシリアスな表情で緊迫感を演出していく。

とりわけリュ・スンリョンが超能力を手にしたばかりのころの練習風景であったり、金儲けに使おうとナイトクラブに押しかけたりといった間の抜けた行動の数々は、いかにも韓国のコメディらしさ、例えばキム・ジウンが手掛けた『反則王』(99)のような韓国映画が最も伸び盛りだった頃のそれを思わせる、愉快痛快さが余すところなく現れている。

“サイコキネシス”という題材を扱いながらも、よくあるような同じ能力を持った敵の存在であったり、使えば使うほど体力を消耗してしまったりなどという不幸な展開は訪れない。まさに“韓国版スーパーマン”と呼べる夢にあふれた魅力的な展開が、なんとも心地よく見えるほどだ。

そしてアニメーション作家ヨン・サンホらしい、アニメ的な表現の数々。どことなく間の抜けた登場人物たちの動きであったり、ゾンビを思い出させる群衆の描写。そして何と言ってもそれらが展開されていく圧巻のセット。ユーモアと壮大さを瞬発力抜群に描き出す、韓国映画界の娯楽性が100%発揮された快作と言ってもいいのではないだろうか。

文/久保田 和馬

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