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韓国ノワールの常識を覆す『名もなき野良犬の輪舞』監督が明かす、主演俳優との絆

2018年5月3日 19:00

韓国映画界の新鋭ビョン・ソンヒョン監督を直撃!
韓国映画界の新鋭ビョン・ソンヒョン監督を直撃!

ここ数年で急激に注目を集めているジャンルがある。熱い男たちがたどる哀しくもせつない物語を、暴力的な描写と硬派なストーリーテリングで作りだす“韓国ノワール”と呼ばれるジャンルだ。『新しき世界』(13)や『アシュラ』(16)など、韓国国内はもちろんのこと日本や世界でも高い評価を獲得する作品群は、2000年代前半にアジア圏で一大旋風を巻き起こした“韓流”とは対照的なスタイルで、韓国映画の底力を見せつけている。

その“韓国ノワール”に新たに1ページを刻む野心作『名もなき野良犬の輪舞』(5月5日公開)は昨年のカンヌ国際映画祭で特別招待作品として上映されるなど、世界各国で大絶賛を集めた。本作を手掛けたのは1980年生まれの新鋭ビョン・ソンヒョン監督。彼は「いままでに作られてきたノワール作品とはまったく違う作品を撮りたいと思った」と語り「ベースにメロドラマを置くことで、“灰色”のイメージが強いノワールよりも、彩度の強い世界を作ることを意識したんだ」と明かす。

物語はヒョンスという若い男が刑務所から出所するところから始まる。彼は刑務所内で知り合ったジェホとともに、ジェホが所属する巨大な犯罪組織を乗っ取ることを企て、次第に厚い信頼関係を築き上げていくのだ。ところが2人はそれぞれにある秘密を抱えており、それが明らかになるにつれて互いの関係にほころびが生じていく…。

「この映画はノワールであると同時に『ロミオとジュリエット』なんだ。2人のタイミングがズレることで悲劇が起きる」。そう語る監督は既存のノワール作品からの影響も認め、それを若いアプローチでいかに変えるか考え抜いたという。参考にしたのはパク・チャヌクやナ・ホンジンといった韓国ノワールの旗手たちに留まらず、ジョニー・トーやクエンティン・タランティーノ、マーティン・スコセッシ、そして北野武など多岐にわたる。

そのような独自のアプローチで新たなノワール像を開拓する上で、大きなポイントとなったのはジェホを演じたベテラン俳優ソル・ギョングの存在と、ヒョンスを演じるイム・シワンの存在にほかならない。ソル・ギョングの起用について監督は「韓国映画界をリードしてきた彼のもつ“庶民派スター”としてのイメージを変えたいと思った」と明かす。

「ジェホのトレードマークとなる笑い声は、最初の撮影の時に彼が即興で作りだしたものなんだ。彼は演出に関してあれこれ言わない人だったが、キャラクターに関してはいっぱい話したね」と撮影時を振り返る監督。そして「2人でお酒を飲んだし、些細なことで何度も口論したよ(笑)」と、絆の深さを感じさせるエピソードも。さらに、年内に撮影を開始する予定の次回作でもソル・ギョングを起用するつもりだと教えてくれた。

一方で、人気ボーイズバンド「ZE:A」のメンバーとしてブレイクし『弁護人』(13)やテレビドラマ「ミセン-未生-」で俳優としての素質を見せつけたイム・シワンについては「オーバーすぎずに淡々とした演技で、ベテラン俳優たちにも負けない。『ミセン~未生~』を観た時に、とても良い”俳優の顔“をしていた」と絶賛する。

そんなイム・シワンは昨年夏に入隊し、現在は芸能活動を休業している。「いまでも彼が休暇をもらって外に出てきた時には、会って話をする。僕は次の作品の構想を話し、彼は除隊後の目標を話すんだ」と、こちらも深い絆を感じさせるエピソードが。そして「彼が除隊したら、また一緒に仕事がしたいと思っているよ」と将来性抜群な若手俳優とのタッグで、今後の韓国映画界をさらに盛り上げていく意気込みを見せた。

取材・文/久保田 和馬

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