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『娼年』松坂桃李が肌と肌の対話でたどり着いた境地とは?

2018年4月05日 11:15

『娼年』の松坂桃李にインタビュー

石田衣良の同名小説を、松坂桃李主演、三浦大輔演出で舞台化した「娼年」が、今度は2人によって映画化され、4月6日(金)より公開となる。センセーショナルな性描写が先行して話題となっているが、1人の青年が心と身を解放し、次第に人間愛に目覚めていく成長譚としても、本作は見応えがある。撮影が終わったあとは完全燃焼したという松坂に、過酷だったという現場を振り返ってもらった。

松坂が演じるのは、会員制ボーイズクラブの娼夫・リョウとなった大学生・森中領。リョウは、いろんな年齢の女性たちと逢瀬を重ね、彼女たちの欲望を解放していく。

『娼年』について、舞台も含め「やらないという選択肢はなかったです」とキッパリ言う松坂。「いま、このタイミングでお話がいただけたのは、本当にラッキーでした。30代に向け、自分にとっていい経験になるし、また違う扉を開くことになるんじゃないかと思いました。実際、『孤狼の血』(5月12日公開)のお話も、『娼年』の舞台を観た白石監督が声をかけてくださった。とてもありがたかったです」。

体当たりの濡れ場に挑んだ松坂桃李 | [c]石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

松坂が心から信頼する三浦監督は、映画『娼年』でより高いハードルを用意したそうだ。松坂も「ここまで精神的に追い込まれた作品はない」と言い切る。

「『娼年』の舞台では身体とのコミュニケーションの芝居をしましたが、映画では、より繊細な芝居を要求されました。会話のないやりとりを、空間のなかに生みだす作業が大変でした。スケジュールも毎日朝から深夜2時ごろまで撮影が続くような感じで、メンタルも体力も相当削られていく日々でした」。

撮影期間中は、リョウへのスイッチをオフにしないよう、ビジネスホテルに滞在していたという松坂。「僕の場合、家に帰ると完全にオフになっちゃうので、“微妙なオン”のままいるようにしたかった。明日のことを考え続けながら帰って風呂に入り寝るという生活を続けていました。テンションを切らさず、現場との距離をなるべく近づけておきたかったので」。

松坂は、濡れ場のシーンで大切にしていたのは、相手との信頼関係だと言う。「最初はやっぱり緊張感があります。そこから少しずつお互いの距離感を測り合い、瞬発的な信頼感を生み出すんです。舞台は1か月という稽古期間のなかでコミュニケーションを取れたけど、映画では撮影期間が2日間ということも多い。ベストな距離感はひとりひとり違うので、そこを測ることに集中しました」。

娼夫の仕事に、やりがいを見出していくリョウ | [c]石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

真飛聖、冨手麻妙、桜井ユキ、馬渕英里何、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣、江波杏子ら女優陣と互いに個性を引き出し合った松坂。「女優さんたちも覚悟をもって参加してくださったし、この方たちがいなかったら成立しない。三浦さんとも話していたことですが、僕たちはそういう方々の思いをしっかりと受け止められるようにしようと常に心がけて現場に入っていました」。

本作で松坂が挑んだラブシーンはバリエーションがかなり幅広いが、映画、舞台とやり抜いた松坂がたどり着いたのはどんな境地だったのか?「“会話がなくても成立するものが確かにある”ということでしょうか。それはこの映画のテーマでもある。変にいろいろ言い合ったり、泣き叫んだりすることをせず、身体で接することで相手の思いが伝わるのかなと。いろんなことが肌を通して伝わってくる。そのことは、この作品でしか味わえないものでした」。

まさにそれは、演じたリョウが最後に行きついた境地でもある。男の色気について松坂は「優しさから来る強さ。強い人はみんな優しいと言うじゃないですか。そこから来る色気みたいなものを僕は感じます」。

娼夫として人の孤独や欲望をすくい上げ、男としての度量を広げていったリョウ。ラストで松坂が見せる表情は、惰性で生きていたかつてのリョウとは全く別人のように、真の男らしさをまとっている。

舞台と同様に、撮影が終わったあとは「無になりました」と松坂は言う。「なにも情報が入ってこない感じで、もう動けませんという状態でした。『あしたのジョー』のラストのページみたいに、抜け殻のような感じになっていました」。

全身全霊を込めた松坂桃李の演技を隅々まで堪能していただきたい。

取材・文/山崎 伸子

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    2018年4月6日(金)

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